夢京橋キャッスルロードの両替商(びわ銀彦根支店)駐車場に車をとめた翡翠さんはぼそっと呟いた。
「びわ銀のキャッシュカード、持って来といたらよかったなー」
「まーええでしょう」
「ここの佃煮が旨いんや」
「琵琶湖名物ですな」
【かねやす】に入って私は商品を一通り眺めた上でお母さんに尋ねた。
「モロコはありますか」
「……。モロコが獲れなくて作れないんです」
残念だが、仕方がない。佃煮各種を試食させてもらった。ワタのほろ苦さが日本酒に合うと思った。
「街をぶらついて夕方、また買いに来ます」
店の隣が宋安寺。朝鮮使節がその昔宿泊したところでもある。赤門(佐和山城の大手門を移築した)横の文字に目を向けた。


行き過ぎた欲望は人間性を蝕む。当たり前のことを忘れて知らず知らずの内に愚民は泥沼に沈む。私はにやっとし、外気の冷たさに身震いした。
