漸くキネマ旬報ベストテンが発表された。
本来出版物なんだから、出版と同時に告知されるべきなんだろう。
先年までは選者が選んだ10位までが正月早々発表されていた。それに慣れていたので、待ち遠しかった。
2018年度の選出でびっくりしたことが二つ。
一つは、選者と読者が選んだ一等賞が邦画も洋画も同じだったこと。調べたわけじゃないからいい加減な話になっちゃうけど、これって結構珍しいんじゃないかな?
「万引き家族」はいつも通ぶった選出をしてくる選者にとっても外せなかったんだろう。パルム・ドールのお陰で大ヒットしたからメジャー作品みたいになったけど、本来はひっそり公開されて一部の人に評判になるような映画だからな。わたくしも一等賞にしたから文句の付け様がないけど、そうなってしまうとちょっぴり寂しい。(ほぼ毎年、選者のチョイスを皮肉っていたので・・・)あまり面白味は無いけど、まあ、順当な結果としてパチパチパチ。アカデミー外国語賞は対抗馬が強烈過ぎて難しそうだ。相対評価だから仕方が無い。
「スリービルボード」は観てないから何んとも言えない。家の奥様によると、まあまあの出来らしい。アカデミーも外れたし、日本の評論家もそれほど騒がなかったから意外といえば意外だった。
二つ目は、主演賞に安藤サクラと柄本佑夫婦が選出されたこと。これこそはキネ旬始まって以来じゃないかな。これまた調べもしないで言ってるけど。
安藤サクラは随分前から当確だったよね。子を持てなかった女の悲しさ悔しさみたいなものが、あの泣きの演技に凝縮されていたし、ケイト・ブランシェットだけじゃなく観た誰もが納得の演技だった。
柄本佑の受賞対象作品は一つも観てないし、二作品は存在さえ知らない。お父さんに似た粘っこい演技をするイメージしかない。亡くなったお母さんへの良い餞になることだろう。
さて、日本映画が豊作だった2018年、わたくしの選んだベストテンがキネ旬読者と選者にはどのように評価されたのか、興味本位で並べてみた。(読者選出は30位までしか発表されていないので、選外であってもゼロと言うことではない)
好きものどうし選出⇒キネ旬読者選出⇒キネ旬選者選出
①万引き家族⇒1位⇒1位
②ちはやふる結び⇒30位⇒50位
③寝ても覚めても⇒4位⇒4位
④カメラを止めるな⇒2位⇒17位
⑤今夜、ロマンス劇場で⇒25位⇒選外
⑥若おかみは小学生⇒選外⇒28位
⑦来る⇒17位⇒20位
⑧生きてるだけで、愛⇒23位⇒30位
⑨日日是好日⇒5位⇒9位
⑩SUNNY強い気持ち強い愛⇒選外⇒39位
①万引き家族 ③寝ても覚めても
この二本は同じ価値を共有できた作品だったということ。
②ちはやふる結び ⑤今夜、ロマンス劇場で
大体こんな評価だと思っていたけど、②はやや評価が低すぎやしないかと思う。面白いのは⑤に読者はそれなりに食いついたが、選者は一点も入らなかったこと。
⑥若おかみは小学生 ⑨日日是好日
意外に思ったのは、⑥のような佳作に読者は票を投じていないこと。逆に⑨が読者も選者もベストテンに選出していることが、それ程のものかと感じてしまった。樹木希林へ対する賛辞の証の意が大きいと思う。
④カメラを止めるな⇒2位⇒17位
唯一噛み付くポイントを見つけたのがここ。
2018年映画界の最大トピックスと言える④の大ヒットは、SNS等の不特定第三者による宣伝活動が要因の一つでもあるが、肝心の映画そのものが面白かったからだ。読者は最大のリスペクトをもって2位に選出している。確かに王道の映画作品ではないし、技術的にも演出も演技もアラだらけだけど、この作品をベストテンに選出できないキネ旬選者とは、いったいどこの宇宙人だ!?映画に対する純粋な愛なんか無いのか!
偉そうなこと書いたが、読者にも選者にも評価されている作品をことごとく観てない。
瀬々敬久監督の「菊とギロチン」「友罪」、「その鳥はうたえる」の三作品は信頼しているブログでも評価が高かった。がんばって観ておけばよかったと後悔している。「孤狼の血」は原作が面白かったし、監督もキャストも一流だったけど単にあの手のドラマが嫌いなので敬遠した。同じ理由で「斬、」「止められるか、俺たちを」も。全くノーマークだったのが「鈴木家の嘘」。必ずこういう映画はあるから仕方が無い。CS放送された時にはチェックして観てみる。