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映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

キネマ旬報そう来たか

2017-01-12 20:58:32 | 映画ベストテン

2016年キネマ旬報ベストテンが発表されました。
このところ信頼性低下しているよう感じますが、それでも一番信用できる映画雑誌なので尊敬はしてます。
だけどだけど、の選出もあって、一言いいたい。


この世界の片隅に
この一等賞はキネ旬らしいし、納得でもあります。

シン・ゴジラ
まさかゴジラに、それも庵野ゴジラを評価するとは思いもしませんでした。驚きです。

淵に立つ
三等賞は出来すぎじゃないでしょうか。ラストの弱さをどう評価したんだろう?

ディストラクション・ベイビーズ
観てません。観ようとも思いませんでした。今後も多分観ないと思います。

永い言い訳
この辺りの順番がしっくりしますね。常連ですし。

リップヴァンウィンクルの花嫁
岩井俊二だったからちょっぴり観ようと思ったけど、尺の長さでめげたような気が・・・。

湯を沸かすほどの熱い愛
何度も観ようとしたんですけど、タイミングが合いませんでした。近いうち観ます。

クリーピー 偽りの隣人
なんでランクインしたんだろう?黒沢作品の中でも中途半端な出来だと思います。

オーバー・フェンス
山下敦弘ならぼくの叔父さんを観ようと思いましたが、どっちも観ませんでした。

怒り
悪人より好きなんですけどねぇ~。もっと上でも良いと思うんですけど。


で、なんか変だよね。
あれが入っていないんですよ。
やっぱりキネ旬選者ってどこかひねくれ者ですよね。
昔みたいにただのブームで1,700万人を超える人々が映画館に押しかけるわけ無いじゃないですか。心に響いたから口伝えに近しい人へ勧めたんだし、SNSへ想いを吐露したんですよ。その熱い感動に水差すような評価するのがプロの評論家なんですかね。もう二度と新海誠キネ旬にはランクインできないだろうな。
でも、日本だけじゃなく世界中の多くの人達が正しい判断をしてくれますよ。
「君の名は。」2016年はそのタイトルを永遠に忘れる事はありません。
キネ旬ざまあみろ。プイッ。






2016 ありったけの Best10

2017-01-06 18:14:05 | 映画ベストテン

毎年年頭になると鑑賞作品の足らなさを呪文の様に書きつらえておりますが、2016年のベスト10はそこそこ威張れるかな。それもこれも稀にみる邦画の質が高かったからです。何はともあれ順番です。(洋邦取り混ぜて、前編後編で一本とカウントしました)

①怒り
圧倒的な圧力を感じました。人が他人を信じることの難しさと尊さを観せてもらいました。原作も読んでいますが、わたくしは映像による表現の方が優れていると感じました。宮崎あおい演じる少し足りない女性や米兵の餌食となった沖縄に住む少女(広瀬すず)の慟哭は、映画でしか伝える術は無いと思います。
苦しみながらも人を信じる喜びが描かれていた事は、同じスタッフで作った「悪人」に比べ心寄り添える作品でした。キネマ旬報10位

②君の名は。
2016年を語る時、必ずこの作品を思い出す事でしょう。記憶にも記録にも残る傑作になった事を大変嬉しく思っています。ずっと新海誠の才能を愛でてきたのですもの、やっと世界中の人々が気付いてくれたんだと感謝したい位です。この作品が教えてくれた事、それは諦めない心の強さ、「好きだ」と言うシンプルな気持ちを保ち続けられれば、運命の人とは必ず惹かれあうのです。

③この世界の片隅に
優しい気持ちになれる映画でした。あのヒロシマで起こった無慈悲な惨劇に向かって物語は進んでいきますが、日々の生活は決して辛く苦しい描写ばかりではありません。少女のまま嫁入りした主人公の、創意工夫に満ちた愛すべき営みのドキュメントです。防空壕で接吻する若い夫婦のトキメキは、今この世の若者と何が違うのでしょう。主人公が喪った右手で描かれる筈だった未来こそ、わたくし達が享受している今なのです。キネマ旬報1位(よかった)

④シンゴジラ
まさか庵野ファミリーが創ったゴジラがこんなに面白くなるとは思いませんでした。エヴァは画期的で優れたアニメ作品ですが、庵野監督のクリエイター資質にそれ程賛同するものではありません。自分の好きな事をやり切ってもエンターテイメントとして成り立てば良いのですが、彼の作品はマスターベーションの域を出ない事が多いと思うからです。しかし、このゴジラは幸せな事にある意味オタクイズムがうまく作用した稀有な例となりました。ゴジラと言うより政治ドラマとして楽しめます。キネマ旬報2位(キネ旬選者が選ぶとは!?)

