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映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

2021 コロナに負けちゃった映画BEST10

2021-12-31 07:34:00 | 映画ベストテン


夏にコロナ感染したことで暫く映画館に通えなかったのと、秋以降観たいと思う作品が少なかったこともあり結局映画館で鑑賞した新作は20本止まりでした
少ない鑑賞作品でもそれなりに満足した一年だったので、良しといたしましょう
濱口監督の傑作を2本観ることができたし、想定外の良作に出会うこともできました
以下の並びはいつもの様に、今感じているわたくしの好きな映画の順番です


❶あのこは貴族★★★★★
東京のお金持ちのお家で生まれ育ったお嬢様と、田舎から苦学して東京の大学に入学し社会人になった女性を対比させながら、自由に生きることの意味とか幸せを清々しく語ってくれました。門脇麦の上手さは知っていましたが、水原希子の存在感に唸りました。わたくしも田舎から上京して都会に住む人たちの羨ましいところも可哀想なところも見てきましたので、この映画はとても感銘したのです。脚本・監督の岨手由貴子の名前は覚えておこうと思います

❷街の上で★★★★★
学生時代に通り過ぎた町、下北沢。その街の上で今を生きる若者たちを淡々と描いていて、懐かしさと共に何だか感傷的になってしまう、そっと誰かにお勧めしたくなるような作品です。あれから40年近くの歳月が過ぎ、当然街並みはがらりと変わっているのでしょうけど、そこで今を生きている彼らはかつてのわたくしたちがそうであったように、悩みを持ち人を好きになったりすれ違ったりしているんですね。愛おしい映画でした

❸偶然と想像★★★★★
2021年に公開された映画の中でも屈指の傑作だと思います。もしかしたら世界中でも一番じゃないかしら。三話からなる短編集だけど、どの話も偶然と想像が織りなす物語。何だか不思議な異世界に紛れ込んだような感覚になるから、基本二人の会話劇なんだけど隣で一緒に話を聞いているような臨場感もあります。もっと沢山の人に観ていただきたいのに、日本興行界の限界でしょうか?濱口監督の才気に嫉妬したくなる作品です

❹ドライブマイカー★★★★★
コロナに苦しんだ夏に公開され、長尺であったことも言い訳にして回避しようかと思っていたのですが、ちゃんと観ておいて良かったです。濱口監督の恐ろしいほどの快進撃にちょっと戸惑っています。NY、LA、ボストンとアメリカの批評家たちからも絶賛されてますので、もしかするとアカデミーの旧外国語映画賞はいただけるかもしれませんね。急逝した妻の闇と向き合ってゆく中年男が蘇生してゆく様はキリスト教世界にも理解できるんですね。流石、村上春樹?

❺彼女が好きなものは★★★★★
NHKのドラマが先行してましたから、ドラマを楽しめた人はこの映画も気に入ってもらえると思います。わたくしはラストに用意された穏やかなシーンが大好きで、こんな風にマイノリティの方や自分を認められず苦しんでいる人達の理解者になりたいなと思わせてくれました。これからも日本の映画やドラマはLGBTQの題材と向き合うでしょう。指針になるような作品でした

❻すばらしき世界★★★★★
今までの生き方をリセットしてまっとうな人生を生きようとした男の姿を、時には滑稽に描きどこか悲哀を感じさせるお話は、題名をどのように解釈すればいいのか悩ましく感じます。人は本当にやり直すことができるんでしょうか。西川美和は今までの作風と一緒で命題に対して分かりやすい回答を出しません。その意地悪さも含めて彼女らしい作品でした

❼空白★★★★★
ちょっとだけ説教の臭いが強かった分素直に受け入れられないところもありましたが、生前分かり合うことの出来なかった娘を亡くした父親の気持ちは痛いほど感じ入ってしまいました。下手糞だけど父親の描いたイルカの雲は、この居たたまれない物語に少しだけ暖か味を与えてくれました。映画ならではの問題提起として存在をアピールしています

❽ノマドランド★★★★★
アメリカの荒涼とした大地を彷徨うノマドは文明の利器を自在に取り入れながら、しがらみに縛られるのを拒むように流れて行きます。この感覚は島国の日本人にはいつまでたっても理解できない感覚なんでしょうね。広大な土地に育った中国人監督だからこそ映像化できたんだとも思いました。不確かな明日を生きるのって結構しんどいんじゃないでしょうか

