26. 「IT'S NOT THE SPOTLIGHT」
☆19歳の誕生日の夕暮れ時、僕は扇町公園のベンチに一人で居た。
日が暮れる前の短い時間・・・少し肌寒い風が吹いて、鳥も人たちも家路を急ぐ。
振り返れば、初めてこの場所へ来た日からちょうど二年が過ぎていた。
僕はこれから先、何をして、何処を目指して歩いて行くのだろう?わからない・・・。
今は未だ何もわからない。もし、どこかに自分の居るべき本当の場所があるのなら
僕はいますぐ走りださなきゃ。ちゃんと歩けもしないのに、僕はいままでずーっと
どこかへ飛ぼうとしていた。行き先もわからないまま。
そして、僕は飛べもしなかったのに・・・。
☆やがてすっかり陽が落ちて、街燈に灯がともり、
ひとけのない公園をほんの少し照らす。
置き去りにしてきたものを取り戻しに帰りたい。
でも残念な事に自分の通って来た
道さえも、もう解らなくなってしまっていた。
時はあまりにも早く、僕たちはいつもこんなふうに置いてけぼりだ。
でも、もう本当に、そろそろ行かなくちゃ。
☆ゆるやかな長い坂をのぼりきったところに森田の家はあった。
その二階の灯りの燈った彼女の部屋を、僕は暫く眺めていた。
懐かしい歌が心によみがえり、僕の胸を締めつけた。
それからどれくらいの時間が過ぎたのだろう・・・
誰かにふと、呼ばれた気がして振り返った時、昔吹いたあの頃と同じ風が
誰もいない通りで、僕の傍らを静かに通り過ぎていった。
☆やがて美しい月がのぼり、夜の帳が静かに街を包む。
月影のもと、ゆるやかな坂道を下る時、
僕の影は僕にそっと寄り添っていた。
ここから何処へ・・・?明日は何処へ行くのだろう?
注:ROD STEWARTの「ATLANTIC CROSSING」という1975年に
彼がリリースした渾身の名盤があるが、僕はこのアルバムを
高校生の時に姉上に買ってもらって一体いままで何回聴いたたろうか・・・?
レコードは溝が擦り切れるほど聴いて、何回も買い換えたし、
CDもリマスターされたものなどリ・イシューされるたびに買っていたので、
同じアルバムを何種類か何枚も持っている。
若かりし頃には、真夜中にレコードのB面を繰り返し何度も何度も聴いた。
今でもよく聴く。
CAN YOU HEAR ME? CAN YOU HEAR ME?
SOULD I TALK LIKE FARAWAY, I'M DYING FOREVER CRYING.
TO BE NEAR YOU, WHO CAN SAY.
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