映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

恒例!新春吠える会

2023-01-24 08:41:00 | 映画ベストテン
権威ある賞なんて書くとなんだか野暮ったいけど、権威ってそれなりの歴史と積み重ねるための説得力があって与えられるものだと思う。その権威も失墜して30年以上経つけど、黎明時期を脱し説得力を増した頃のレコード大賞は凄かった
1970年代前半はビートルズが解散して次の音楽の指針が示されない時代で、日本の音楽業界もプロ(職業音楽家)とアマ(所謂シンガーソングライター)の融合が始まりつつあった頃でもある

71年 また逢う日までが大賞、ノミネート曲は よこはまたそがれ 知床旅情 おふくろさん 傷だらけの人生 さらば恋人  新人賞 私の城下町 17才 雨の御堂筋  作曲賞 真夏の出来事 作詞賞 戦争を知らない子供たち

72年 喝采と大賞を争った曲は、あの鐘を鳴らすのはあなた 瀬戸の花嫁 子連れ狼 ひとりじゃないの  新人賞 芽ばえ 太陽がくれた季節 男の子女の子 雨 せんせい  作曲賞 どうにもとまらない 作詞賞 終着駅    ピンポンパン体操の歌

73年 大賞は夜空、ノミネート 恋文 なみだ恋 白いギター わたしの彼は左きき 危険なふたり  新人賞 わたしの青い鳥 赤い風船 コーヒーショップで 草原の輝き  作曲賞 街の灯り 作詞賞 ジョニーへの伝言

日本歌謡史(J-POP)に刻まれ、当時を生きていた人には記憶にも残る名曲傑作ばかりだ
故に権威ある賞として認知されて、その他数ある音楽賞とは一線を画す事となった。現在の不明瞭なノミネーションと比べるべくもなく、その説得力は説明の必要はなかろう
是非、音楽を愛する若いリスナーたちは上記の歌曲を聞いてみていただきたい。昨今、世界中で評価されている90年代に発表されたシティポップを作っていた人たちは、ビートルズとこの時代のJ-POPを肥やしにして名曲を作りだしたのだから


ついついノスタルジーに溺れ前置きが長くなりました
権威ある賞のことを書こうとしたら思わぬ方向へペンが走ってしまいました(ペンで文章書かなくなって久しいですね。これまたノスタルジーでしょうか)

もうね、本当にいい加減やめなさいよって言われそうですが、日本アカデミー賞ですよ
今回で46回目だそうです。全く権威もへったくれもありません。半世紀近く続いたら普通備わるものなんですがねぇ〜
「ある男」「ハケンアニメ」「流浪の月」は観ましたし、選ばれても良いだけの説得力あります。文句はありません。観てないのであまり貶せませんが「月の満ち欠け」は批評家からも目の肥えた映画通の方の評価も芳しくなく、挙句ネットレビューに書き込まれている素人評も悪いようです。別にヒットしたわけでもありませんしね?どうしたらこの選択になるのでしょう?この作品を選出した方がいたらその理由を伺いたいです。本気で知りたいです
嗚呼それなのに、もっととんでもないノミネートがあったのでした
「シン・ウルトラマン」去年選りすぐって映画館に通った30本のうち最も後悔した作品です。庵野秀明好きですよ。エヴァー以前も以降もほとんど観てますけど、屈指の駄作でしたよね。許せないくらいの失敗作でしたよね。まあそれは良いんです。ダメな事もありますから・・・要は、そんな作品を何で選ぶのかという憤りなんです。他の真っ当な作品に失礼じゃないですか

毒吐いて、少しスッキリしました

1982年第5回のノミネートは下記の5本でした
降旗作品「駅 STATION」
今村作品「ええじゃないか」
熊井作品「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」
小栗作品「泥の河」
根岸作品「遠雷」

テレビの企画で集められた大学の映画クラブ所属の学生が討論して、何が賞をとるかを占ったあの頃
こんなにも重量級の作品が揃っていたんですね。感無量です
テレビに映りたくて誰も推さなかった「ええじゃないか」について発言したら、思惑通りアップで放送していただいたのが忘れられない思い出です

そんな邪なわたくしを画面に切り取ってくれた当時のテレビディレクターの方は、今でもお元気でしょうか?


2023年の冬ドラマ スタート

2023-01-22 14:25:00 | 旧作映画、TVドラマ
今年も各局連続ドラマが出揃った
地上波テレビの相対的価値がこれ程までに低くなって久しいけど、未だドラマは作られ続けていく
2023年は大河を観ないけど、冬ドラマは5本をピックアップしてみた

「星降る夜に」
大石静の脚本にそれほどの思い入れはないけど、「大恋愛」は王道の恋愛物で結構泣かされた
来年の大河ドラマ「光る君へ」を吉高由里子主演でやることが決まっているので、このドラマはその前哨戦となるのか?それにしては酷い脚本だ。来年の大河が心配になる。三回まではどんなに詰まらなくても観る事にしているけど、早々にリタイアしそうだ
ろう者を扱うドラマだから、「silent」と比較してしまいあまりの落差に一層採点は辛くなる

