文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

不満発散の仕組みとして常に外に敵を作った。かつての標的は日本、いまは台湾だ。 

2022年12月05日 18時49分08秒 | 全般

以下は今日の産経新聞に掲載されている櫻井よしこさんの定期連載コラムからである。
本論文も彼女が最澄が定義した国宝、至上の国宝である事を証明している。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
軍事力強化 目そらすな
一体誰がこのデモを想像しただろうか。
10月の中国共産党大会で鉄壁の支配体制を築いた習近平国家主席に11月末、白紙を掲げた若者たちが「習近平、辞めろ」と叫んだ。
習氏は厳格な都市封鎖を基本にした中国式新型コロナウイルス対策は米欧諸国より優れていると誇った。
一党独裁政体は西側の民主主義政体より優れていると胸を張り、米国を嘲(あざわら)ったが、「コロナ流行から3年、人々はいらだっている」と認め、封鎖緩和の可能性も指摘されている。
だが、「人民第一」の中国なのに大多数の高齢者のワクチン接種は未完了だ。
緩和策でコロナが広がれば医療体制は崩壊し200万人の死者が出るといわれる。
緩和策がなければ若者たちの不満はさらに高まる。
進むも地獄、引くも地獄の局面に習氏は立つ。 
若者の不満噴出はコロナ対策がきっかけだったが、事の本質はそれを越えたところにある。
共産党大会で共産主義回帰を明らかにした習氏は、「社会全体の文明度を向上させる」として、党と国家のために役立つ精神文明の推進を打ち出した。
最高指導者である自身の主張に従い、逆らうなというに等しい政策である。
時代に逆行するこのような統治への不満は容易に消えるものではあるまい。 
中国の歴代政権は大衆の反乱を最も恐れてきた。
中国共産党100年の歴史でも大衆の不満への恐れは顕著で、不満発散の仕組みとして常に外に敵を作った。
かつての標的は日本、いまは台湾だ。 
台湾では11月26日の統一地方選挙で蔡英文総統の民進党が大敗した。
民進党の支持率は33・5%、国民党の18・6%よりはるかに高い。
なのになぜ敗れたのか。
中国による民進党をおとしめるサイバー攻撃があったと考えてよいだろう。
目的達成に最終的には軍事的手段を用いるが、その前に巧みな情報戦を展開するのが中国の特徴である。
防衛省のシンクタンク、防衛研究所の「中国安全保障レポート2023」によれば、前回の総統選挙に重なる2019年9月から20年8月まで、中国から台湾に14億回以上のサイバー攻撃があった。
今回もそれに劣らぬサイバー攻撃があったと見るのは当然だ。
防衛研究所の報告書によると、中国は03年に正式採用した三戦(世論戰、心理戰、法律戦)戦略を発展させ、制空権や制海権の樹立には情報こそ物を言うとして「制情報権」という概念を打ち立てた。
それはいま「制脳権の確立」にまで進化しているという。
文字どおり、相手の思考を虚偽情報を駆使して操作するという作戦である。 
頭脳まで支配するすさまじい情報戦を仕掛けられた台湾は少なくとも現段階で敗北しているわけだ。
ならば、日本が取るべき道は諸国と協力して情報戦で反撃することだ。
台湾防護は日本防護である。 
安倍晋三元首相は「自衛隊には継戦能力がありません」と明言し、岸田文雄首相も「(継戦能力は)必ずしも十分ではない」と国会答弁した。
2人の首相が自国軍の継戦能力を否定しなければならない。
情報力だけでなく軍事力においても、わが国は尋常ならざる危機の中にある。 
中国の習近平国家主席はそんな日本に狙いを定めて中国式海洋支配の法を昨年2月、施行した。海警法だ。
「中国の管轄海域」で外国船が中国の法律、法規に違反した場合、強制退去させ、武器使用を含む全ての措置を講ずるという内容で、中国は尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で海上保安庁など日本の船に武力行使をすると宣言したのだ。 
中国は海警局を正式に軍に組み入れるために数年かけて準備をしたが、その間、日本は基本的対処策をとれずにきた。
2017年には中国国内の治安維持などにあたる人民武装警察部啄(武警)に新たな任務として「海上での権益維持」が付与された。
18年1月、国務院と中央軍事委員会の二重指導の下にあった武警ら、正式に中央軍事委員会の一元管理下に置かれた。
同年には武警の下部組織に海警局を編入した。 
こうして中国は全ての船や装備を軍の一部として使うための法整備を完了した。
それを逐一見ていたにもかかわらず、日本は「海保に軍隊としての組織・訓練・機能を禁止する」という海上保安庁法25条の改正ができないで今日に至っている。
海保を所管する国土交通相はこの10年間、公明党のポストであり続けた。
海保法改正ができないのは公明党の責任か。 
日本は、中国海警を海保同様の“非軍隊”組織と見なしているが、組織上、装備上、法で定められた行動基準上の全てにおいて海警局は準軍事組織である。
中国は海警局の船体を白塗りにして灰色の軍艦と異なる体裁にし、日本の抵抗を最小限にとどめて尖閣周辺海域での実効支配を強めている。 
こうした中、米国防総省は11月29日、中国の軍事力に関する年次報告書で米国に急迫する中国の軍事力の実態を公表し、米軍の圧倒的優位性が変化していると認めた。
わが国の安全保障状況の危うさが際立つ。
どこから見ても現状は平時ではなく有事である。
自衛隊の軍事力を早急に強化しなければ、日本国は危うい。
アルゼンチンが英領フォークランド諸島に侵攻したフォークランド紛争のとき、英国のサッチャー首相(当時)は保守党長老のマクミラン元首相の助言を得て、戦時内閣からハウ財務相を除外した。「われわれは軍の安全を財政上の理由のために危うくしようという気には決してならなかった」と、サッチャー氏は書き残した。 
岸田首相は財務省の影響を受けていると指摘されるのを嫌い、財務省主導の「有識者会議」の提言は「参考」にとどめてよいとの考えを示している。
財務省は防衛予算の増加を抑制するのに躍起で、有識者会議は防衛費増加の財源は増税や予算削減で賄うことを進言した。 
大事なことは細かなことにとらわれず、目的に集中することだ。
巨大な軍事力と経済力、侵略の意思を持つ中国に強い抑止力を働かせるには強い軍事力がいる。
その軍事力を強化するという最重要の課題から目をそらさないことだ。
財務省の国益なき議論は横に置き、日本を守る軍事力の構築を岸田首相は死に物狂いで主導してほしい。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。