文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

丸腰の日本が悪辣な国とだって堂々交渉できることを安倍元首相は示した。

2022年07月21日 18時06分29秒 | 全般
以下は本日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである事を証明している。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
見出し以外の文中強調は私。
安倍外交
下校途中の横田めぐみさんが失踪したのは1977年11月だった父滋さんは未明まで娘を探し回った。
校舎のトイレを全部開けて探し、翌日も翌々日も下校路も小道も海辺も歩き回ったが何の痕跡も見つがらなかった。
最後はしゃがんで哭いた。 
そんな日々が10年続いた1988年、大韓機爆破事件の金賢姫が「拉致された日本女性」を語った。
彼女はバーレーンの日本大使館員が捕まえた。
ただ韓国が身柄を欲しがった。
日本は戦前、未開朝鮮に教育や医療を施しインフラも整えてやった。
が、彼らは逆に酷いことをされたと絡んできてカネや援助をたかった。
金賢姫の身柄要求もその一つだった。 
韓国はしかしそれ以上の拉致情報を出し渋った。
金賢姫の身柄引き渡しは痛恨のミスだった。
それでも横田夫妻には小さい希望の灯に見えた。
追いかけるように英国留学中に失踪した有本恵子さんの親元に「北朝鮮に囚われ中」という私信が届けられた。
北朝鮮の日本人拉致を証明する最初の物証だった。 
しかし外務省は「日朝交渉に障るから」と調査どころか逆に両親に口止めして追い返した。 
両親は土井たか子事務所を訪ねた。
結果から言えば大失敗で、土井は外務省と同じに口外を禁じ、すぐ朝総連に報告した。
北の秘密を暴露した恵子さんと夫と子供の三人はその2ヵ月後、不審な死を遂げる。

役所も政治家もだれも相手にしようとしない。
そんな中、恵子さんの両親の言葉に耳を貸し、解決を約束した人がいた。

それが「当時、父晋太郎外相の秘書だった安倍さんだった」と早紀江さんが元首相を悼んで産経新聞に寄せた一文にあった。
それからまた10年後の1997年、めぐみさんの消息が俄かに出てきた。
北の工作員の話として「13歳の少女の拉致」の証言があり、脱北者からもめぐみさんの目撃談が語られた。
しかし田英夫、埼玉大の吉田康彦らが「韓国の捏造だ」と否定に走る。
北朝鮮が拉致などするわけがないという日本の進歩的文化人の反応だった。

拉致は外交分野でも度外視されたまま。
それを象徴したのが阿南惟茂アジア局長と霞クラブこと外務省記者会の懇談会だ。
朝日の記者が「拉致疑惑は証拠もないのに盛り上がっている」と口上する。
モリカケのときにそういうセリフを聞きたかったけれど、それは措く。

この誘導に乗って阿南も「証拠がない。疑惑では動けない」と頷く。
そう誘導した朝日は社説でも「拉致疑惑が日朝正常化交渉の障害になっていないか」と書く。 
阿南の次の槙田邦彦アジア局長もそれを真似て自民外交部会の席上、「たった10人(の拉致疑惑)で日朝正常化交渉がとまっていいのか」と言った。
朝日と同じ主張だ。どこが悪いと。
北は朝日が日本の世論を丸め込んだと見たか。
2002年、小泉首相を招いて日本人拉致を認めた。
そう認めたら日本側が二コニコして1兆円よこすと外務省が保証していた。
しかし随行した安倍官房副長官が盗聴を承知で拉致被害者の帰国がなければ決裂しかないと言った。
かくて5人の帰国が実現するが「めぐみさんら8人は死亡」とされた。
でも「安倍さんは死亡した証拠はないと強いまなざしで北の虚構を明かしてくれた」と早紀江さん。
事実、北が「めぐみさんの骨」と言った骨片はDNA鑑定の結果「全く別人の、それも複数人のもの」と判明している。
いったん帰国した5人も外務省の田中均が「北との約束だから送り帰す」というのを安倍副長官は「外交交渉の人質にはさせない」と断固やめさせ、その家族も日本に取り戻した。
北は1円も手にできなかった。
丸腰の日本が悪辣な国とだって堂々交渉できることを安倍元首相は示した。
比べて誣告(ぶこく)と姑息に生きる朝日新聞の醜さが妙に目につかないか。




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