「永遠の武士道」研究所所長 多久善郎ブログ

著書『先哲に学ぶ行動哲学』『永遠の武士道』『維新のこころ』並びに武士道、陽明学、明治維新史、人物論及び最近の論策を紹介。

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2007-11-29 23:26:49 | 【連載】 日本の誇り復活 その戦ひと精神
【連載】
「日本の誇り」復活―その戦ひと精神(十九)『祖国と青年』19年3月号掲載
                       
松生丸事件と第三十一吉進丸事件

三十年間変はらない九条国家の情け無さ

 昭和五十年九月二日午前九時五十八分、黄海北部の公海上に於て、佐賀県呼子町のフグはえなわ漁船松生(しょうせい)丸(まる)が操業中に、北朝鮮警備艇による銃撃を受け、前川三千男・柳原増太郎の両名が射殺され、他にも二人が負傷し、その後北朝鮮に拉致される事件が発生した。当時大学三年生だつた私は強い衝撃を受け、九大・福大・西南大・福岡教育大学などの同志と共に事件への対応を協議し、九大四年の豊増達夫兄(現日本協議会千葉県支部代表幹事)を長として「松生丸事件に抗議する福岡県青年学生委員会」が組織された。早速、福岡市の繁華街で情宣活動を展開、更には事件を正当化する朝鮮総連福岡県本部(福岡朝鮮会館)に対する抗議行動を行つた。

 だが、朝鮮総連は動員を掛けて暴行を振るひ、「朝鮮人を虐殺して来た日本人には抗議する資格は無い。何人でも殺されて当然だ。お前達も簀巻(すま)きにして博多湾に放り込んでやる。」と脅してきた。私が、朝鮮総連の非道性を認識した最初の行動であつた(この体験から私は、朝鮮会館は決して公的な施設では無いと確信し「熊本朝鮮会館減免取り消し訴訟」を戦つてゐる)。この松生丸の田川船長が帰国直後に訴えた「この海に、この国に正義は無いのか」との悲痛な叫びは今尚忘れられない。(田川船長手記が『祖国と青年』第22号に掲載された。)

 松生丸事件から三十年経つた昨年の夏八月十六日、北方領土海域でロシア国境警備艇による日本人銃撃殺害事件が発生した。私には松生丸事件の記憶が蘇り、テレビ報道に注視した。至近距離からの銃撃は明らかに射殺を目的とする行為である。日本政府はどの様に対応するのか。女性の外務政務官が派遣され、十九日にご遺体が帰還、二十二日に葬儀が行はれ、三十一日には二人の船員が解放されたが、坂下船長のみはロシア側の一方的な裁判により罰金刑を課せられ、帰還が適(かな)つたのは十月三日だつた。

 解放された坂下船長は直に記者会見を行ひ「中間線は越えていない」と明言し、ロシア側の不当性を訴えた。先の松生丸事件の時もさうだが、法の正義が全く通用しない独裁国家のロシアや北朝鮮に抑留されてゐる時に当方の正義を主張する事は不可能である。抑留された人々の帰国後、日本国政府が責任を以て国際正義に基づく戦ひを国際社会を舞台に行ふべきなのである。しかし、政府は放置し、マスコミも事件への関心を失つた。私自身も気に掛けつつも、教育基本法改正の最終運動の中でこの事件を追求する余力を無くしてゐた。

 だが、やはり義人が居た。作家の上坂冬子氏が今年一月中旬に文春新書『これでは愛国心が持てない』を出版し、この第三十一吉(きっ)進(しん)丸(まる)銃撃事件についての詳しいレポートを発表された。上坂氏は事件後根室に赴き漁協や関係者を取材、北海道庁にも足を運んで疑問をぶつけた。更には解放された第三十一吉進丸の坂下登船長への直接取材を実現して真相を明らかにした。日本の外務省は、ロシアに連行された坂下船長の裁判に対して全くサポートしてをらず、その結果坂下船長はロシアから「罰金」として214万円を強要され、4000万円相当の漁船も強奪された。全てが坂下船長の自己負担である。帰国時にも政府要人は立ち会つてゐない。北方領土で生じた悲劇に対し政府は知らん顔を決め込んでゐる訳である。

 更に許すまじきは、盛田(もりた)光広(みつひろ)氏殺害に対する政府の姿勢である。銃撃を受けた地点は根室と貝殻島の中間線付近であり、日本政府が「北方四島は日本領」との立場を表明してゐるのであれば、わが国固有の領土内で起こつた日本人殺害事件に対して、明らかにその犯人を捕縛し処罰する義務があるはずである。国際法上も漁民をいきなり銃撃し射殺する行為は認められてゐない。国際正義は吾にあるのである。ロシアは、昨年五月「プロジェクト国境」を打ち出し彼らの定めた国境警備を厳重にしてゐる。その結果生じた事件であり、現在も日本漁船の拿捕が頻発してゐる。盛田さんの不当殺害の責任を曖昧にするから拿捕が加速し、漁民達はロシアの餌食とされてゐるのだ。

 二月二十二日の竹島の日に向け、領土問題の啓蒙活動を準備していた日本会議熊本事務局では、早速上坂レポートを学習して対応を検討、竹島問題と北方領土問題未解決の背景には、わが国政府の無作為・事勿れ主義がある事を確認し行動を起こす事とした。これらの海域で生じてきた漁民被害実態の啓蒙と、国家から放置され労働災害保険の適用さえ行はれてゐない盛田さんご遺族への弔慰金の呼びかけを行ふ事とした。18日・20日・22日と会合や街頭で呼びかけ、六十名約十一万円が寄せられた。戦後教育の弊害で領土問題に対する国民の関心は薄い、だが、それ故にこそ今回の盛田さん殺害事件を心に刻み付けるべきではないのだらうか。その為に、ご遺族弔慰金の募集を続け、根室に持参したいと考えてゐる。

 韓国が昭和27年1月に李承晩ラインを設定して竹島をその海域に含め、近辺の日本漁船を拿捕した結果、竹島周辺での漁船拿捕は328隻、3929人が抑留され、死傷者は44人に及んだ。北方領土周辺では今尚拿捕進行中だが上坂氏の著書によるとこれ迄の件数は拿捕が1330隻、抑留された日本人は9433人、銃撃事件が26件と云ふ。
 
 わが国は、ロシアと韓国といふ近隣の武力信奉国から領土を強奪され、その結果1万4千人の人々が異国に抑留されるといふ被害を受けて来てゐるのである。勿論これらの悲劇の根底には「国際紛争解決の為の手段としての武力行使」を否定したマック憲法の呪縛が存する。大湊に基地を持つ海上自衛隊は根室の漁民をロシアから守る事さえ出来ないのである。

 二月二十四日、熊本で開催された日本協議会九州ブロック理事会に、国境の町対馬から吉田さんが駆けつけて対馬の韓国化の実態について発表し警鐘を発せられた。北方領土、竹島、尖閣列島そして対馬とわが国領土は、憲法九条に呪縛された政府の無為無策によつて無残に犯され続けてゐるのである。
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