⑤聲の形
「友達からお願いします」そんな風に言いたくなりました。イジメとか障害とかの重い題材が内包されていますが、それもこれも友達から始めましょうよ。わたくしの歳になるとまわり道しなくとも近づける術を知っていたりしますけど、あの年頃はそうじゃありませんものね。だから不器用でも良い、伝わり辛い小さな声でも良いから、「友達からお願いします」と言えると良いね。そしたら少しずつわだかまりは無くなって、素直に好きって言えるんじゃないかな。

⑥オデッセイ
本当に久しぶりです。リドリー・スコット、ちゃんと監督していたんですね。邦題が酷すぎて真意が伝わりませんが、ひとりぼっちで火星に留め置かれたらどんなにか寂しいだろうと感情移入しました。単身赴任が長引いているからでしょうか?そんな環境でも植物を育てるのって、本能的に癒しになるんだなと思った次第です。派手な宇宙活劇も楽しいものですが、こんな地味でも実のある作品も良いもんです。

⑦ハドソン川の奇跡
映画の作り方を学ぶにはもってこいの作品でした。だからってこんな映画を誰もが作れる訳じゃ有りませんけどね。イーストウッド作品は題材によって好き嫌い分かれますが、これは好きな作品です。世界中の人が知っている美談をなんで今更映画にするんだろうと思っていましたが、観てみれば成る程です。美談の陰にはちゃんと人間ドラマと強い使命感があったんですね。納得です。キネマ旬報洋画1位(またかよって感じ)

⑧ちはやふる
広瀬すずが見たくて観た映画でした。特に前編(上の句)は、彼女の魅力が存分に発揮されたアイドル映画の体を成していましたが、見所はそれだけじゃ無く、競技かるたのスピード感ある面白さを観せてくれました。後編(下の句)にリズムの乱れが出てきて、快作とはなりませんでしたが充分楽しめる映画です。残念なのは無理矢理二部構成にしている事でしょうか。長い漫画原作をそのまま映画にしない英断を求めます。

⑨永い言い訳
西川監督が家族を描き出した事を嬉しく思います。師匠の是枝作品とは違った現代日本の家族を、これからも観せて欲しいな。日本映画の得意分野である家族ものは、小津や木下、山田といった世界的名監督によって確立されてきました。今の第一人者は是枝監督ですが、女性監督がいないのです。だから期待しています。オリジナルストーリーで映画が創れる数少ないクリエイターである事も期待しましょう。キネマ旬報5位

⑩葛城事件
出来れば観たくない心荒ぶ映画です。物語には全く救いがありません。暗いとかの短絡的な言葉で表現できないお話でした。家族が壊れてゆく様を見続けていると、ひとつふたつはどこの家庭にも有りそうだからいたたまれないんだと思います。三浦友和演じる主人公の父親がやっている事に、わたくしもそれとなく心当たりがあったりして、絵空事ではありません。

次点
64-ロクヨン–
淵に立つ キネマ旬報3位(かなり高評価だけど)
アイアムアヒーロー

次点が三つもあるなんて近年稀です。それだけ充実した年だったんですね。毎度の事ですが、外国映画は楽しそうなものしか観ないし、邦画も観たいと思いながら縁がなく見逃した作品がいくつかあります。それでも2016年は映画鑑賞として素敵な年になりました。


個人的に感心した事も記しましょう。
監督
これはもう、「君の名は。」の新海誠監督です。
次回作のハードル高くなりましたが、引き続き応援していきます。
脚本
「怒り」の李相日で。
原作よりも心打つ脚本書くのは相当難しいですから。
女優
「怒り」で新境地を開いた宮崎あおいと、
「淵に立つ」の神がかった演技を見せてくれた筒井真理子です。
男優
「怒り」出演の渡辺謙、森山未來、妻夫木聡、綾野剛、松山ケンイチ、の面々に。
特別賞
声の演技として、「君の名は。」上白石萌音と、「この世界の片隅に」のん。


