一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『サバカン SABAKAN』…尾野真千子、貫地谷しほり、茅島みずきがイイぞ…

2022年08月26日 | 映画


本作『サバカン SABAKAN』の存在は、
茅島みずきの出演作として知った。
茅島みずきについては、
映画『青くて痛くて脆い』(2020年8月28日公開)のレビューで、
次のように記している。

楓のバイト先の後輩で、「モアイ」に参加する女子大生・川原理沙を演じた茅島みずき。


2017年に芸能プロダクション「アミューズ」が開催したオーディション、
「アミューズ 全県全員面接オーディション2017 〜九州・沖縄編〜」で、
3224名の中からグランプリを獲得し、芸能界入りした逸材。
2019年3月30日に開催された「第28回 東京ガールズコレクション 2019 SPRING / SUMMER」でモデルデビュー。
2019年4月、ブレイク女優の登竜門としても注目される「ポカリスエット」のCMに起用される。



2004年7月6日生まれなので、現在16歳(2020年9月現在)
撮影時はまだ15歳くらいだったと思うのだが、
その年齢で女子大生を演じるということにも驚かされるが、
その大人びた風貌に魅了された。
本作が映画デビュー作ということで、
演技の方はまだこれからといった感じであったが、
存在感と目力が抜群で、森七菜に負けないほどの将来性が感じられた。
長崎県出身というのも(同じ長崎県出身の私としては)嬉しいし、
同じ長崎県出身の女優、原田知世、仲里依紗、川口春奈などと同様、
これからも応援していきたい。



また、映画『女子高生に殺されたい』のレビューでは、

沢木愛佳を演じた茅島みずき。


順調に女優としての階段を上っている感じがして嬉しい。
本作『女子高生に殺されたい』では、
柔道に打ち込んでいる美少女という役柄で、
背も高く(身長170cm)、カッコイイ。
『サバカン SABAKAN』(2022年8月19日公開予定)という、
長崎県を舞台にした映画も控えているようなので、楽しみ。


と書いた。
なので、映画『サバカン SABAKAN』は楽しみにしていた作品であるし、
茅島みずきの他、
尾野真千子、貫地谷しほりなど、私の好きな女優も出演しており、
ワクワクしながら映画館に駆けつけたのだった。



売れない小説家で、
専らゴーストライターとして糊口をしのいでいる久田孝明(草彅剛)は、


サバの缶詰を見ると、


思い出す少年がいる。


……1986年の夏。長崎。
斉藤由貴とキン肉マン消しゴムが大好きな小学5年生の久田孝明(番家一路)は、




愛情深い両親(尾野真千子、竹原ピストル)と弟と共に、
時には喧嘩をしながらも楽しく暮らしていた。


ある日彼は、
家が貧しく同級生から避けられている竹本健次(原田琥之佑)と、


ひょんなことから“イルカを見るため”にブーメラン島を目指すことに。




溺れそうになったり、
不良に絡まれたりと、
様々なトラブルに遭遇しながらも友情を育んでいく久田と竹本だったが、
やがて別れを予感させる悲しい事件が起こってしまう……




地方に暮らす二人の少年が冒険に出る。
友情や、年上の女性への淡い恋心、そして別れ……
このような少年の“ひと夏”を描いた物語は、
巷にあふれているし、
ありがちなストーリーなのであるが、
舞台が長崎となれば、話は違う。(笑)


長崎弁が飛び交い、
懐かしい風景(長与町・時津町・西海市などで撮影されている)が映し出される本作は、
作品の良し悪し以前に、
長崎県出身の私にとっては特別な作品であった。
尾野真千子や貫地谷しほりが長崎弁を喋っているのが嬉しかったし、
茅島みずきや岩松了など、長崎県出身の俳優が出演しているのも嬉しかった。



監督は、
本作『サバカン SABAKAN』が長編映画デビュー作となる(長崎県出身の)金沢知樹。


【金沢知樹】
1974年1月1日生まれ、長崎県出身。お笑い芸人としてデビューし、後に様々なバラエティ番組の構成作家として参加する。2003年、お笑い芸人数名と共に「劇団K助」を旗揚げ、主宰を務める。2008年、舞台「部屋と僕と弟のはなし」で文芸社ビジュアルアート「星の戯曲賞」準グランプリを受賞。主な映像脚本としては、湊かなえの原作ドラマ『境遇』(2012年)、国際エミ―賞最終候補にノミネートされた『半分ノ世界』(2014年/斎藤工監督)、『ガチ★星』(2018年/江口カン監督)、TBSドラマ「半沢直樹」(2020年)、Netflixドラマ「サンクチュアリ」(配信予定/江口カン監督)などがある。さらに多数の舞台脚本・演出を手掛ける。


そもそも、何故、故郷である長崎で映画を撮ろうと思ったのか?