❾竜とそばかすの姫★★★★★
久し振りに細田守作品で楽しめました。奥寺佐渡子脚本から離れて失敗作が続きましたので、最早これまでの作家だったんだろうと諦めかけていたのですが、みごとに復活しました。仮想世界で歌うことで自信を取り戻した主人公の女の子が現実世界でも成長してゆく姿には無条件で拍手を送りたくなります。それでも脚本は他人に任せた方が良いと思いますが

❿ヤクザと家族★★★★★
ヤクザの世界には未だ昭和感覚の義理とか人情が生きているんでしょうか。わたくしもドップリ昭和時代に生きて参りましたので郷愁みたいなものはありますが、反面煩わしさも感じてしまうのです。娑婆に帰ってきて浦島太郎状態になっている昭和的ヤクザが苦悶する時代間の壁は、取り残されてゆくわたくしども老境に差し掛かるオヤジにも通じる疎外感です

次点 騙し絵の牙★★★★★






監督 濱口竜介(ドライブマイカー)
脚本 濱口竜介(偶然と想像)
主演男優 若葉竜也(街の上で)
主演女優 フランシス・マクドーマンド(ノマドランド)
助演男優 松坂桃李(空白)
助演女優 水原希子(あのこは貴族)
応援 山田杏奈(彼女が好きなものは)古川琴音(街の上で、偶然と想像)中村佳穂(竜とそばかすの姫)


そして恒例の奥様ベストテン





何と今年は一本だけ被りましたよ
「街の上で」
すごい映画です。奇跡は起こるのですよ



来年も沢山お気に入りの映画を観られる一年でありますように




キネマ旬報とボクの60年

2021-02-09 17:55:00 | 映画ベストテン


なんとなんと、2021年の夏にはわたくし還暦60歳を迎えます

映画雑誌「キネマ旬報」の歴史には及びませんが、それなりの人生を生きてきました
そこで、生まれてからこの方、キネ旬ベストテンに選出された映画の中から、その年毎に好きな作品を選んでみました。選出された全ての映画を観ているわけではないから、当然自分が観た中からしか選べませんので歪なものになってしまいますが、それこそがわたくしが生きてきた証。選外の作品にもっと好きなものがあったりしますが、あくまでもキネ旬とわたくしの歴史という事で勘弁してもらいましょう






1961
60年前のこの年に生まれました。指折ってみると太平洋戦争終結から16年しか経っていないんですね。何だか歴史の教科書の出来事みたいです。
ここからの十年、東京五輪を経て高度成長期を迎え日本は明るい未来を信じて突き進みます。世界では東西冷戦が顕著となり人類は月への着陸を果たすまでになります。昭和元禄を象徴する大阪万博のお祭り騒ぎが遠い幻影のようです
当然、リアルタイムで鑑賞した映画はありません。テレビや名画座等で後追いした名作ばかりです
そんなこの年を代表するのは、やっぱり黒澤の「用心棒」とベルイマンの「処女の泉」でしょうか
1962
これまた黒澤「椿三十郎」チャンバラ映画のエンターテイメントの極致です。そしてベルイマン「野いちご」シュールでありながらドラマチック。アントニオーニの「夜」「情事」もこの年です
1963
デビッド・リーン「アラビアのロレンス」今、CG無しではこんな映画作れないでしょ。「鳥」は今の技術でヒチコックに作って欲しいな。子供心にすごく怖かった記憶あります
1964
勅使河原監督の「砂の女」を誰か勇気のある人がリメイクしてくれないかな。内田監督の「飢餓海峡」も設定をいじれば、現在でもすごく面白いミステリーになると思う
1965
黒澤作品で一番好きな「赤ひげ」はヒューマニズムの塊。アメリカの良識が作らせた「サウンド・オブ・ミュージック」。そしてフェリーニ自伝的傑作「8 1/2」とんでもない作品ばかり
1966
フランス映画の洒脱「男と女」日本の恋愛映画では描けない世界
1967
アメリカ南部の熱気が伝わってくる「夜の大捜査線」
1968
小学校入学です
アメリカンニューシネマ全盛期の傑作「俺たちに明日はない」「卒業」この頃のアメリカ映画は信じられるな
1969
人形浄瑠璃を映画化した異色作「心中天網島」日本文化の奥深さを教えてくれました。対極にあるような日本文化の「男はつらいよ」。山田監督には生きているうちに国民栄誉賞を受けていただきたい人です
1970
好きだった女優ジェーン・フォンダ「ひとりぼっちの青春」はニューシネマ系列のアメリカの裏側を描いた作品でした




