
日曜日に傑作が揃ったのは偶然だろう
大河ドラマが面白いと、1週間が早く終わる気がする。バカリズムの玄人芸に近い脚本で楽しそうな演技をする役者を観るのは幸せなひと時だったし、異色の日曜劇場で才能ある若き役者を沢山観られたのも嬉しかった
「リラの花咲くけものみち」
獣医師を目指して北海道の大学で学ぶ学生が主人公なので、出来ればもっと深く長く観たかった。NHKらしい潔さではあるが、3回での終了はあまりにも短すぎる。卒業後の実践で活躍する姿を続編で観せてくれないだろうかコンクリートとアスファルトばかりの背景にはウンザリしてるから、シーズンに一作はこのようにお金をかけたドラマは良いよね
「ふたりソロキャンプ」
最後まで本田望結が気持ち悪くて、彼女が演じなければキャンプ初心者の女子大生に思い入れができただろうに。コミ症の中年男との取り合わせは、山奥のキャンプ場と言う非日常な場所に置いてファンタジックで良い題材だっただけに残念だ。永野芽郁ちゃんとかでリメイクしてくれないかな
「べらぼう」
序盤はやたらポジティブで元気で明るい横浜流星と吉原の相性が悪い気がしてたけど、あのバイタリティが世の中を活気あるものにしていったんだと思う。既得権との闘いは今の世も相変わらずで、飼い慣らされている現代人への叱責のようだ
1/4を終了した時点ではあるが、花魁瀬川を演じてる小芝風花に唸りまくっている。最近どんどん良い女になってるとは思っていたが、この役は最高の当たり役になった。幼馴染に恋心を忍ばせる健気さも良かったけど、想いが通じ合いながらも白無垢姿で花魁道中を演じ切った凛とした姿に涙が止まらない。お決まりの「おさらばえ」の台詞に切なさ、淋しさ、少しの安堵、そして当代随一の花魁である誇を感じさせた。身請けされた後も最後まで物語に絡んで欲しい
やっと森下佳子の本領発揮と言ったところか。毎週楽しみになってきた

「おむすび」
なんだか迷走したまま終わった感じ。神戸・東北の震災やコロナの厄災といったこの30年に起こった印象的な出来事が散りばめられているから、物語が散漫になったのだと思う。神戸の復興だけに時間を絞り、食の力で街を明るくするような話しで良かったのでは?脚本家が嫌いなので余計に否定的になってしまう
「クジャクのダンス、誰が見た?」
アイドルのプロデュースしながら作詞印税で金儲けだけしていれば良いのに、ドラマや映画にまで手を出してくるから始末におえない。そんな姑息な思惑に乗っちゃう視聴者が悪いのもあるけど、昨今のドラマは伏線回収の為だけに作られているみたいだ。物語の本流を無視して犯人当てのサスペンス要素ばかりに気を使いすぎてるのは何もこのドラマだけじゃないけど、冬ドラマの中でも突出していた。4組の親子の深みにじっくり焦点を当てればいいのに、謎解きドラマにしないと最後まで引っ張れないのか?せっかく豪華な役者揃えたのにな
題名も奇を衒い過ぎて意味不明
それにしても、秋元康の罪は重い
「ホットスポット」
最終的には未来人、超能力者、幽霊、タイムスリッパーまで現れ、自分の娘も薄〜く宇宙人の血を引いてるというオチまでこのドラマは容赦なかった。それでいてくどさがないのは、富士浅田の住民がすんなりと彼らを受け入れてしまうからだ。このあたりの加減が作劇上難しいのだと思う
バカリズムの脚本は突拍子もない話しを大真面目に演じさせたり、サラリと受け流して余韻を残さないよう演出するところが優れている。凡庸なドラマはさも食い付いてください的な見せ方をするので、先が見通せてしまい興味が失せてしまう。それに比べて次々に馬鹿気た展開を引っ張る事なく放り込む潔さに感服だ
脚本の面白さを具体的に表現するのが役者の仕事だと思う。この作品には適材適所優秀な人材が配置された
