AFPのダリール・スライマーン記者は、自身のツイッターのアカウント(https://twitter.com/Delilsouleman)に、シリア北東部ハサカ県の対トルコ国境に面するカフターニーヤ市近郊でロシア軍兵士と米軍兵士が握手を交わし、親睦を交わしている様子を撮影した写真数点を公開した。

米軍(有志連合)は、イスラーム国に対する「テロとの戦い」を行うとして、2014年9月からシリア領内に対する爆撃を開始、2015年10月以降は特殊部隊などを派遣、北・東シリア自治局(クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する自治政体)の支配地各所に違法に基地を設置し、部隊を駐留させている。

 

一方、ロシア軍は、2019年10月のトルコとの停戦合意に従い、国境地帯に部隊を展開させている。

シリア北東部には、ロシア軍、米軍のほかにもトルコ軍が違法に駐留、ハサカ県ラアス・アイン市一帯、ラッカ県タッル・アブヤド市一帯を占領下に置いている。

 

こうした外国の駐留に対して、シリア国内の反発は強い。米軍の部隊に対しては、10月8日、ハサカ市北西のカブール・ガラージナ村近郊に設置されているシリア軍検問所が、同地を通過しようとした米軍の車輌7輌からなる車列の通行を阻止、これを退却させた。

また、米中央軍(CENTCOM)は、ルマイラーン町近郊の発着場に駐留する有志連合の部隊が8日午後10時12分頃、何者かによる107ミリロケット弾の攻撃を受けたと発表した。

トルコ軍の占領に対しては、この米軍を後ろ盾とするシリア民主軍が連日、国境地帯で散発的ながらも抵抗を続けている。

 

ロシア軍についても、国境地帯のパトロールや拠点設置に対して住民が反発したとの情報が流れることもある。

反体制系サイトの一つドゥラル・シャーミーヤによると、公開された写真に対して、シリアの活動家らは、「ワシントンとモスクワはシリアで合意済みだ、シリア国民が唯一の敗者だ」、「ロシアと米国の意見の相違がどれほど深いものでも、シリア国民をないがしろにした両国の相互理解と国益追求には影響はない」などと怒りの声を上げている。

 

ウクライナでの戦争を一滴の血も流さず「観戦」する米国からふんだんに武器を供与され、ロシアとの代理戦争を戦わされているウクライナの人々が、シリアでのロシア・米両軍兵士の笑顔に何を思うか、知りたいところだ。

青山弘之東京外国語大学 教授