1971
1ドルが360円じゃなくなって、世界中でオイルショック狂乱の嵐が吹き荒れました。本当にトイレットペーパーが品切れして、新聞紙でお尻拭きましたもん。沖縄が日本に返還されたり札幌五輪で日の丸三本上がったりもしたけど、あさま山荘事件とかロッキード事件とか子供心にもインパクトのある出来事が多かった
高校生になると町にひとつだけあった映画館に行ったり、ロードショーを観るため高崎や前橋まで出かけるようになりました。本格的に映画好きになったのはこの頃です
イタリアのメロドラマは「わが青春のフロレンス」で知ったと思います。オッタヴィア・ピッコロの不思議な魅力が印象深い作品です
1972
山田監督の「故郷」には高度成長期の日本が映され、「旅の重さ」には欧米化しつつある日本の若者が映されました。ニューシネマ系のペキンパー作品「わらの犬」「ジュニアボナー」物悲しい「ラストショー」も印象的ですが、「フェリーニのローマ」を観た時の衝撃が忘れられません
1973
「ジョニーは戦場へ行った」のモノクロ(現在)とカラー(過去)撮影に映像の凄さを感じました。「ポセイドンアドベンチャー」も行き過ぎた拝金主義に対するアンチテーゼを唱えているように感じます
1974
中学入学です
日本では「サンダカン八番娼館望郷」や「砂の器」が公開され、外国映画は「フェリーニのアマルコルド」「叫びとささやき」「アメリカの夜」「スティング」といった巨匠名匠の傑作が公開されてます
1975
ザ・日本映画と呼びたくなるような「祭りの準備」。フランス映画も「ルシアンの青春」という内省的な作品が公開された年です
1976
角川映画が「犬神家の一族」で日本映画を変えようとしてました。若きデ・ニーロの狂気が印象的な「タクシードライバー」でスコセッシを知りました
1977
高校入学です
「幸福の黄色いハンカチ」の高倉健は本当に良かった。「はなれ瞽女おりん」の岩下志麻といい、代表作が名作になるのってうらやましいですね。「ロッキー」のスタローンも正しくそうでした
1978
日本映画は「サード」に代表されるようなATG制作の低予算映画に傑作が集中しました。大ベテランである野村芳太郎監督の「事件」みたいな格調高い傑作も生まれています。ハリウッドでは「未知との遭遇」「スターウォーズ」といった大作が世界を席巻しました
1979
長谷川監督の「太陽を盗んだ男」は日本映画とは思えない迫力と世界観でした。リメイクして欲しいな。「旅芸人の記録」「木靴の樹」といった岩波ホール上映のミニシアター系作品も注目され始めました
1980
大学入学
新宿や渋谷に沢山あった名画座に通い詰めた頃、「クレイマークレイマー」のような正統派アメリカ映画もニュージャーマンシネマとよばれた「マリアブラウンの結婚」なんかにも夢中になりました




