一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『劇場版ラジエーションハウス』 ……本田翼と広瀬アリスに逢いたくて……

2022年04月30日 | 映画


原作・横幕智裕、漫画・モリタイシの同名コミックを、


窪田正孝主演で実写化したTVドラマ「ラジエーションハウス」は、
2019年4月期にフジテレビ系列にて月曜21時枠で放送された。


私の好きな本田翼や広瀬アリスが出演しているので観ていたのだが、


医師を主人公としたドラマが多い中、
放射線技師という裏方の活躍に焦点を当てている点が目新しかったし、
とても面白く観ることができた。
2021年10月期に放送されたシーズン2も楽しめたし、


“劇場版”が2022年4月29日に公開されることを知ったときには小躍りして喜んだ。
そして、首を長くして待っていた私は、
公開初日に、映画館に駆けつけたのだった。



72時間。
それは、人の生死を分ける時間。
甘春総合病院の放射線技師・五十嵐唯織(窪田正孝)は落ち込んでいた。


大好きな甘春杏(本田翼)が、放射線科医としての腕を磨くため、ワシントン医大へ留学することが決まったからだ。


「72時間を切ってしまいました」
お別れまでのカウントダウンを胸に刻む唯織のことを、
ラジエーションハウスのメンバーは元気付けようとするが、


唯織への秘めた想いを抱える広瀬裕乃(広瀬アリス)だけは、
自らの進むべき道について悩んでいた。


そんな中、杏の父親・正一(佐戸井けん太)が危篤との連絡が入る。


無医島だった離島に渡り小さな診療所で島民を診てきた正一だが、
杏が父のもとに着いてほどなく、
「病気ではなく、人を見る医者になりなさい」
との言葉を残し、息を引き取る。


生前、父が気に掛けていた患者のことが気になり、島に一日残ることにする杏。


一方、甘春総合病院には、
交通事故で負傷した若夫婦(山崎育三郎、若月佑美)が運ばれてくる。


妻は臨月を迎えていた妊婦であったが、母体の方が危うく、
なんとかお腹の子供だけでも助けようと病院スタッフの努力が続く。


交通事故を起こしたのは、酒酔い運転をしていた若い男で、
センターラインを越え、若夫婦の車に正面衝突したのだ。
だが、反省の色もなく、こちらは軽傷。
怒った若夫婦の夫は、この男にナイフを突き付けて、病院に立てこもる。


6歳の少年のカテーテル手術も重なり、
病院内は混乱を極める。


そこへ離島には大型台風が来襲し、土砂崩れなどの大きな被害がでて、


未知の感染症が襲いかかる。


遠く離れた地で杏が孤軍奮闘していることを知った唯織は、
大切な仲間を守るため、苦しむ島民を救うため、ある決心をする。
8人の技師たちが選んだ未来とは……




映画が始まって早々に、
甘春杏に「父親が危篤」との連絡が入り、杏は父のいる離島へ行くが、
台風の来襲や、未知の感染症などに翻弄される。


一方、甘春総合病院では、次々と患者が運ばれてきて、難問や事件が頻発する。


杏がいる離島と、唯織がいる甘春総合病院とを、
二元中継のような感じで交互に映し出し、
それぞれの現場を緊迫感のある映像で繋いでいく。


それに加え、笑いや感動シーンも随所に織り込まれており、
観客をまったく飽きさせない。


言葉を極力排し、映像だけでグイグイと引っ張っていく。
このあたりの構成が見事で、感心させられた。


唯織(窪田正孝)と杏(本田翼)、裕乃(広瀬アリス)の恋模様が、
「ラジエーションハウス」ファンとしては気になるところだが、
それにも、ある決着が示され、
驚きのラストシーンへと誘(いざな)われる。
私としては、(そして、おそらく唯織も)
〈杏ちゃん、ビックリです!〉
という心境であった。(笑)



五十嵐唯織を演じた窪田正孝。


放射線科医として医師免許を持っているにも関わらず、
幼少期の甘春杏との約束を守るため、放射線技師として働く主人公の役。
2年のアメリカ留学を終え、再び古巣である「甘春総合病院」で勤務しているが、
仕事はできるのだが、恋にはまったくうだつがあがらない。
だが、劇場版では、杏を想う気持ちが行動となって表れ、杏の気持ちを動かす。


朴訥とした人柄の中にも強い信念も感じられる五十嵐唯織という男を、
窪田正孝は好演していたと思う。



甘春杏を演じた本田翼。


五十嵐唯織の幼馴染みで、放射線科医。
自分の父親が院長を務めていた「甘春総合病院」で働いているが、
唯織の天才的な診断力に負い目を感じており、
自己研鑽のためのアメリカへの留学を望んでいる。


