続けて二人の夫を不審な死に方で亡くした美しい未亡人と、そこに犯罪を疑いながらも惹かれていく敏腕刑事の捉えどころのない心の揺れに翻弄される。手錠で繋がれた左手と右手に宿る感情は痛々しいほどの愛情と欺瞞に満ちている
学生の頃背伸びをしてアントニオーニの映画を観た時に感じたもどかしさを還暦過ぎた今また味わっている
正直言ってこの映画は嫌いだ
大人の男と女に芽生えた心の有り様をサスペンスだと捉えることには疑問を抱かないけれど、何だかお互い利己的に自分の感情をセーブしているだけで誰にもわたくしの心を沿わせることができなかった
タン・ウェイ演じる未亡人に心奪われる気持ちはよくわかるのだけれど・・・
あれも墓穴というのだろうか?
海岸に掘った穴に屈みながら満ちた潮に埋もれていった未亡人は、今生で刑事との別れが出来なかっただけなんじゃないか?帳の降りかかった波打ち際を彷徨う刑事は、分かりやすいほどに別れの決心ができないままだし
アントニオーニの情事で描かれた愛の不毛とか不条理とかは解決できないままの謎として今も蓄積されたままだけど、あれはあれでどうしようもない人間の奥底にある魔性だとして納得しているのになぁ
パク・チャヌクに観せられた愛の物語は消化できないまま暫く残りそうだ