古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

夢の中での日常  島尾敏雄

2024-10-10 06:25:42 | 小説の紹介

「奇妙な味の小説」所収。

 

昭和45年に刊行されて、1988年、20年

 

ほどして、バブル期によって、文庫化されたこの

 

「奇妙な味の小説」というアンソロジーも最後と

 

なった。

 

どの短編も大層上質なものばかりだった。それに、

 

この「奇妙な味」とは、江戸川乱歩の造語だそうだ。

 

この島尾氏の作品も実に奇妙に後味のさっぱりとし

 

ている割にこってりとした味わいの小説だ。

 

あとで考えて、なにが書いてあったのかちょっと

 

わからないような夢のような手触りの短編だった。

 

(読了日 2024年9・16(月)14:10)

                (鶴岡 卓哉)

 

 

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白夜の終り    五木寛之

2024-10-08 00:30:45 | 小説の紹介

「奇妙な味の小説」所収。

 

「親鸞」で出鱈目を書いて(いるように僕には

 

思えた)いるより、ずっと筆がイキイキとして

 

いるようだった。

 

新宿が舞台で、60年代だと思うが、それとも

 

ちょっと違う異次元の世界で、SFチックでもある。

 

その不思議な世界で、30歳の女が、10年前の

 

過去を振り返り、ロリータという15歳の女の

 

美人局をして、組長代理におカネをせびりに行く

 

話が描かれている。すごくキラキラ輝く文章が

 

散見されて、ぼくはこの短編がこの本の中で一番

 

好きだった。とてもおかしくて、風変わりでいて、

 

生きよう、ということをしようとしていることが

 

描かれていた。

 

(読了日 2024年9・15(日)22:15)

               (鶴岡 卓哉)

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黒猫ジュリエットの話 森茉莉

2024-10-06 04:28:56 | 小説の紹介

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。

 

牟礼魔利(むれ まりあ)とは森茉莉その人

 

の事なのだろう。魔利の飼っている黒猫が主人

 

魔利について語っている。

 

なんかぼくは勝手なイメージではゴスロリ風の

 

衣装に身を包んでいるといった感じだが、フランス

 

好きなのだそうだが、その実、フランスのイメージ

 

を追っているだけで、本当のフランスは知らな

 

いんだそうだ。外国語も知らないので、批評など

 

もちんぷんかんぷんなのだそうだ。

 

この本だが、古くて、割れが酷くなって、バラバラ

 

になりつつある。兎に角、茉莉さんの良さに今ごろ

 

ぼくは気づいている。批判的レビューも書いたことも

 

あるが、今は大好きな作家のひとりだ。

 

(読了日 2024年 9・13(金)22:30)

                 (鶴岡 卓哉)

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脱出  筒井康隆

2024-10-05 13:49:24 | 筒井康隆

中公文庫 「奇妙な味の小説」所収。

 

この短編を一読して、例のリアリティー・

 

ショーで可哀そうな自死を遂げた女の子を

 

思い出してしまった。

 

ミッキーと言う役柄で逃亡することを決定づけられた

 

男が陥っていく。リアルか、アンリアルかという

 

問で、詰め寄られていく。そこから、どうやっても

 

脱出出来ないんだ、これが。

 

それがこの世の定めだろう。フェイクは何処まで行

 

ってもフェイクじゃない、何処かで変質してリアルに

 

なる、ということだろうか。

 

(読了日 2024年9・12(木)22:50)

                (鶴岡 卓哉)

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くらしとことば 吉野弘

2024-10-02 16:41:43 | 本の紹介

河出文庫 1981年

 

2014年に亡くなった吉野氏のエッセイ本だ。

 

吉野氏は生前、高名な詩人で、奈々子さんと万奈

 

さんという二人の娘さんがいたらしい。な、という

 

音は女らしいとおもっていたそうで、七月七日に

 

生まれたらしい。このエッセイは主に1975・

 

76年に書かれている。社長業を数年やっておられた

 

らしいが、ほんものの詩人に商売はムリだろう。

 

倒産してしまったらしい。あらゆる方面に目がついていて

 

バスの中とか、アンテナを張りまくっていたことが

 

伺われる。詩人らしい新鮮な目で、色んな物事を見て

 

いて、読んでいて、ほーっ、と頷いていた。

 

(読了日 2024年9・9(月)14:16)

               (鶴岡 卓哉)

 

 

 

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