留学直前に父親が死去し、父のいる離島へ渡るが、
そこへ台風や未知の感染症が襲い掛かり、孤軍奮闘となる。
そんな甘春杏を本田翼はTVドラマのときよりもよりアクティブに演じ、素晴らしかった。


殊にラストシーンの本田翼は素敵だったし、絵になっていた。
そこらへんにいる数多(あまた)の女優ではああはならなかったと思う。
「さすが!」だと思った。



広瀬裕乃を演じた広瀬アリス。


「甘春総合病院」の放射線技師。
新人としてチームに加わり、
当初は戸惑いばかりでミスばかりだったが、持ち前の努力で徐々に成長し、いまや一人前に。


五十嵐のことを密かに想っているが、


杏に引け目を感じている部分もあり、なかなか打ち明けられないでいる。


劇場版では、自分の気持ちにひとつの区切りをつけ、
次のステップに進もうする姿を見せる。


そんな広瀬裕乃を、広瀬アリスは、可愛く、時に美しく演じ、秀逸であった。


以前は広瀬すずの姉として認知されていたが、
今では立場が逆転している感もあり、すごい活躍ぶりだ。
TVドラマでも主演作が多くなり、嬉しい限りだ。



黒羽たまきを演じた山口紗弥加。


仕事には完璧さを求める中堅放射線技師。
誰かと一緒に暮らすことは考えられない性格で、
そのため結婚にも興味がなかったが、
ある男性患者との恋、そして失恋を経験し、結婚を考え始めている。


冷たい性格の女性のようでいて、仲間を誰よりも想っており、頼りになる存在。
本田翼、広瀬アリスの陰にやや隠れがちだが、
山口紗弥加も魅力ある女優として、劇場版でも存在感を放っており、
とても楽しませてくれた。



「甘春総合病院」の前院長で、現循環器内科長・大森渚を演じた和久井映見。


「夏子の酒」(1994年)
「ピュア」(1996年)
「バージンロード」(1997年)
などでの清純で可愛い役柄が未だに思い出されるが、
本作では、
唯織やラジハメンバーの良き理解者で、杏にとっても良き相談相手となっている大森渚を、
50代になった和久井映見はゆったりと堂々と演じ、


作品に安心感と安定感を与えていて素晴らしかった。



高橋夏希を演じた若月佑美。


お腹の子の検診で甘春総合病院に夫・高橋圭介(山崎育三郎)と共に向かう途中、
交通事故に巻き込まれる臨月の妊婦の役であったが、
出演シーンは少ないものの、鮮烈な印象を残した。
以前、映画『今日から俺は!!劇場版』(2020年)のレビューで、

早川京子の相棒・川崎明美を演じた若月佑美。


ドラマ撮影時は、女性アイドルグループ乃木坂46のメンバーであったが、
ドラマ放送直前の2018年10月1日、
自身の公式ブログで2018年11月30日をもって乃木坂46から卒業することを発表した。



いつも早川京子(橋本環奈)と一緒にいて、
京子が伊藤(伊藤健太郎)の前でぶりっ子をする度に、
「なにやってるんすかっ?」
と真面目にツッこむところが(お約束となっており)面白い。



清野菜名が「清楚さ」担当、
橋本環奈は「可愛さ」担当であるならば、
若月佑美はさしずめ「美しさ」担当で、
こんなに美しいスケバンがいたならば、
喧嘩をする前に、その“美”にイチコロにされてしまうような気がする。(コラコラ)
不良なのであるが、真面目に不良をやっている感じで、(笑)
こんなにも美しい女の子がスケバンをやっているというギャップがたまらないし、
そこがとても好い。



自分の低い声がコンプレックスだったそうだが、
それが逆に活かされるスケバン・明美という役に巡り会えたことで、
自信にもつながったとか。
今後の活躍にも期待したい。



と書いたが、
その後もTVドラマや映画や舞台で活躍しているのも嬉しい。
今年6月には、「薔薇王の葬列」(2022年6月10日~19日、日本青年館ホール)で、
主演するようだ。(リチャード 役、有馬爽人とのダブルキャスト)



ちなみに、映画の舞台となった離島「美澄島」は、
岡山県・笠岡諸島の「真鍋島」でロケされている。




赤い灯台のある場所は、


杏(すなわち本田翼)が座った場所として、
名所、いや聖地になるに違いない。(笑)



サブタイトルを字数の関係で、
……本田翼と広瀬アリスに逢いたくて……
としたが、本当は、
……本田翼、広瀬アリス、山口紗弥加、和久井映見、若月佑美の美しさと、ラストシーンに衝撃を受ける感動作……
としたかった。(長い!)
原作のコミックはまだ連載が続いているようなので、
TVドラマや映画の続編にも期待したい。

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