「夕暮れに、手をつなぐ」
こちらも恋愛ドラマの大御所である北川悦吏子脚本。かつてのような燦めくような感情を発露できるとは思えないけど、広瀬すずの元気いっぱいな姿が見られればそれで良いかと・・・
何でまたもや舞台は東京(大都会)なんだろう?農村とか漁村を舞台に設定しろとは言わないけど、季節感を感じられる地方都市の若者たちの恋愛ドラマが観たい
ヨルシカの楽曲が印象的に使われている

「リバーサルオーケストラ」
安定のお仕事系ドラマであり、ドラマにしやすい音楽(オーケストラ)を舞台にしているからゴールは想像しやすいので、大きなハズレは無い代わりに意外性は期待できないかな。脚本は奥寺佐渡子と組んで傑作をいくつも書いている清水友佳子。ひとりでどこまでやれるのか。試金石だ
門脇麦の連ドラ主演というのも珍しい。映画では映える彼女の存在感がテレビではいかせないように思う。いい子ちゃんヒロインじゃなくて癖のあるキャラクター付けをしてくれたら面白くなりそうだ

「100万回言えばよかった」
これまた傑作を生み出している安達奈緒子が脚本を書いている
序盤はゴースト系恋愛物の雰囲気だけど、このままつき進んでいくとは思えない。それでも本筋は、見えないけど繋がっている愛する気持ちを描き出すかなので、サイドストーリーにフラつかないで欲しい
井上真央、佐藤健、松山ケンイチの取り合わせは丁度いい温度感。下手にベトつかず乾き切ってもいない肌触りなので、3人の掛け合いはこれからも大切に作り込むことを望む

「ブラッシュアップライフ」
安藤サクラ、夏帆、木南晴夏のトリオが魅力的。バカリズムはなんでこの手のOL会話を書けるんだろう?もしかすると実際はあんな会話はないのかもしれないけど、それらしく作る事だけでも凄いし極論すれば全部嘘でもドラマになればいいわけだ。一回目途中で呆気なく主人公の安藤サクラは事故死して、二回目の人生が始まる。大人の意識で子供時代を過ごすところが面白くて、また大人になってしまってからはどうするんだろうかなんて、先走った心配をしてしまう
立ち上がりは間違いなくこの冬一番面白いドラマなので、大いに期待している


朝ドラはパイロットやめて町工場頑張るぞ編になってしまった
またそのうちパイロットに戻るんだろうけど、恋愛の様子は幼馴染の詩人とうまくいきそうなんで後2ヶ月でどう転んでいくんだろう。あまり破綻のない締めになるだろうから毎朝惰性で観ちゃっている


底知れぬ韓国映画「非常宣言」

2023-01-09 11:23:00 | 新作映画
今年始まって十日も経ってないのに、早くもNo.1?

そんな風に思わせてくれるほどの面白さで、2時間超を思い切り楽しませてくれた
こんな映画、もう日本では撮れないんだろうかと、映画館を出たあとチョッピリ憂鬱な気分になるほどの衝撃でもあったんだ。なんとなくフィルターの掛かった安っぽい画像で空港内で蠢く人々が映し出された頃は、チープな作りの虚仮威し映画なのかと後悔していたけど、飛行機が空に飛び立ってからの緊張感はハリウッド映画でさえかなうことのない畳み掛けだった

60年前、欧米人が黒澤映画に感じたダイナミズムってこんな興奮だったんだろうか

全世界がコロナ過の今、ウィルステロの脅威を高高度で飛行する航空機内で描くだけではなく、韓国が抱える外交的なジレンマやどこの国にもあるだろう一市民の生命と全国民の利益の対比が思い切りエンターテイメントに活写されている
自衛隊が威嚇射撃でも実弾撃ってたのは凄い描写だった
ただし、オリジナリティがあるかと言えばそんなことは無く、アメリカ映画の傑作シリーズ大空港(エアポート)物がベースだし、少し前に公開された韓国映画「新感染」(元ネタのプロットは新幹線大爆破だしな)を空の上でやったに過ぎない
それでもこれだけ楽しませてくれれば十分で、イオンシネマ1,100円じゃ申し訳ない気がする

アメリカ人がこの手のドラマ作ると決まって超人的なヒーローヒロインが登場してきて、信じて前進する者には必ず明るい未来がくる!みたいな・・・、運命は努力次第で良い方向に覆せるんだ!的な?
自分達が地上に降りられれば、その事によって感染リスクを被る人がいることなんて知ったこっちゃない!ザ・アメリカ‼︎
映画はエンタメだから、最後は皆助かってメデタシメデタシで良いんだけれど、そこに行きつくまでの傲慢さがいつも我慢できなかった。そこいくと、同じような感覚を共有している韓国人が描いた、諦めと悟り(自分達が犠牲になっても地上にいる家族や友人を守りたいから着陸しないという選択)には心底感銘した
あのシーンはかつて日航ジャンボ機墜落事故の際、家族に宛てた遺書に通ずる痛ましさと尊厳を感じて涙が抑えられなかった

