以下は前章の続きである。
思考停止状態のマスコミ
これには、歴史の前例もある。
ドイツでナチスのヒトラーが台頭したのは、第一次大戦の敗北で欧米各国に巨額の賠償を迫られたことが原因の一つだった。
同じように、中国も一か八かで戦争を仕掛けるかもしれない。
米欧の政策当局者はそんな戦争リスクを回避しつつ、いかに中国から賠償金をとるか、頭の体操を始めているはずだ。
こうした大きな政策の構想力では、日本はとても米欧にかなわない。
逆に、中国共産党内部で習氏の追い落としが始まる可能性もある。その徴候もある。
たとえば、先に触れた報道官の暴言について、米国駐在の崔天凱駐米中国大使は「憶測に基づく発言は誰の役にも立たないし、有害だ」と批判した。
外務省が一枚岩ではない証拠だろう。
習氏の側近中の側近として知られた王岐山国家副主席が習氏と距離を置き、権力闘争で優位に立ち始めた、という観測もある。
習氏は守勢に回らざるをえない弱みがある。
経済が立ち行かないのだ。
習政権は感染の完全な終息を待たずに、強引に工場など操業を再開させたが、中国経済を引っ張ってきた外資企業はサプライチェーンの見直しに動いている。
日本も脱中国依存を図る企業に補助金を出す方針だ。
新型コロナ以前から始まっていた「中国大脱出」が今後、一段と本格化するのは確実だ。
そうなれば、「共産党に任せておけば豊かになれる」という神話も崩壊する。
3月29日付の米紙「ニューユーヨーク・タイムズ」は、「コロナウイルスは眠れる巨人の目を覚ました~中国の若者たちだ」という記事を掲載し、「若者が経済的繁栄と引き換えに容認してきた共産党支配に疑問を抱き始めた」と指摘した。
まさに、政権の足元が崩れ始めたのである。
日本はどう対応すべきなのか。
政治家やマスコミの動きを見ていると、私は残念ながら、ほとんど「思考停止状態」ではないか、と思わざるをえない。
誰も彼もが「感染をどう抑え込むか」という問題ばかりにとらわれて、肝心の「厄災は誰の責任なのか」に考えが及んでいないように見える。
世界が「第二次大戦以来」と言われるほどの惨状になったのは、控えめに言っても、中国政府が疫病の発生と感染拡大を隠蔽し、放置したからだ。
その責任を見て見ぬ振りはできない。
真相を究明し、責任を追及し、いくら巨額になろうと、賠償を求めるのは当然の話ではないか。
4月に予定された習近平氏の国賓訪日は延期された。
だが、もはや習氏の国賓訪日などありえない。
世界が中国の責任追及に知恵を絞っているときに国賓で招待したりすれば、物笑いのタネにされるだけだ。
そもそも習氏自身が生き残れるかどうかも怪しい。
国連も無傷ではいられない。
世界の健康と生命を守るべき世界保健機関(WHO)は中国に肩入れして、デタラメな対応を繰り返した。
各国が中国との入出国制限に動くと、WHOは「旅行や貿易を阻害する」と反対した。
パンデミック宣言の発信も遅かった。
トランプ大統領は4月14日、米国がWHOへの資金拠出を停止する、と発表した。
『中国の代理人』とバレたWHOは生き残れないだろう。
新型コロナ後の世界は激変する。
日本も大急ぎで情報収集と戦略策定に動くべきだ。
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