どうしても許せなかった作品も。
「インデペンデンスデイ リサージェンス」「ズートピア」
どちらもアメリカの愚行(中東介入戦争や人種差別)を棚に上げた綺麗事映画にムカつきました。


2017年も沢山の出会いがありますように。ゆったり映画を観られるゆとりある生活が続きますように。良い映画を観た後は、心許せるあなたと熱く語れる日々でありますように。






2015 なけなしのBEST10

2016-01-05 21:53:14 | 映画ベストテン
2016年も5日が過ぎようとしてます。
新年おめでとうございます。
滝の流れみたいにジャンジャン時が過ぎて行き、驚くばかりです。
驚くといえば、2015年のBESTを選ぼうと振り返ったら13本しか新作を観ていませんでした。ビックリぽんや!とか言ってる場合じゃないですね。最初に言っておくと、観ようとしたのに御縁が無かったのは、(ソロモンの...、駆込み女と...、あ...、恋人...、きみは...、味園...)言い訳ばかりです。

①バクマン
2015年の一等賞は勢いと熱さを買ってこの映画にいたしました。大根監督は前作の「モテキ」が大変楽しかったので、期待していただけに嬉しかったです。題材自体にはそれ程の思い入れは無く、漫画を創るのは大変なんだなぁ程度の感想しか持てませんが、何を生み出すにせよ慢心と毎日過ごしている人には神様は降りてきてはくれない事だけは確かですね。好きなものに夢中になる事の尊さを教えてもらえます。この歳になると冒頭に書いた通り好きな映画にさえ足を運ぶのが億劫になります。今年は入れ替えられる心があるなら入れ替えて、もっと沢山映画館に通います。すみませんでした。

②さよなら歌舞伎町
廣木監督は全幅の信頼をしているわけではないけれど、荒井晴彦脚本を良い温度に温めて観せてくれる監督として貴重な人だと思います。荒井脚本は昔から凄いと思っているし、少しでもシナリオ囓った事があればその奥深さに畏敬の念を抱くだろう。ただ、何と言っても重たいのです。そのままストレートにぶつけられちゃうと痛みがなかなか引かないかも。廣木監督は世界観を崩さず、歌舞伎町の夜に生きる人々を程よい装飾を施しながら観せてくれた。助演の韓国人女優イ・ウヌの素晴らしさを知る事もできました。

③くちびるに歌を
何しろ原作が好き。わたくしも田舎者だから地方(特に僻地といわれるような所)で思春期を過ごしている子供達を見ると放って置けないのです。この作品の舞台は長崎の五島列島。昔一緒に働いていた知り合いがその島の出身だった事を、いま思い出しました。あんまりいい奴ではなかったので、この物語のような純朴な少年ばかりではないんだ(そりゃそうだ)。スウィングガールズがそうだったけれど、一生懸命音楽に打ち込んでいる子供達って絵になりますね。キュンとしてしまう可愛い映画です。

④岸辺の旅
黒沢清との相性はそれほど良いとは思えません。世界的に評価の高い監督ですが、観た映画には気分が乗らず、観たかった作品とは縁が無く未見のままです。好みですから仕方ありませんけど、何人かそういう相性の悪い監督いますね。でもでも、この作品はとても好みでございました。死者との道行を描いているのですが、悲愴感は感じられずお涙頂戴の三流ドラマになっていないのは流石です。浅野忠信も苦手な部類でしたが、初めていい役者だなと思った次第です。7日発表のキネ旬では5位でした。

⑤海街diary
是枝監督作品としてはちょっと違うかな。映画を観たあとに原作も読みました。映画は原作そのままに忠実に再現されていて、原作好きな人も文句無いだろうと思います。鎌倉に住む四姉妹もあのキャスト以外には思いつきません。四姉妹を囲う人々も過不足無く配置され、小津映画を観ているような安定感ある佳作なのです。が、わたくしの好きな是枝作品はもうちょい辛辣であって欲しいし、夏の陽に炙られた使い晒しのタオルのようなゴワゴワした肌感覚が欲しかったのです。キネ旬4位です。

⑥ジュラシックワールド
ジュラシックシリーズの最初に戻ったみたいでとても楽しめました。そもそも恐竜大好きなので、20年前にジュラシックパークを観た時は真剣にあの世界に紛れ込みたいとさえ思ったものです。原作の哲学も引き継がれていて、Ⅱ・Ⅲとだんだんこけおどしのパニック映画になりつつあったシリーズを元に戻してくれたかな。普段ハリウッドメジャー映画を馬鹿にしていますけど、この手の映画はやっぱりハリウッドがつくらないとダメですね。