1981
自由であることの軽さ、そして責任を負うことの重さをそれぞれ知った十年間。親元を離れ、あてどの無い大学生時代は映画と酒飲みの生活に浸かり、時間を無駄に使う人生の贅沢を味わった時期でもあります。名画座のハシゴをして年間百本以上の映画を観続けました(無論映画館に入り浸り)。失恋もしましたが、伴侶である奥様と知り合ったのもこの頃です。社会に出て労働のシビアさを知り、また同じくらいの達成感も知ることができました。転職、結婚、長女の誕生と目まぐるしく人生の歯車が回っていた頃でした。
この年は日本映画に傾倒するきっかけになった「遠雷」「駅/STATION」。ヨーロッパ映画の奥深さを堪能した「ブリキの太鼓」「秋のソナタ」それぞれに懐かしいな
1982
「蒲田行進曲」の楽しさ「転校生」の郷愁「ET」の純真さ。みんなリアルタイムで体験したワクワク感でいっぱいです
1983
森田監督「家族ゲーム」の斬新さと市川監督「細雪」の美しさ。日本映画は多様な面白さを取り戻そうとしていました。夏目雅子の代表作「魚影の群れ」も忘れ難いな。外国映画では「ガープの世界」に感銘を受けました
1984
社会人一年目。前橋に半年住んでその後深谷に転居しました
伊丹十三「お葬式」はユニークな題材をエンターテイメントに仕上げました。薬師丸ひろ子を女優にした「Wの悲劇」も脚本が秀逸でした。「ストリートオブファイアー」のロックはかっこ良かった
1985
夏目漱石原作「それから」を端正に映画化した森田監督はその後失速してしまいました。「パリ、テキサス」の乾いた感覚も覚えてます
1986
最初の転職。三島市から国立市へ友だちを頼って移り住み、転職と共に横浜に移住します
「エイリアン2」の面白さが強烈に印象に残っています
1987
日本映画でも社会派娯楽作がヒットすることを教えてくれた「マルサの女」は痛快でした。ベトナム戦争の現場を描いて衝撃的だった「プラトーン」も忘れ難い作品です
1988
元日に婚姻届けを出しました。それなりの期間付き合っていましたが、一緒に住む安心感は大きかった
黒木監督「TOMORROW明日」が描く戦争と原爆の遣る瀬無さに日本人であることの使命感を感じます。東欧の物語「存在の耐えられない軽さ」が生きることの難しさを教えてくれました
1989
今村監督の「黒い雨」も原爆とその後の悲劇を語り、静かに涙を流すしかない市井の人々を映します。「魔女の宅急便」は宮崎作品で一番好きな映画。「ダイハード」「バベットの晩餐会」「ニューシネマパラダイス」と外国映画も豊作でした
1990
長女が誕生しました。ドキドキの育児が始まりました
日本映画「櫻の園」外国映画「ドライビング・ミス・デイジー」両作とも佳品ながら心に染みる映画です





1991
家族が作られてゆき、自分一人で始末が付く生活ではなくなりました。仕事も忙しくなり責任も重くなりはじめ、映画も音楽もアウトドアもお座成りになった十年間です。東西冷戦が終結し、湾岸戦争のような地域紛争が頻発しました。神戸の街を大地震が襲い、多くの市民が犠牲になった頃、東京ではオウムのテロが起きサリンの猛毒で多くの人が命を落としました。冬の長野でオリンピックが開催され、哀しみの日本に勇気を与えてくれたのもこの頃です
大林監督の「ふたり」は程よい少女趣味の佳作でした。「羊たちの沈黙」から犯罪映画がちょっぴり変わったような気がします。欧州の匂いがする「髪結いの亭主」も好きでした
1992
長男が誕生し、二度目の転職もした年です
周防監督会心の「シコふんじゃった」には驚きました。大学相撲部があんなに面白いコメディ映画になるなんて、才能とはそういうことなんですね
1993
チャン・イーモウ監督の「秋菊の物語」で中国映画の奥行きを感じ、「友だちのうちはどこ?」で中近東にも優れた作家がいることを知りました
1994
「ピアノレッスン」というニュージーランド産の映画は強烈な印象です。女流監督と知って、あの世界は男には描けないなと納得したものです
1995
岩井俊二「Love Letter」の切なさは雪の白さのせいでしょうか?「フォレストガンプ」の優しさは無垢な心の結晶のようです
1996
またまた周防監督が「Shall Weダンス?」で楽しませてくれました。フィンチャーは「セブン」でこれ以上ない醜悪なラストシーンを見せつけました
1997
今村監督「うなぎ」は衒いの無い愛の映画だと思います。三谷監督が念願の映画製作をした「ラジオの時間」は洒落た古の外国映画のようです
1998
アルタミラピクチャーの色がくっきり出た「がんばっていきまっしょい」は文句のない青春映画。スピルバーグのエンターテイメントとヒューマニズムが出色の「プライベートライアン」も好きです
1999
イラン映画の「運動靴と赤い金魚」は可愛かったな。シャマラン「シックスセンス」最初観た時の驚きは新鮮でした
2000
沖縄を舞台にした「ナビィの恋」、子供たちの殺し合いを深作監督がエンタメにした「バトルロワイヤル」。イーモウ監督作品「あの子を探して」「初恋のきた道」何という瑞々しさでしょう





