以下は前章の続きである。
民主党政権の許しがたい犯罪
福島第一原子力発電所の事故に際し、当時の菅首相は東京工大出身というプライドもあってか、震災翌日、直ちに現場に乗り込んでいった。
首相に来られたら現場は混乱する。
しかも、ただ怒鳴り散らしただけだった。
あの事故に対する初動態勢の失敗は、首相の責任が大きいと言わざるを得ない。
さらに菅政権が犯した大きな過ちは、慌てて避難を命じたことである。
たしかに津波は死者・行方不明者が2万人を超えるほどの大きな被害をもたらした。
しかし福島の原発事故では1人の死者もなく、1人の病人も出していない。
放射能が原因で病気になりそうな人もまだ報告されていない。
ただ、強制的に避難させられたためにストレスが高じて、老人ホームなどで亡くなった人がいた。
死者の多くはストレスが原因であって、決して放射能のためではない。
菅首相は市民運動家の出であるから、もともと原発には反対だっただろう。
しかし、組閣時には事実上、日本の3分の1の電気を賄っていた原発の問題には一切触れなかった。
ところが、いったん事故が起こったら大喜びの体で原発反対を表明し、まったく問題のない原発をすべて停止させた。
これは実に愚かなことであった。
いまでははっきりしていることだが、大地震によって炉が壊れた原発は一つもなかった。
福島より震源地に近い宮城県の女川原発でもまったく問題はなかった。
福島第一原発は、津波で水をかぶったために電源が止まって水素爆発を起こしたのである。
これにしても、菅直人が“視察”などに来なければ十分な対応ができ、防げた事故だと語る関係者もいる。
にもかかわらず、菅政権はうろたえて全原発を停止させた。
そのため、日本の電力の90パーセントは火力発電に頼ることになった。
その燃料はすべて外国から来る。
その結果、日本の燃料費は一日当たり実に100億円も増大し、それまで何10年間も黒字が続いていた日本の貿易収支はたちまち赤字に転落した(最近は急に燃料代が下がったために、小幅な黒字に戻った)。
菅政権は甚大なる経済的な打撃を日本に与えたのである。
一日100億円と言ってもピンとこないだろうが、一例を挙げれば、第二次安倍内閣が尖閣問題に対処するために防衛費を1000億円増やそうとしたが、財政的に困難であるということで400億円くらいに削られた。
国家の防衛上、不可欠な尖閣問題のために使える予算が、原発を止めたために外国から余分に買わざるを得なくなった燃料の僅か4日分なのである。
日本にこれほど巨額な無駄を強いるようにしたのは、民主党の許しがたい犯罪である。
これは何度指摘しても足りないくらいだが、原爆が投下された広島と長崎では、ほぼ3ヵ月後から住民が戻り始め、戦後、飛躍的な発展を遂げている。
ところが、福島にはまだ住民が戻れないどころか、荒廃する一方にさえ見える。
どうして広島や長崎の例に倣おうとしないのであろうか。
長崎医大の教授、永井隆博士が著した『この子を残して』(アルバ文庫、サンパウロ刊)に非常に示唆的な記述がある。
原爆が落とされたときに、「長崎には今後75年間は人が住めない、草木も生えない」という噂が流れた。
自らも被爆した永井博士は放射線の専門家だからそんなことはあるまいと思ったが、何しろ人類初の体験であるから、爆心地に留まって研究を続けられた。
そうしたら、3週間後にアリの行列を発見した。
3ヵ月経ったらミミズがわいてきた。
こんな小さな虫が何ともないのなら、その何千倍も体の大きな人間の体に放射線の影響があるわけがない、とほかの学者とも話し合い、3ヵ月後、避難している人たちに長崎に戻ってくるよう呼びかけた。
長崎はそうして、見違えるほどの復興を遂げたのである。
広島でも同じように、3ヵ月後には住民が戻っている。
原爆の放射線そのものによる死者は非常に少なく、そのほとんどは火傷が原因である。
これはいまだに誤解されていることだが、ケロイドというのは火傷の痕(あと)であって、放射線によるものではない。
広島では、放射線影響研究所という国際的な機関が、何10年にもわたって被曝者を追跡調査している。
その調査によると、被曝者のほうがガンの発生率が低く、奇形児の出生率も高くないという極めて重要な結果が出ている。
これは長崎でも同じである。
さらに放射線量については、福島の原発事故は広島に投下された原爆の1/175,000という説がある。
だから、人が住んでもどうということはない。
広島でも長崎でも除染などしていないのに、なぜ福島で行なう必要があるのか。
広島には川がたくさんあり、放射線を浴びた水が広島湾に大量に流れ込んだ。
そこはカキの名産地である。
ところが、その年からみんながカキを食べている。
そして、何の問題も起きていない。
瀬戸内海でベクレルを測るような愚かな真似をする人間もいなかった。
まして、福島の先は太平洋の黒潮である。
汚染水など、その都度流せば何のことはない。
隅田川に耳かき一杯のゴミを流すぐらいの話である。
しかし、それを溜めてしまったから問題になった。
これも初動態勢がまったくなっていなかったためである。
まさに民主党政権がつくり出した国難と言える。
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