⑦氷の花火
山口小夜子を今更映画にしてどうするのかと思いましたが、観終わってみれば、松本監督が今つくりたかった理由が分かりましたし、今こそクールジャパンの元祖のような彼女を再発見することはとても意義深いと思いました。TVで数多くのドキュメンタリーを手がけた監督が、山口小夜子のメークや撮影を担っていた方達と、自分たちが創造した「小夜子」をつくり上げてゆく様子が物語を観ているようでスリリングでした。

⑧アメリカンスナイパー
イーストウッドもいつ死んじゃうか分からないから、観る時には観ておかないとなりません。日本の映画評論家の多くはクリント教の信者みたいで、どんな作品も褒めますよね。わたくしはそれ程のものか?と、いつも疑念を抱いています。本作品も遠い砂漠の地で、何が正義なのか良く分からなくなってしまった戦争を、醒めた目で見ている部分は流石だと感心しますけど、根底にある銃社会への肯定がどうしても許せませんでした。やっぱりキネ旬2位にしちゃいました。

⑨バケモノの子
前作が良すぎた事と、ファンタジーになるべき世界(バケモノ界)の没個性が祟った気がする。今回も家族を描こうとしているのは分かるのですが、主人公達は最後まで家族になりきれてませんでした。よっぽど敵対するライバルの方に感情移入しておりまして、作劇としては失敗です。「サマーウォーズ」は血の繋がった大家族と新参者が交じり合いながら、最後は見事に同化してました。あの感じが出せなかった。

⑩スターウォーズ フォースの覚醒
もう二度と出会うことの叶わない親友に逢えたようなそんな感じ。40年近く前から知っている友は、途中ちょっぴり気難しい雰囲気にもなったけれど、久しぶりに話してみれば昔と変わってはおらず、すんなりとけ込めました。ルーク、レイア、ソロ達がそのまま本当に年月をかけて年老いた姿を見せてくれたのが要因でしょうか。わたくし達世代にとっては嬉しい出来事でした。

次点 母と暮らせば
山田洋次が監督じゃ無くてもこの映画は成り立っていたな。長崎の原爆を扱っているから笑いにはできないけれど、ユーモアはあっても良かったんじゃないだろうか。「父と暮らせば」が持ってた良いところを全部裏切られた気がします。それでも、黒木華は昔の日本女性を演じさせると、今や日本一の女優です。キネ旬9位にランクインです。





2014 掟破りのベストテン

2015-01-07 15:51:01 | 映画ベストテン
 今年もベストテンの季節です。
それなのに、洋邦合わせてやっと10本位しか観てませんので、今年はとうとう合せ技10本ということで堪忍していただきましょう。掟破りではありますが、お許しください。

①インターステラー
文句無く感激感涙の作品でした。2014年の締めくくりをこの映画で終われば幸せだったのに、よせば良いのに「寄生獣」を観てしまったのでなんとなく晴れ晴れしい気持ちで終われませんでした。
ゼメキスの「コンタクト」、キューブリックの「2001年宇宙の旅」が好きなら間違いありません。重力場とかワームホールなぞと聞けば黙っていられない御仁にもぴったり。そして何より、娘をもつ父親、父との距離を感じている娘は必ず観るべき傑作です。キネ旬洋画6位。

②紙の月
「桐島、部活・・・」でびっくりさせていただきましたが、この作品の完成度はそれ以上に高いものでした。よく言われているように、宮沢りえ、小林聡美、大島優子のアンサンブルが上手く機能していたと思います。りえ&聡美の演技は周知されていますが、ケレン味ある技相撲と堂々たる横綱相撲を堪能できる幸せはそんなに多くは無いでしょう。
優子ちゃんのハスキーな声は、ささくれ立った女の職場を象徴しているようで良かった。敦っちゃんといい、AKB恐るべし。キネ旬邦画3位。