2001
役職者となり仕事もハードな日々が続きました。一念発起してマンションを購入し、広い居間に家族みんなで戸惑っていた頃が懐かしいです。思いがけず次男にも恵まれ、家族は5人になりました。ますます映画館から足が遠のいたその頃、学生時代の友人たちがまだ沢山映画を観ていることを知り、負けじと映画館通いを復活したのもこの頃です。ニューヨークのワールドトレードセンタービルに旅客機が突っ込むテロを引き金に、海外ではきな臭い紛争が常態化してゆきました。国内ではサッカーW杯が開催され、比較的平穏な10年が続きます
若者が魅力的だった「GO」「ウォーターボーイズ」、香港の濡れた夜が美しい「花様年華」パリの石畳が素敵な「アメリ」も忘れ難い作品です
2002
マンション購入しました
山田洋次監督の優しさ溢れる傑作「たそがれ清兵衛」小泉監督が静を描いた「阿弥陀堂だより」、少年から大人への一歩を描写した「ごめん」日本映画は小さいながら良質な作品が沢山あります
2003
ハリウッドが日本から消えゆく侍をエンターテイメントに仕立て上げた「ラストサムライ」、これを機に渡辺謙は一躍世界的なスター俳優となってゆきます
2004
是枝監督と出会った「誰も知らない」才気溢れる中島監督の「下妻物語」矢口監督「スウィングガールズ」は拍手喝采の青春映画でした。ポン・ジュノ監督作品「殺人の追憶」もこの年です
2005
次男が生まれ、賑やかな家族になりました
独特な笑いを提供してくれる山下監督の「リンダリンダリンダ」。ルーカス主導のスターウォーズサーガ完結も懐かしいですね
2006
「嫌われ松子の一生」で中谷美紀は本物の女優になった気がします。「かもめ食堂」のような佳品がいつまでも作られ続けられるといいですね。イーストウッドが「硫黄島からの手紙」で旧日本軍を描きました。「ブロークバックマウンテン」の愛に涙したのは自分でも驚きです
2007
「天然コケッコー」「しゃべれどもしゃべれども」「夕凪の街桜の国」みんな小品なのに心に残り続ける名作です。原爆症で死にゆく麻生久美子の儚げな美しさと、月がとっても青いからの切なさがたまりません
2008
アカデミー外国語映画賞を受賞した「おくりびと」は日本人らしい細やかな作品でした。同じく「歩いても歩いても」の家族もやはり日本人らしい繊細さを見せてくれます
2009
西川美和監督の傑作「ディアドクター」には吃驚しました。地域医療の貧困さと共に人間の本質を抉ろうとする視点に感服です。「グラントリノ」も老いてなお力強いイーストウッドを印象付けた作品です
2010
「十三人の刺客」はチャンバラ映画のエンターテイメントを存分に味わえる娯楽作です。韓国映画「息もできない」のような魂を揺さぶられる映画は日本で作るのは難しいのでしょうか