もともと僕は、芸人になろうと思って東京に出てきたんですけどダメで、その後はテレビの構成作家やライターの仕事をしながらなんとか食いつないでいました。上手く行かなければ行かないほど、地元・長崎のことを思い出すんですよね。でも帰れなくて、友達の結婚式に呼ばれても「仕事が忙しくってさ」とか「◯◯さんとの仕事があって」とか、全く会ったこともない人の名前を出して嘘をついて(笑)。でもやっぱり長崎に帰りたくて、“もし長崎に帰ったらどういう人生を送るんだろう”という想定の文章をmixiに書いたんです。創作半分、事実半分で、長崎のことを書いたのが、『サバカン SABAKAN』の原型です。
(中略)
mixiで書いたら「泣ける」と軽く話題になったんですね。僕は別に泣かせるつもりで書いたんじゃないですけど。それから、以前からご縁のあったエグゼクティブプロデューサーの飯島三智さんと仕事をしていく中で、「草彅剛さんが小説を読む形のラジオドラマを連ドラみたいな感じでやってみたい」というお話を聞いて、長崎での昔話を話したら「それを小説の形にしてみてほしい」ということで。mixiでは日記風に書いていたので小説風に直して見ていただいたら気に入ってもらえて。それで草彅さん主演のラジオドラマを制作していたのですが、いろいろな事情で結局世に出なくなってしまったんです。
(中略)
それから数年後、飯島さんが急にやって来て「あれを映画にしよう」ということで、できあがったのがこの『サバカン SABAKAN』です。(「Real Sound」インタビューより)


本作を見て驚いたのは、
「チン○」「キン○マ」などの言葉が、
母親(尾野真千子)や父親(竹原ピストル)の口からバンバン飛び出すこと。(爆)
その上、
父親(竹原ピストル)が子どもの頭を叩き、
母親(尾野真千子)が夫(竹原ピストル)の頭を叩くというような、
今の日本では顰蹙をかうような場面が多く、
その昭和的な(1986年=昭和61年)シーンがなんとも可笑しく、
笑いながら見ていた。
〈さすが芸人出身の映画監督!〉
と感心したことであった。


孝明の母・久田良子を演じた尾野真千子。
孝明曰く「怒らせると世界一怖い」母親なのだが、
心から家族を愛しているのが身体全体から伝わってくるような、
パワフルでエネルギッシュな母親を実に上手く演じていた。
長崎弁にも勢いがあり、
〈こんなおばさんいたな~〉
と思わせるものがあり、
「チン○」「キン○マ」を連発する尾野真千子を見ているだけで楽しく、面白かった。



健次をはじめとした三男二女の母・竹本雅代を演じた貫地谷しほり。
スーパーマーケットで働きながら5人の子供を一人で育てている。
そんな明るくパワフルな母親を、貫地谷しほりは、
優しさあふれる、包み込むような演技で魅せる。
森田芳光監督作品『僕達急行 A列車で行こう』(2012年)では、
佐賀県のJR筑肥線「駒鳴駅」でのシーンが記憶に残っているが、(コチラを参照)
本作『サバカン SABAKAN』での「長崎県の貫地谷しほり」も、
しっかり記憶しておこうと思った。



海で溺れそうになった主人公の少年・久田孝明を助け、
その少年に憧れを抱かせるキレイなお姉さん・由香を演じた茅島みずき。


長崎を舞台にした映画で、茅島みずきを見ることができるとは思っていなかったので、
極私的にとても嬉しかった。
クールビューティな役柄だったので、抑えた演技が光っていたと思う。

由香はあまり感情を表に出す女のコではないので、あまり声に感情を乗せずに淡々と喋ることを意識しました。

初めての地元長崎での作品だったので、決まった時はすごく嬉しかったです。自然の中での撮影は本当に気持ちよくて、何よりとっても綺麗でした。普段家族と喋る時に使う長崎弁をまさか撮影で話す日が来るとは思っていなくて、なんだかとても新鮮でした。

この映画は観終わったあと、すごく心が温かくなる作品です。クスッと笑えたり、切なかったり、沢山の方が昔を思い出し懐かしい気持ちになると思います。そして私の大好きな長崎の街並みがとても綺麗に映し出されていて、ストーリーにも街並みにもとっても感動した作品です!是非ご覧ください!
(「Seventeen」インタビューより)

こう語っていたが、
長崎愛にあふれるコメントが嬉しい。
出演シーンはそれほど多くないが、
エンドロールの最後の方に彼女がもう一度登場するので、お楽しみに。
なので、場内が明るくなるまでは、絶対に席を立たないようにね。



孝明(草彅剛)の元妻・弥生を演じた村川絵梨。
村川絵梨という女優は以前より(NHK朝ドラ「風のハルカ」の頃から)知ってはいたが、
大人の魅力ある女優として強く意識したのは、
「そろばん侍 風の市兵衛」(第1話~第3話)(2018年5月19日~6月2日、NHK総合)
で、安曇という役を演じたときであった。




以降、村川絵梨という名前を目にするとドキッとするようになった。(コラコラ)
本作『サバカン SABAKAN』では、出演シーンは少ないものの、
存在感のある演技で、孝明(草彅剛)に希望を抱かせる大事な役割を果たしていたと思う。



この他、女優では、
時折久田家にやって来る久田兄弟の従姉妹・亜子を演じた福地桃子が良かったし、


男優では、
久田孝明の子供時代を演じた番家一路、
竹本健次の子供時代を演じた原田琥之佑が、
どちらも映画デビュー作であったにもかかわらず、
ぎこちなさがむしろ素朴さという利点に働き、
なんとも初々しい少年となって表現され、秀逸であった。


孝明の父・久田広重を演じた竹原ピストルや、


孝明の担任教師・宮田学を演じた篠原篤や、


長崎でミカン農家を営む男性・内田を演じた岩松了や、


物語の語り手の久田孝明を演じた草彅剛も、


それぞれ個性的な独特の演技で、
見る者を笑わせ、泣かせ、
存分に楽しませてくれた。



私の少年時代は、
1950年代後半から1960年代なので、
この映画の時期よりもさらに昔なのであるが、
本作を見たことによって、
(長崎県で生まれ育った者としての)懐かしさが感じられたし、
少年時代に戻ったような楽しい気分を味わうことができた。


この映画に関わったすべての人に感謝したい。

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