③小さいおうち
原作が本当に面白いのです。でもそれ以上に脚本は素晴らしかった。
この映画も山田洋次あってですが、やはり、二人の女優が圧倒的に素晴らしかった。
松たか子は「ヴィヲンの妻」「告白」で見せた女の業の深さを分かりやすく出せる女優として今や日本一だろうと思う。収穫はなんといっても黒木華。原作通りの女中さんでした。昭和にしか生息できないような昭和顔もわたくしには好ましく感じました。キネ旬邦画6位。

④ゴーンガール
わたくしの奥様が大のお気に入りなので、もう一度一緒に観ようよと誘ったのですが、夫婦で観ないほうが良いと思うよとのことで一人で観ました。感想として、仲良し夫婦は二人で観て大いに笑うべし。
確かに身につまされるような後ろ暗い夫婦や、これから結婚しようと思っているカップルにはお勧めできませんが、夫婦の本質を良質なホラーコメディとして描いていると思います。

⑤蜩ノ記
原作に無い躍動感を感じることが出来たのは映画の特権だと思います。
役所広司にうってつけの役どころであり、その魅力を遺憾なく発揮できています。脇を固めている役者も過不足無く映画になじんでおりました。小泉監督の静かな語り口は「雨あがる」の頃のようにしっとりとしており、日本映画のお手本のようでした。キネ旬邦画10位。

⑥アナと雪の女王
久し振りに満員の映画館を体験した作品です。
幼少のお嬢ちゃんたちに挟まれて観た事も良い思い出となりました。
ディズニーアニメを映画館で観ることなどこれからはそうそう無いと思います。いい歳こいたオジサンが一人で観に行ったように、社会的現象になった本作品の意義は大きいのです。

⑦舞妓はレディ
とても期待して待っていた周防監督謹製のコメディ。「shall we ダンス?」以来のコメディです。題材も舞妓さんになるためのサクセスストーリーっぽいじゃありませんか。バッコンバッコン笑わせてくれると期待しますよね。
う~ん。ダメじゃないけど、欲しかったものとちょっと違ったような残念無念。「マイフェアレディ」を知らなきゃ楽しめない作りも減点ポイントかな。次、頑張りましょう。

⑧渇き
これまた期待の中島監督作品。
う~ん。ストーリーもリズムも荒れ放題で、中島作品の茶目っ気を楽しむことが出来ませんでした。毒気があるのが魅力ではありますが、最初から最後まで毒々しいと何が毒なのかが分からなくなってしまいます。主演の女の子が如何にもの温度感じさせない女子高生を好演しておりました。

⑨思い出のマーニー
宮崎・高畑が一線から退いたジブリを担う人材として期待されている監督だそうで、スタッフも両巨頭の時とそん色ない丁寧な仕事ぶりでした。「アリエッティ」も瑞々しい作品でありましたから、監督の持ち味なのでしょう。少女から大人へ移ろう時間を上手く捉えていると思いますが、今後、違う題材をどのように料理できるか観てみたいと思いました。最後に明かされたマーニーとの関係が素敵なファンタジーになりました。

⑩ゴジラ
ハリウッド版「ゴジラ」には懲り懲りしていた筈の日本人ですが、渡辺謙がやったなら観てもいいかなと。
結果、大変楽しめました。全く期待していなかった分、得した気分です。
我らがゴジラが敵の怪獣をぶった切るシーン、なんと言う恍惚感でしょう。わたくしたちの世代は、モノクロのおっかないゴジラが正義の味方になってしまいしぇーさえしてしまうようになってからの付き合いなので、一入です。

次点wood job 神去なあなあ日常
原作大好きなので、矢口監督にはちょっぴり失望しました。


2013年BEST10

2014-01-16 18:09:19 | 映画ベストテン
 2013年は名古屋へ単身赴任したこともあり、年間20本の邦画鑑賞を目標にしていましたが、結果半分くらいになってしまいました。特に三月から五月までの過渡期は落ち着いて映画を観ているほど余裕が無くて、見逃した作品も多くDVD鑑賞でお茶を濁させていただいた作品もございます。

①そして父になる
好きな監督の好きな題材でしたので、観る前から期待しておりましたし期待通りすばらしい作品になっておりました。わたくしも小学2年生の息子がいますから、身につまされる内容でもありました。それにつけても、是枝監督の子供に対する演出は賞賛するしかありません。二組の夫婦もステレオタイプな描かれ方でしたが、説得力があり好感の持てる家族として印象に残りました。キネ旬6位でした。

