天竜川の川下りは私もしたことがある。ただし今回事故があった浜松市あたりの下流の川下りではなく、飯田あたりの上流だった。とても緩やかで、ある意味つまらない川くだりだった。
川下りはやっぱり急流を下るスリルが楽しみだ。スリルがあるということは危険を伴うということだ。
今回の事故も、わざとスリルを演出するために渦の中に入り、そこからタイミングをはかって脱出するという場面で、脱出に失敗して船が渦に持って行かれ、岩盤に激突してひっくりかえったらしい。
本来なら、ライフジャケットばかりかヘルメットもかぶった方がいいかもしれない。
川遊びは怖い。流れが急だったり、急に深くなったり、上流の放流や降雨で水かさが増したりする。海も、入江の静かな場所はいいが、少し沖に出ると海流があったり、サメがいたりする。
私は泳ぎは得意だが、だからこそ、自分の力で何とかなる場所とそうでない場所で、どれほど違うかがわかる。
今回、ライフジャケットを着用していなかったことと、まだ未熟な船頭さんに操船を任せたこと、2重の油断が死者を出す事故を呼んだ。
当初、ライフジャケットのことばかり報道されて、またサッカーの松田選手の時と同じ根本原因を追究しない報道だと憤慨していた私だが、無理に渦に入るコースだったことを聞いて、納得するとともに「川下り」そのものを考えさせられることになった。
天竜川よりももっと危険な川下りはいくらでもある。そして案外事故は少ない。
事故が起こる可能性はゼロではないが、もっと危険な川下りの場合は、おそらく船頭の熟練度も、危険に対する危機感ももっと高いんじゃないかと思う。技術に誇りも持ち、鍛錬も経験も積んだプロの船頭さんがやっているはずだ。
少し前にあった焼肉店のユッケで死者が出た事件を思い出す。ビジネスとして焼肉屋をはじめた若い経営者が、ビジネスにうかれた揚句の果てに起こった事件だ。彼らはあっさり焼肉屋をやめた。しかし、本当に肉に愛情を持って焼肉を食べさせている店でこんな事件は起こっていない。
昨今は、熟練を必要とせず、安易にアルバイトの人にやらせるビジネスで儲けるというのが賢いビジネスと評価されがちだ。天竜川の事故とユッケは、こうした風潮への警告のような気がする。
それを利用する側も、リスクを考えて利用する必要がありそうだ。
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