「評決」
この作品も公開当初には観る機会がなかったが、しばらくして名画座での上映で観たのを憶えている。今回DVDで二度目。
ボストンで起き、闇に葬られようとしていた「医療過誤」事件の裁判を、アル中の弁護士フランク・ギャルビン(ポール・ニューマン)が法廷で戦う社会派(?)ドラマ。
短く言っちゃうと、そんな感じです~・・。
この作品は、同じ“法廷劇”として名高い「十二人の怒れる男」でメガホンをとったシドニー・ルメット監督の、“再びの”法廷モノです。
ネタバレあります・・。
主人公の弁護士フランク・ギャルビン。
かつては有能で将来を嘱望された彼であったが、今はアル中でまともな仕事も出来ない・・。新聞の「死亡者覧」を見て、金になりそうな水知らずの人の葬儀に顔を出しては、名刺を配る毎日・・。
暇があれば酒場でピン・ボールをしながらウィスキーをあおっている・・。
そんな彼を見かねて、友人のミッキー(ジャック・ウォーデン)が、「簡単に示談が成立しそうな案件」をもってきた。
原告は数年前に医療過誤(と思われる)によって植物状態にされた女性とその妹夫婦。
病院側と医師二名を提訴するものであった。
病院側は事が大っぴらになるのを恐れて、21万ドルの示談金を提示してきた。
この示談が成立すれば、三分の一の7万ドルが手に入るギャルビンは、飛び上がって喜んだ・・。
その夜立ち寄ったバーでフランクは、ローラ(シャーロット・ランプリング)と出逢う。
「ツキがまわってきた!」
フランクは示談に使う資料にするために、原告の植物状態の女性の病室へポラロイドカメラを持ってきて写真の撮影を始めた。
写真を撮って、何枚も写真を撮っていくうちに・・・フランクはふと、ファインダー越しの女性の「感覚と意識を奪われた」姿に・・何か自分の中で、何かが変わるのを感じ始めた・・。
とまあ、こんな感じなのですが、
この「フランクの心の動く過程」が、余りにも短いのが残念。
商業ベースで2時間前後にまとめなければならなかったのかもしれませんが・・。
しかし、ちょっと短いかな・・・と。
ポラロイドのシーンで何かを感じて、次のシークエンスではもう示談を蹴っちゃってますから・・・。間に幾つかのエピソードがあればなぁ・・と思うのですが・・。
そして本作のフランク・ギャルビンは、21万ドルの示談金を蹴ったことで、被告の医師及び病院、その弁護団、判事、さらには原告(妹夫婦)からも白眼視されてしまいます。そして貴重な証人までも奪われ、心を許していたローラまでもが・・・。
まさに「孤立無援」になってしまいます。
ローラを演じたシャーロット・ランプリングは、いわゆる「ポイントの低い役」でしたが、影がある感じで素敵でした。適役だったと思います。
フランクの友人ミッキーを演じたジャック・ウォーデンは悠々たる貫禄。
彼は前述の「十二人の~」に、陪審員7番の役(ヤンキースの試合ばかり気にしているケッコウいい加減で主体性のない陪審員でしたな)で出演していたのですな。
そして主人公フランク・ギャルビンを演じたポール・ニューマン。
私的には、「スティング」の時の詐欺師ヘンリー・ゴンドーフ役がイチバン好きですが、
本作でも感情を抑えめで「内に秘める闘志」って奴ですか、いい感じを出していたので、最初観たとき、オスカーあげたかったなぁ・・と思ったのを憶えています(確かこれより後に出演した「ハスラー2」でもらったような記憶があります。)
この「評決」が公開された年は、「ガンジー」も公開されていて、そっちにかなり行っちゃったような・・。
ストーリー終盤で、フランクたちがやっと見つけた、只ひとりの証人「事故当日、受付をやっていた看護婦」の心から搾り出すような証言が、陪審員たちの心を動かします。
しかしその証言さえ判事は、「今の証人の事は、記憶から抹殺してください」
全ての証拠を抹殺されたフランクの、「最終弁論」が始まります・・・。
「十二人の~」が、陪審員室の中だけ(厳密には冒頭とラストはちがいますが)を描いているのに対し、本作は「陪審員室の中が全く描かれない(ストーリーの必然性からですが)」という違いがあります。
この「描かれない陪審員室で出された結論」が胸を打ちます。
これ程の内容なのだから、2時間半もしくはもっと長尺くらいのほうが、キャラクターの心の変化を表現しやすいと思うのだが、124分くらいで終わりになるのはやはり「商業ベース」いたしかたなし、というところか・・。
戦いの決着がついて・・・・とても静かなエンディング・・。
好感がもてます(^^♪
ひきばっち的満足度★★★★
つらい腰痛・肩こり・頭痛など、スタッフが全力でサポートします。
癒しの森整体院
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