②舟を編む(DVD)
三浦しをんの原作は映画化されると評価高いですね。
本屋大賞の原作を手堅く映像化したなというのが印象です。「川の底から・・・」のように奇を衒ったつくりではなく、日本映画のお手本のような丁寧な作り方はこれからの期待につながります。良い映画を沢山撮って欲しい監督です。
主役も脇役もでしゃばらず、気持ちの良いアンサンブルでした。キネ旬も2位でした。

③風立ちぬ
宮崎監督の遺作となるのでしょうか?
そこ此処に死の影が忍び寄る雰囲気は今までの宮崎作品には無かったことですし、初めて大人の女性(SEX)をとり上げたことも驚きでした。空・風・少女・飛行機、自分の好きな題材を好きなだけ描き、万人に幸福感を与えられたことは作家冥利につきますね。本当に幸せな作家だと思います。キネ旬は7位にしています。

④モラトリアムたま子
これまたキネ旬常連の山下監督作品。小品すぎてランクインしないだろうと思っていましたが、9位になってました。
80分にも満たない中編なので、スルッと終わってしまいます。山下作品に慣れていない人には何のことやら分からないだろうなぁと心配になるほどです。前田敦子を観に来たお兄ちゃんには厳しかっただろうと察します。
何も起きない終わらない映画でほっこり出来るのも乙な楽しみじゃないですか。

⑤少年H
原作がしっかりしている作品は、よっぽど脚本家がでしゃばらない限り上手くいくことが多いのですが、この作品も例に漏れず安心して二時間を過ごすことのできる佳作に仕上りました。
水谷夫婦が物語の中でも夫婦を演じましたが、本当に息の合った感じが伝わってきて気持ちよかったです。欲を言えばこのような映画がオリジナルで作られる映画界であることが一番大切なことです。キネ旬番外。

⑥清須会議
三谷作品の常識を覆すような真面目さで見せてくれる映画でした。前半部分は何時笑わせてくれるのだろう?と期待しながら観ていたのですが、終わってみればきっちりした本格時代劇になってました。いつものように贅沢な役者使いです。役者も三谷に使われるのを楽しんで演じています。怖い監督ばかりが優秀な演出家ではないんですね。
キネ旬は今回もランクインさせませんでした。そんなに頑なにならなくても良いと思うのですが。

⑦さよなら渓谷
2013年に観た映画の中では一番重たい映画でした。
日本人が男と女を描くと、どうしても重くならざるを得ないのでしょうか?この重さが若い人たちには暗いと勘違いされて、暗い=詰らないとなってしまうんでしょうね。人と人が年月と愛憎を深めてゆけば、人知れない渓谷にひっそり佇む深淵の如く得体の知れない不気味さを内包するのかもしれません。キネ旬8位。

⑧はじまりの道(DVD)
くれよんしんちゃんの原監督がいよいよ実写を撮りました。忙しさにかまけて劇場鑑賞できず、DVDで失礼いたしました。尺といい物語のキレといい無駄を省いていて気持ち良いつくりです。多分に初実写版ともなればもっとフィルムを回しかったと思うのですが、最小限に抑えています。ここまで抑えていながら蛇足と感じてしまったのが、木下恵介監督に対する思慕の強さゆえの作品オンパレードでした。ランクインしそうな作品ですが、キネ旬番外です。

⑨かぐや姫の物語
これまた遺作となる可能性大な高畑監督作品。どうしても宮崎監督と比較されてしまうし、万人受けするのは明らかに宮崎作品ですからこの作品のために費やした8年の歳月は精神的重圧を察するには余りあります。日本人なら誰でも知っている物語を、今、正面から取り上げた理由は何なのかわたくしには思いもよりません。技術的な高さも素人には意味がありません。それでも、挑む思いの強さ。キネ旬は敬意を込めて4位でした。

⑩言の葉の庭
新海誠作品、得意の中篇。都会の谷間に広がる公園に降りしきる雨の美しさ。年上の女性との密やかな逢瀬。いつも喪失感を漂わせる色の配置がこの作品でもベースにあります。「秒速・・・」の感激までは得られませんでしたが、ジブリや細田アニメだけが日本映画界の至宝でないことを思い知らせてくれます。これからも丁寧な映画作りをしていただければ寡作でも我慢いたしましょう。キネ旬には認められませんでした。

今年も出来る限り沢山の映画と出会えるよう努力いたします。