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更田氏は全能の神か。独善的規制を押しつける正当性はどこにある。

2022年09月21日 10時11分44秒 | 全般
更田氏は全能の神か。独善的規制を押しつける正当性はどこにある。と題して
2020-01-08に発信した章である。
再発信する。
以下は、八方塞がりのエネ政策、と題して6日の産経新聞に掲載された櫻井よしこさんの論文からである。
何度も言及するが彼女は日本の「国宝」である。
今を生きる最澄であると言っても過言ではない。
文中強調は私。
日本のエネルギー政策が八方塞がりになりつつある。 
昨年12月、スペイン・‐マドリードでの国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)は、気温上昇の上限を産業革命前から今世紀末までで1.5度以下、二酸化炭素(CO2)排出ゼロの2050年達成を事実上の目標にするまで先鋭化した。
欧州諸国の運動と中国の戦略的な後押しで脱炭素が世界の主流となりつつある。 
その中で、日本の国民生活と産業基盤を支える廉価で安定した電力供給を実現するには再生可能エネルギー技術の向上と原子力発電の活用しかない。
だが、日本の原子力発電を担う原子力規制委員会(規制委)と電力業界の姿からは未来展望は見えてこない。
「特定重大事故等対処施設」(特重施設)から見える彼らの姿は使命感を放棄し、闘うことを忘れた身勝手な組織のそれである。 
わが国ではいま、9基の原子力発電が規制委の「世界一厳しい安全基準」に合格して再稼働しているが、またもや運転停止に追い込まれる瀬尸際にある。
原因は特重施設の工事の遅れである。
特重施設は究極の航空機テロを想定している。
原発の中央制御室が航空機激突に伴う火災で使用不能になっても、別に建設した地下要塞の制御室に切り替えて原子炉を停止させ、炉心に注水し、放射性物質の漏洩を防ぐ施設だ。 
規制委は原子炉建屋本体よりも厳しい耐震設計に基づく堅牢な建物と、長期間注水できる巨大な水源ダムを地下に抱える、どの国にも見られない巨大地下要塞の建設を求めている。 
特重施設建設の猶予期間は5年で、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の場合、1号機は今年3月が期限だが工事が間に合わない。
九電は平成27年12月に川内原発2基の特重施設設置を申請したが、それ以降20回以上規制委の指摘を受けて補正を重ねた。
結果、工事は当初予定より大規模になり、工事費は何千億円にもふくれ上がり、当然工期も延びた。
期限に閧に合わないのは工事途中で20回以上条件を厳しくした規制委の責任でもある。 
私は川内原発を取材したが、過剰ともいえる世界最高の安全対策を施している原発だった。
それだけに再度の運転停止には強い疑問を抱く。 
航空機衝突による事故の確率は年間1原子炉あたり千万分の1で隕石の落下確率と同等だ。
発生の可能性は低く、従来の原子力安全基準では特重施設は不必要とされていた。
規制委委員長、更田豊志氏も昨年4月24日の記者会見で以下のように語っている。  
「わが国の原子力施設は非常に高い水準にあるとは思います。ですから特重施設がないことをもって、一概にテロ対策に穴があいていると、そのようには考えていません」 
ではなぜ止めるのか。
更田氏の判断は理解不能だ。
航空機テロの可能性は千万分の1という低さだが、万万が一、原子力発電所が航空機テロに遭うと仮定してみよう。
巨大地震が来れば空港も閉鎖される。
国籍不明機や戦闘機の飛来には自衛隊機が緊急発進する。
だが、自衛隊にも撃ち落とせないのが幾百人もの乗客を乗せた民間旅客機であろう。
だからこそ旅客機が原発上空に近づけないようにすることが重要だ。 
東日本大震災当時、陸上自衛隊の幕僚長として福島第1原発の注水に尽力した火箱芳文(ひばこ・よしふみ)氏は、特重施設には抑止効果は期待できないと断言し、旅客機の攻撃を防ぐには航空障害物の設置の方がはるかに有効だと強調した。  
「旅客機をピンポイントで原子炉建屋や格納容器に衝突させるのは、容易ではありません。進入角度は水平に対して15度以内になければならず、高度の技量を要します。航空機は前方の障害物に非常に脆弱(ぜいじゃく)ですから、進入経路にアンテナ用のポールやワイヤを設置するのが最善です」 
これなら1ヵ月で設置可能だ。
だが、前述の会見で更田氏はこう語っている。  
「特重施設が現在の設計で持っている能力をほかの対処方法によって代替するのはかなり難しい」 
更田氏は安全保障の専門家の所見を聞いたのか。
聞かずして断定するのは不勉強の極みだ。
同会見で氏は最大9基に上る稼働済み原発を停止させた場合の社会的影響についてもただされた。
氏は自身を「規制の虜(とりこ)」と位置づけて以下のように答えた。  
「何物にもとらわれず、原子力の安全に専念する。(中略)何物にもとらわれず、科学的、技術的な知見をもって施設の安全を考える。社会的事情を考慮してというのは、そもそも原子力規制委の設置の趣旨にかなったものではない」 
「規制の虜」だから十分安全だとされている原発を止めるというのだ。
だが、原子力基本法第2条第2項は、安全確保に関して「確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康および財産の保護、環境の保全並びにわが国の安全保障に資することを目的として、行う」としている。
国民の財産保護という社会的影響も踏まえて国際基準に従えということだ。 
更田氏は全能の神か。
独善的規制を押しつける正当性はどこにある。
規制委が安全審査を長びかせる閧、電力会社は巨大施設を休止させ維持費を払い、代替電源としての火力発電を稼働させ、天然ガスや石炭輸入に資金を投じてきている。
特重施設に関してまたもや原発が停止になれば、さらなる負担が生じる。
それらすべてのコストは電力料金に加算され、消費者が払う。
全ての人々が等しく使う電力の料金値上げは弱者により重い負担となる。 
更田氏ら規制委は強い独立性之権限を持つ分、事業者や専門家の意見に謙虚に耳を傾ける責任がある。 
他方、電力各社、とりわけ九電は、毅然(きぜん)として公の使命を果たすときだ。
全電力会社はもっと国民の経済負担に心を致し、国の経済と産業基盤を支える誇りと気概を取り戻せ。
原発再停止に向かう非科学的な規制委の前で萎縮するばかりでどうするのか。
科学に基づき異議を唱えて闘わずして公への責任は果たせない。


 


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