映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

目指せ寅さん五郎さん 三丁目の夕日

2012-01-23 10:24:17 | 新作映画
 三丁目の夕日、三作目を観て参りました。
作品の鮮度は当然落ちてますし、東京タワーのような象徴的な建造物もそうそうあるわけではないので、何を売りにしてゆけば良いのか悩みどころでしょう。間違いなく3Dではありません。
 詰まるところ、三丁目の住人の悲喜交々とした日常が、一番の見せ場であると思うのです。
茶川家鈴木オート家を中心にした昭和の住人を我々は楽しんでいるのですから、バックグラウンドにある時代背景は大切なファクターでありますが、一番の売りではないはずです。小道具として有効に使いつつ、住人たちを引き立てる脇役として、これからも楽しませては貰いたいですけど。

 寅さん(男はつらいよ)のノスタルジーと、五郎さん(北の国から)の家族物語を併せ持ったようなシリーズになれば良いなと思っています。どちらも、その時代を上手く表現しながら、でもやっぱり、主人公はそこに住む住人でした。次回作があるとすれば、四作目の成否が長寿番組になれるかどうかの試金石になると思います。
 


ガンバレ住田!

2012-01-16 13:35:31 | 新作映画
 必ずご覧になっていただきたい映画、「ヒミズ」の事を書きます。
ラストシーンのことも書きますから、これからご覧になる貴方は鑑賞後にお読みください。
今、観るつもりの無い貴方が、この稚拙な文章から読み取っていただける熱い想いを汲んでいただけるなら、是非是非映画館に足をお運びいただきたいのです。

 園子温、本当に恐るべき作家です。実はわたくしと同い年なんです。何でこんなにも違うんですかね。わたくしだって世の中にゴロゴロ転がっている理不尽なことに腹を立て、何時かは思い切り蹴飛ばそうと考えているんです。拳が腫れるほど、強い力で殴り倒したいと夢想している事だって、二つや三つ持ってます。でも、毎日の不断の流れの中で小さく小さく妥協して、折り合いを付けて、忘れた振りまでして、悩んでないのに難しい顔で嬉しくも無いのにだらしない笑顔を繕ってます。好きなだけ映画(フィクション)で発散できる園監督なんかより、よっぽど偉い。
 それじゃ、血みどろになっても普通に生きることを選択できますか?そんな生き方に最大限のエールが送れますか?父からお前は要らなかったと酔うたび言われ、母から駆け落ちする愛人の爪の垢ほどにも愛されず、それでも立派な大人になろうと生きていけますか?一瞬の内に全てが失われた震災・大津波の被害者の真の代弁者になれますか?何が正義なのですか?どの様に生きれば人は幸せになれるのですか?15歳は子どもですか?50歳は大人なんですか?わたくしは、何の答えも出せないでいます。そもそも答えはないかもしれません。でも、真正面からその答えを出そうとしてしている映画がここにあります。感服です。

 あのラストシーンの事を書きます。
一晩苦しんで父親殺しの罪を償うために走りながら自首する住田を、同級生の景子が伴走しながらエールを送ります。「ガンバレ住田」「住田ガンバレ」二人を正面に捉えたカメラが秀逸です。二人のギリギリの青春が溢れ出て止まりません。その血が滲むような掛け声に、震災の瓦礫がオーバーラップしてゆきます。わたくの耳には何時しか「ガンバレ住田」の叫びとともに「ガンバレ東北」「ガンバレ日本」と聞こえてくるのでした。

 久しぶりにエンドタイトルに拍手をいたしました。
そして、小さな声ですが、「ガンバレ住田」と自分にあててエールを送りました。


ロボジー

2012-01-16 11:00:42 | 新作映画
 今年最初の映画は、大好きな矢口作品です。
いつも斬新な切り口で楽しませてくれるので、新春にはうってつけの番組です。

物語のパターンはいつもの通り、巻き込まれ型熱血成功物語です。
日本人が一番共感できるタイプのドラマだと思うのですが、ここまで上手に作っている人がいないのは不思議です。

充分楽しめるのですが、「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」と比べてしまうとかなりキレの無いものになってしまいました。ロボット作成チームの3人、おじいちゃんと娘家族(孫2人)、ロボット好き女子大生の融合が今ひとつの感がありました。このあたりは前作「ハッピーフライト」の失敗が生かされませんでした。もしかすると、矢口監督はナッシュビル形式の作風は無理なのかもしれません。

上野樹里、綾瀬はるかという天然キャラ女優好きなだけあって、吉高由里子の使い方はお上手でした。彼女の奔放な可愛らしさが生かさせていたと思います。


2011年の映画ベスト10

2012-01-05 13:33:17 | 映画ベストテン
 新年明けましておめでとうございます。
昨年は辛いことが多く、心の底から映画を楽しめるような気持ちにはなれませんでした。
今年は誰しもが楽しく映画を鑑賞できるような年になれば良いと希望いたします。
毎年20本の映画を観ようと年頭に思うのですが、結局12本しか観てません。
そんな低レベルでBEST10もあるまいというお叱りはごもっともですが、自分なりのまとめとして書き連ねてみます。

①冷たい熱帯魚
園子温のダークパワー炸裂の年でした。
でんでんと黒沢あすかの怪演に吐気をもよおしながら、一等賞にしなければならない凄さを感じました。
②八日目の蝉
孤高のメスも良かったけれど、人の描き方は断然素晴らしかった。
永作博美、井上真央、小池栄子という若手達者な女優にも拍手を送りたい。
③奇跡
是枝作品としてはあんまり感心しませんが、相対的三等賞ということで。
子供たちの瑞々しさにはいつもながら感服いたします。
④ステキな金縛り
三谷作品の当たりクジでした。
一年に一本くらいはこんな大笑いの出来る映画が欲しいですよね。
⑤恋の罪
冷たい熱帯魚がなければもっと上位にしても良かったかもしれません。
富樫真と神楽坂恵の熱演によって破綻を免れた感はありますけど、パワーは傑出した作品です。
⑥ツレがうつになりまして
宮崎あおい、いつの間にか奥さん役がピッタリになっていることが一番の驚きです。
重い題材がハートウォームな物語になりました。佐々部清健在です。
⑦アントキノイノチ
原作のもつ前向きな清涼感が失われていて残念でした。
二人には幸せになって欲しかった。
⑧阪急電車
原作を読んでいないと分かり辛かったのではないでしょうか。
この手の難しい題材を扱ったことを評価したいと思います。
⑨神様のカルテ
TVドラマでも良かった。と、言うのが素直な感想です。
脚本次第でもっと面白い映画になることは間違いないと思うのですが。
⑩僕と妻の1778の物語
結子さんを観るために観た映画です。すみません。
今年は彼女の魅力が満載の作品に出会いたいです。

そんなわけで、今年もよろしくお願いいたします。