2011
単身赴任で名古屋生活を4年送ったことは、あまり変化のない生活に刺激的な出来事でした。今度こそはと思っていた地元横浜勤務の夢も叶わず、会社員としても役職定年となり第一線から振い落されました。長女が結婚して家を出てゆき、家族は4人になります。それぞれの部屋に籠り単なる共同生活の場所となりました
自分の時間が増えた分、趣味の料理、魚釣り、読書、散歩、そして映画鑑賞の時間を満喫できる余裕も生まれました。日本人の人生観を変えるような東日本大震災は、人の命だけじゃなく街も自然も文化さえ根こそぎ津波に呑んでいきました。平成が終わりを告げ、令和の御代の始まりです
園子温監督の「冷たい熱帯魚」は日本映画の範疇を越えた衝撃的な映画でした。「八日目の蝉」で描かれた親子の情愛に涙は止まりません
2012
「桐島、部活やめるってよ」は構成と演出が優れていて、新しい映画の可能性をみたようです。内田監督の「鍵泥棒のメソッド」は脚本がずば抜けて秀逸で、やっぱり映画の50%は脚本の面白さ如何だなと感じた次第です
2013
単身赴任で名古屋独り生活の始まりです
「ゼログラビティ」は宇宙空間における概念を変えた画期的な作品です
2014
クリストファー・ノーラン監督作品「インターステラー」はSF映画の面白さは言うまでもなく、父と娘の物語でもありました
2015
「ソロモンの偽証」は原作の重厚さを上手く映画化することに成功しました。二部作の映画が増えてきたのもこの頃です。「マッドマックス怒りのデスロード」までぶち抜けるとアッパレです
2016
アニメ映画の傑作「この世界の片隅に」が描く戦争の虚しさが心に染みました。思わぬ拾い物だった「シン・ゴジラ」李相日監督の「怒り」で宮崎あおいが演じた女の凄さにまいりました
2017
アメリカ映画の凄いところは「ドリーム」で描かれているようなアメリカの恥部を、ちゃんと映画化するところです
2018
パルムドール受賞の「万引き家族」はともかく、同じくカンヌ出品の濱口監督「寝ても覚めても」に心奪われました。クイーンの伝記映画「ボヘミアンラプソディー」は只々懐かしかった
2019
「さよならくちびる」は日本映画には珍しい音楽ロードムービーの佳作です。メキシコ映画「ROMA」の品質の高さは衝撃的でした
2020
非英語圏の映画でもアカデミー賞を受賞できる事を証明してくれた「パラサイト」、親子の本質の形を見せてくれた「朝が来る」には涙が溢れて止まりませんでした


そして、2021年 これからの10年20年、まだまだ沢山の魅力的な映画と出会えることを信じて、まったり正直に生きていきます

2020キネマ旬報ベストテン

2021-02-08 11:37:00 | 映画ベストテン

先日、キネマ旬報の2020年ベストテンが発表されましたので、いつもの様に自分の審美眼と照らし合わせてみました。

キネ旬の事だから、てっきり一等賞は大林監督の遺作「海辺の映画館」だと思っていたけど、意表をついて黒沢監督作品「スパイの妻」だった。
此のところ、公開するタイミングが必ずしも映画館第一とは限らず、Netflix筆頭に配信サービス会社制作のものは言うに及ばず、BSなどで先にお披露目されてから劇場版となる作品に優良なものがあるようだ。今回のベストテンも「スパイの妻」「アンダードッグ」「本気のしるし」と三本もランクインしている。何となくTVの総集編ぽくて敬遠していたが、今後は考えを改める必要がありそうだ。

結局選者選出の10作品の内、観たのは「朝が来る」「罪の声」「アルプススタンドのはしの方」の三作。「空に住む」の選出は読めなかったけど、それ以外は色々なところで名前が出ていたから、多少順番に納得のいかないところがあるにせよ順当な結果だと思う。外国映画は「パラサイト」「1917」「TENET]を観ているが、そもそもそんなに観ていないからまっとうなコメントも出来ない。
読者選出に関しては、このところ組織票が流れ込むようになってしまい信頼度が低くなった。今回の選出も「天外者」は低評価であったのに、三浦春馬ファンの票がかなり集まったのだろう。「コンフィデンスマンJPプリンス編」も同じく。「ミッドナイトスワン」の評判はそこそこ良かったけど、ジャニーズ票が動いたのは明らかだ。10位の「糸」もキネ旬読者らしからぬ選出だけど、菜奈ちゃんが良かったからまあいいか。4位〜9位は順当だと思った。

家の奥様のベストテンと被っていたのは「TNET」「燃ゆる女の肖像」「はちどり」「異端の鳥」「ストーリー・オブ・マイライフ」の5作品。流石です。

個人賞
水川あさみは嬉しい受賞。「喜劇 愛妻物語」は観てみたいと思った。蒔田彩珠の衝撃と宇野祥平の安定感に納得の受賞。森山未來も役者としてまた一段登った感がある。



今年も占います 日本アカデミー賞 ちゃんちゃん

2021-01-27 19:28:00 | 映画ベストテン

今年もまたどうでもいいんでしょうが、日本アカデミー賞のノミネートが発表されましたので、噛みつきながら受賞予想などして遊んでみましょうか。

いくら何でも「男はつらいよ お帰り寅さん」は無いでしょ。山田洋次監督に失礼だということが分からないのかなぁ~?面白かったですよ。全作何回も観てますし、その度に笑って泣いて大好きなシリーズですけど、今更オマケみたいな作品をノミネートされてもね。
「Fukushima50」の頑張りも制作意義も理解してます。けれど、如何せん作品そのものの出来が悪かった。お客が喜んだならまだしも、薄っぺらい特攻隊ドラマになってしまいウンザリでした。