宇宙人役の角田晃広の快演は言わずもがなとして、やっぱり面白かったのは地方に生まれ育った幼馴染女子会の面子だろう。今までもバカリズムはこのコミニティーを描いてきたが、この作品が集大成な気がする。ラスボス扱いで菊地凛子と筒井真理子を登場させて貶めるくだりはやや精細を欠いたけど、喫茶店やオープン前のスナックで毒舌駄弁りながらの会話や車の中で飲み食いしながらキャピキャピする姿は中高生のようで、このドラマのハイライトだろう
市川実日子、平岩紙、鈴木杏、夏帆、坂井真紀、木南晴夏、志田未来、MEGUMIたちに集団演技賞なるものがあるなら与えたい
「まどか26歳、研修医やってます」
芳根京子のために作られたドラマだった。指導医も手堅く上手い役者を配置して、研修医たちの2年間をコンパクトにまとめていた。このドラマの興味は、研修医たちが医療現場で学びながら専門の医療科をどのように選択していくのか、そこに時間を割いて欲しかった。最終話でバタバタと決められた感があり、なんだか説得力に欠けてしまったのは残念だ。若い医師の成長物語だから恋愛や友情も描きたいのは分かるけど、その辺はもっとチャラいドラマに任せておいて、シビアに選択していく様や働き改革と現実のギャップが描かれたならと思った
「御上先生」
従来の学園ドラマにおいて、先生は熱血で生徒は落ちこぼれってのが定番だった。往年の「飛び出せ青春」「中学生日記」「3年B組金八先生」「ごくせん」等、その時代を代表する名作も多く生まれているのでアレンジは変えても救世主である先生と悩み多き生徒の基本構造は一緒だ
この学園ドラマが秀逸なのは、生徒たちのキャラクターが今までのとは真逆で学習能力が高くて自ら難題を解決する力を備えているところ。授業もろくに受けないで努力もせずに不満ばかり叫び散らしてる暴力生徒なんかより、よっぽど現実味あるし応援し甲斐がある。子供である事に変わりはないから、稚拙だったり視野の狭さゆえの問題点を官僚から出向してる御上先生が大人目線の冷徹なヒントで導いていくのだけど、終盤は覚醒したかのよう成長していく生徒たちに教師たちが頭を垂れる姿が晴々しい。全編に渡って「考える力」の大切さが説かれ、若者には説教臭く感じたかもしれないが、かなり大人になってしまったわたくしからは腹落ちするフレーズだ
不正入学が大人の都合により行われ、被害者は生徒だったとの短絡的な構図はテレビドラマの限界だろう。それを変えていくのが現場の教師や政治家じゃなく、エリート官僚だと言うのも抵抗ない訳じゃないけど真実味はある
蒔田彩珠、奥平大兼、窪塚愛流、高石あかり、吉柳咲良、影山優佳、永瀬莉子、必ずこの中から将来主役を担う予感がする。そのくらい質の高い若手役者が揃った
当然、松坂桃李と吉岡里帆の代表作にもなるだろう

リアルタイムではないけど
「東京サラダボール」をプライムビデオで一気見した。NHKは民放局とは一線を画す視線でドラマを作るから一目置いている。この作品は東京に暮らす外国人たちを、刑事と通訳人のバディが触れ合いながら事件を解決したり寄り添ったりと言う変化球
大部分がアジア圏から仕事のために日本に来た労働者の話し。印象的な台詞があったので書き留めておく。外国人労働者に仕事教えても数年したら帰国してしまうから馬鹿らしいし、日本人の仕事を奪ってしまうと怒る介護職員に通訳人が言う
「もう日本は外国人の労働力無くしては成り立たない国なのだ」と
終盤、警察官と犯罪組織の癒着とかに重点が置かれ既視感覚える展開になったのは残念だった。それでも奈緒と松田龍平のバディは面白かった(原作通りなんだろうが奈緒の緑の髪は似合ってなかった)
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