
松たか子は凄い役者なんだと改めて思う
子供から見れば29歳と44歳の違いなんてよく分からないかも知れないけど、とっくの昔にその年齢を通り過ぎたおじさんにはあの15年を上手に演じ分ける技量に感服せざるを得ない
すれ違い会話も無くなり同じ空間に居るのも苦痛になっていく夫婦なんて、この世にはごまんと居るだろう。わたくしも滅多に奥さんには会わないし、だからって憎しみあってる訳じゃなく気の張らない同居人みたいになってる。近付き過ぎて粗探しの末、嫌な思いとストレスを溜めて挙句離縁するのが良くあるパターンなんだろう。この作品の夫婦もそんな感じで幕を閉じる
ラブファンタジーとしての物語はここから始まる。離婚届を持ったまま亡くなった夫の運命を変えるべく、過去にタイムスリップを繰り返すうちにファーストキスに辿り着くと言う作劇が本当に良くできている
この丁寧なエピソードの繰り返しが未来に繋がり、やり直しの夫婦生活は慈愛に満ちた15年になる
結末の未来は変えることはできなくとも、二人の歩んだプロセスは素敵な日々だった
坂元裕二の脚本にしては随分甘美なお話しだけど、僕ちゃん嬢ちゃんの恋愛物語ではないからベタ甘にはならない
大人が観てもすんなりその世界に馴染めるのだが、ミルフィーユのような多重構造だと言う時空を行き来する仕掛けがチープなのが減点ポイント。ファンタジーだからこそ細部の説得力が大事だと思う
演出は最近円熟味が増している塚原あゆ子なので安心して観られる。引っかかったのは、インスタントカメラの少年少女の使い方。写真が重要な小道具になるのだから、もうちょっと上手い絡ませ方がなかったのか。吉岡里帆が性格キツイ嫌な女にしか見えなかったのもミスディレクションじゃないかな
それでも年に一本くらい大人のラブストーリーを楽しみたい
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