さて、個人的に応援している作品や人と、受賞しそうな予想を書き並べましょう。
作品賞
(応援)「罪の声」 (予想)「罪の声」
アニメ作品賞
(応援)「鬼滅の刃」 (予想)「ヴァイオレット・エヴァガーデン」
監督賞
(応援)河瀨直美「朝が来る」 (予想)土井裕泰「罪の声」
脚本賞
(応援)野木亜紀子「罪の声」 (予想)野木亜紀子「罪の声」
主演男優賞
(応援)小栗旬「罪の声」 (予想)草彅剛「ミッドナイトスワン」
主演女優賞
(応援)小松菜奈「糸」 (予想)長澤まさみ「MOTHER」
助演男優賞
(応援)宇野祥平「罪の声」 (予想)宇野祥平「罪の声」
助演女優賞
(応援)黒木華「浅田家」 (予想)黒木華「浅田家」
外国作品賞
(応援)パラサイト (予想)パラサイト

予想としては「罪の声」総取りかもしれません。
腑に落ちないのは、主演女優ノミネートに広瀬すずと倍賞千恵子が入っているのに、評判の頗る良い水川あさみと蒼井優の名前がない事。助演女優にも蒔田彩珠を入れないと可哀想ですよね。

まあいつもの事ですが、日本アカデミー賞ほど不可解な選出はありませんので、それも含めて楽しみましょう。

2020 コロナに負けない映画BEST10

2020-12-31 04:43:00 | 映画ベストテン

今年は三月下旬から五月いっぱい映画館で作品を観ることが叶わなかったにもかかわらず、結構充実した一年だったように思う。公開延期の作品も沢山あったようだけど、いつの日かスクリーンで出会えるなら我慢できるし。心配なのは今年制作予定の作品に様々な負荷がかかっただろうということ。作品の量もそうだけど質の部分でも危惧している。来年以降どのように影響があらわれるか知れないけど、一日も早くこの状況が収束するよう願うばかりだ。
一年の落とし前として、好きだった作品の星取表を作ってみた。基本的に作品を貶すことはしないけど、星四つ並べられた作品はべた褒めできなくとも何処かに面白いところがあって、観て良かったなと思いながら映画館を後にできた作品。2020年ベストテンとしても残しておこうと思う。


①パラサイト★★★★★
まさかアカデミー作品賞を受賞するとは思わなかったけど、受賞にふさわしい傑作であることに異存ない。貧富の差を視覚的に描き、ポン・ジュノ監督独特な笑いで包んだシニカル目線がとても分かりやすくて、寓話的な東洋人のお話なのに西洋の人にまで理解させることができたのが成功の理由だろう。次回作以降も家族にこだわった作品を観せて欲しい。

②朝が来る★★★★★
河瀨直美監督の到達点じゃないかな。カンヌのコンペが中止になってしまい、分かりやすい評価は下されなかったけど、できればこの作品で一等賞をとって欲しかった。監督の持ち味であるドキュメンタリー風の作風がリアルさを加え、2020年一番好きな邦画となった。ラストクレジットでの少年の呟きに涙は止まらない。蒔田彩珠を発見できたことも忘れないでおこう。

③Last Letter★★★★★
岩井俊二監督のナイーブな優しさが詰まった佳作だ。初期の傑作「Love Letter」を観ていなくとも充分感動的だけど、知っていれば女性の立ち直りの潔さと男性の過去を引き吊る女々しさの対比が鮮明で一層興味深く感じるだろう。随所に岩井俊二らしさは散りばめられているけど、広瀬すずと森七菜が夏のワンピース姿で散歩するシーンは見惚れてしまう美しさだった。

④罪の声★★★★★
あの分厚い小説をこんなにまでシンプルに映画化できたことに驚いている。当代、脚色させたら野木亜紀子の右に出る脚本家はいないんじゃないかな。単なる犯罪ドラマで終わりにしなかったことが、この映画を風格ある骨太映画にした要因だ。わたくし世代には忘れ難い劇場型犯罪であるグリコ森永事件を、今この世に蘇らせた原作と小説では描けなかった映像の機微に賛辞を贈りたい。