欲を言えば、犯人の描かれ方にもう少し工夫が有ればなと思う。なんだかよく分からない外資系企業の悪巧みが犯人を狂わせたみたいなのは余りにも使い回し感があり頂けない。犯人の人物像や犯行の特異性が、ゴジの傑作「太陽を盗んだ男」の原爆をひとり作り宣戦布告する犯人みたいであればまた違った味わいのある映画になったと思う

またもやソン・ガンホか、そして、イ・ビョンホンまで付いてくるお年玉興行に拍手
国交大臣やってた女優さん、カッコよかった


朝7時45分からのスタートに合わせて汽車道を歩く
朝日に映えるみなとみらいが綺麗



冬晴れにどんどん焼き

2023-01-08 15:24:00 | 歳時記雑感
近くの公園で、どんど焼きが始まった

コロナ前は大勢の親子連れが竹竿先に白玉付けて炙っていたけど、どうやら感染予防のため取り止めになってるようだ

子供の頃を思い出す
わたくしの田舎ではどんどん焼きと言っていた。小正月の前夜、年男年女や厄年に当たる家からは餅や蜜柑などが振舞われ、当時は子供も多かったから楽しい年頭行事だった
今は観光地になってる四万温泉の甌穴入り口辺りには道祖神があって、20戸ほどの集落から集まった人々で結構賑やかに行われた
白玉は繭玉(群馬県は養蚕が盛んに行われてた)と呼ばれていて、家族全員分を焦げるまで炙っていた
夜空に舞う火の粉の美しさを今も鮮明に憶えている



年末年始も休みなく働いていた人には申し訳ないけど、なんだか休み過ぎて飽きてしまった

年末には先に天国へ行った友に会いにいきその後忘年会
紅白であいみょんを見て年明け前には寝てしまった
お正月の料理も気合が入らず、2日に娘夫婦が年始挨拶に来たからとことん飲んでしまい二日酔い
3日は息子夫婦が来たので頑張って料理したけど何も食べられないし飲む気もおきない
暫くぶりに歯医者に行ったら2日で終わってしまい
6日と9日には映画館に行ったけど、あとはお家でプライムビデオ観ていただけ

アウトドアで遊べない冬はあまり長い休みするもんじゃないな
と、学んだ冬休み

明後日からはまた仕事をしましょう
今年の抱負は現状維持
健康も遊びもお仕事も向上させるのはもう難しいので、せめて去年並みにはやっていこう






ひとりぽっちの映画はじめ「恋のいばら」

2023-01-07 04:12:00 | 新作映画
お正月映画は暮れに観尽くしてしまったから、新春公開の作品から選んだのは城定監督が脚本も書いた地味な作品

「アルプススタンドのはしの方」「愛なのに」と、このところ絶好調な監督だから何かしら楽しませてくれるんじゃないかと若干の期待。1月6日公開初日の初回、今年も一番通うことになるだろうホームグラウンドTOHOシネマズららぽーと横浜の小さな小屋に入ると誰もいない。もう開映時間なのに前から二列目の真ん中にはわたくしだけがポツンと座っている。もしかして小屋を間違えたかと一旦確認に出てみるが間違い無いようだ
この映画も2週間で打ち切りだな

お話は図書館に勤めるメンヘラ系元カノが、ダンサーを目指しているリア充系今カノと共謀して彼氏が所有している自分たちの写真を破棄するまでを描く。その過程で水と油のような二人の女子が名前で呼び合い友達のようになってゆく
元カノを演じるのは松本穂香。おっとりした地味な顔立ちがピッタリなんだけど、ショートカット丸めがねがauのCMキャラと被ってしまいなんだか造作を失敗した感がある
今カノは前年「窓辺にて」で物語のキーパーソンとなった学生小説家を演じ存在感を示した玉城ティナ。あの役とはまるきり違う役者のような雰囲気で、この女優化けるかもしれないと思わせる

2時間に満たない小品でコンパクトにまとまってはいるから、他人にオススメはしないけどまあそれなりにって言うとこかな。軸はあるけど枝葉が無い(弱い)。リベンジポルノに対するアンチテーゼなんていう主題が全面に出るわけじゃ無いし、女子二人の友情物語にしては足りないし、全てがそれなりの半端さなのだ
彼氏の家に住むボケ始めたおばあちゃんとの接点もボンヤリしているから勿体無い。もっと上手い設定できただろうに
思わせぶりな小物として写真集が使われるけど、絶版になっていて結構大きな図書館にも所蔵されていない筈なのに二冊も使われているのも解せない。その写真集に挟まっていた今カノの寝顔の意味するところがまた不可解だ

写真家の彼氏が言ってた、仕事で撮る写真じゃなく本当に美しいものを撮りたかった一枚だとしたら
そうであるなら、彼氏は本気で今カノが好きなんだろうし元カノがその写真を見た時に涙した意味がわかるけど、消去して欲しいと言われたのにプリントまでしていたのは単なるポルノグラフィティーだとも取れる
その辺の説得力が無いため曖昧な印象で終わってしまった

結局、本編上映開始から数分後に年配の男性が一人入場してきたので、小屋を出るときは二人になっていた