⑤のぼる小寺さん★★★★☆
一生懸命に壁を登る小寺さんに触発された四人の少年少女が、とりあえず自分の好きなものに一歩踏み出してゆく姿が神々しい。もう随分前に過ぎ去ってしまった景色だけど、還暦間近になっても彼らが進もうとしている熱さはしっかり伝わってきた。コロナ禍の影響で部活も大会も発表の場をも奪われた2020年の少年少女達にエール代わりに観てもらいたい青春賛歌だ。

⑥アルプススタンドのはしの方★★★★☆
高校演劇が原作と知って、小品ながら興味があり鑑賞した。昔から演劇の映画化作品には傑作が多いけど、こんな題材で感動できる作品に仕上げることもできるのだと感心したものだ。やはりコロナの影響で甲子園も中止になっちゃったけど、頑張っている人には自然と応援する人が付いてきて、ちゃんと絆が生まれることが描かれていて清々しい作品となった。

⑦初恋★★★★☆
三池崇史監督作品なのであまり過度な期待はしていなかった。意外にもバイオレンス一辺倒のドタバタ映画じゃなかったから大いに楽しめた。タイトルも最後の最後にそういう題名だったのね。と、ちょっと微笑ましく思ったものだ。何よりも演者たちが思い切り誇張した振り幅で楽しそうに演じているのが気持ち良い。ベッキーの狂気じみた頑張りは特筆したい。

⑧浅田家!★★★★☆
今回も優しい家族の映画だった。一つの家族だけのお話じゃなく、いくつかのエピソードが描かれていたため感動のポイントが散漫になってしまったのは残念なところ。後半部分、東日本震災現場でのボランティアはそれだけで一本の映画になると思うので、詰め込み過ぎてしまったようにも感じた。それにしても世の中には浅田家の様に変わった家族もいるものだ。

⑨星屑の町★★★★☆
能年玲奈(のん)が演技しているのを久しぶりに観た気がする。やっぱり彼女は映像の中で輝く女性だと再認識した次第。古い舞台作品が原作らしい。映画の背景も東北の片田舎だったし、玲奈ちゃんの方言もあまちゃんそのままだったから新作映画を観ているのに何となく懐かしい感じがした。拾い物の作品として思い入れのある映画となった。

⑩MOTHER★★★★☆
そんなにぶち抜けるほどの衝撃がある作り方じゃないけど、長澤まさみの毒親と健気に母親を慕う奥平大兼演じる息子のヒリヒリする繋がりに圧倒された。今の世の中、平気で我が子を虐待死させる鬼畜親が後を絶たないが、どうせ子育てするつもりもないのなら放置してくれた方がよっぽど子供のためじゃないかと思ってしまう。「朝が来る」とは対極にある世界だ。

以降次点
鬼滅の刃 無限列車編★★★★☆
私をくいとめて★★★★☆
TENET★★★★☆
1917★★★★☆
ヲタクに恋は難しい★★★★
糸★★★★
弱虫ペダル★★★★
思い、思われ、ふり、ふられ★★★★
ステップ★★★★
きみの瞳が問いかけている★★★★
コンフィデンシャルマンJPプリンセス編★★★★
ミッドウェイ★★★★
星の子★★★★

個人的なお気に入り
監督 河瀨直美「朝が来る」
脚本 野木亜紀子「罪の声」
女優 長澤まさみ「MOTHER」
   蒔田彩珠「朝が来る」
男優 星野源「罪の声」
   菅田将暉「浅田家!」

2020年 特筆すべきは、「鬼滅の刃 無限列車編」の驚異的な大ヒット。
そして、女優竹内結子の衝撃的な訃報。


奥様のベストテンも紹介しましょうね


相変わらず凄いです
わたくし観たのは「私をくいとめて」と「TENET」の二本だけです
どの作品も高評価なものばかり並んでいます。体力あれば観ていたような気もする作品もあります
然し乍ら、知り合って40年長い間夫婦ではありますけど、此れほどまでに好みとは違うものなんですよ。と言う見本のようなベストテンでした