文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

北方四島を素直にすぐ返せ。 そしたら日本が仲裁に入ってやるから。

2022年01月14日 18時54分19秒 | 全般

以下は昨日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も、彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである事を証明している。
NATO東漸
イエスは慈悲と寛容を説いたが、信徒の方はむしろ不寛容を好んだ。
キリスト教の本山が西のローマと東のコンスタンチノープルに分裂したのも些細な見解の相違をお互いが許さなかったからだ。
喧嘩の元はミサで出すパンだ。それがふっくらしたパンか、種なしパンか。それで揉めた。
だいたいミサのパンはあの最後の晩餐に因む。
イエスはパンをちぎって十二使徒に回しながら「パンは私の体だ」と言った。ワインを指して「私の血だ」と言った。
ミサで出すパンは聖体のことなのだ。ただ、その最後の晩餐はユダヤ教の過ぎ越しの祭りの日に当たった。
エジプトでの奴隷時代を忘れないよう不味い種なしパンとニガヨモギとワインが食卓に供される。
イエスが手にしたのは種なしパンだった。
「だからミサでは種なしパンが当然だろ」とローマ側は言った。
対して東は「イエスはパンとワインで自分の肉体と血を譬えた。それがたまたま過ぎ越しの祭りだっただけで、パンなら何でもいいのだ」と言い返した。
ついでに言うと十字の切り方も西のカソリックは額、胸、左肩、右肩の順だが、東は右肩、左肩の順だ。
そんなこんなで不寛容の挙句に双方が破門し合い、お互いを異端と罵った。
それは13世紀の第4回十字軍で形になった。彼らはイスラムではなく、コンスタンチノープルを攻め、破壊と略奪を恣にした。 
カソリックにとって東方正教会はイスラムより憎い存在だった。
15世紀、ワラキアのブラド公は侵攻するイスラム勢力を撃退した。
その昔、仏のトゥール・ポアチエで北上するイスラムをカール・マルテルが倒した。彼は英雄の称号を与えられた。
しかし東方正教会のブラド公は同じくイスラムを倒したのに、英雄どころか血に飢えたドラキュラ伝説によって貶められた。
東西の憎しみ合いは実は今も元気なのだ。
東方正教会系のセルビアは戦後カソリック教徒のチトーが支配するユーゴスラビアに組み込まれた。
チトーはセルビアの古都コソボにイスラム教徒のアルバニア人をどしどし入植させた。
京都を在日支那人や韓国人の街にするようなものだ。
チトーの独裁政権が終わり、主権を回復したセルビアはすぐコソボからイスラム系を追い出そうとした。
途端にNATOが介入してきた。NATOは基本カソリックか、プロテスタント国家で構成される。 
介入は「コソボのイスラム人保護」の名目で、首都ベオグラードまで空爆した。
さらにセルビア人指導者を国際法廷で裁き、とうとうコソボをセルビアから独立させてしまった。
NATOは次にルーマニアやブルガリアなど束方正教会系国家にも圧力をかけて取り込んでいった。
これを「NATO東漸」と言う。
現在、東方正教会系で残っているのは本山口シアの他ウクライナとベラルーシとグルジアくらい。
NATOが目下、取り込みを画しているのがロシアに隣接するウクライナだ。 
実はここはまるまる東方正教会国家とは言い難い。半分カソリックなのだ。
16世紀以降、ポーランド王国に支配され、国の西側はカソリックに改宗していて、東方正教会系の民は東側半分に住んでいる。
NATOはそこを衝いて取り込もうとする。
ウクライナが取り込まれれば次はグルジアが取られるのは目に見えている。
そう言えば中立のフィンランドもNATO加盟を言い出した。
ロシアは完全にNATOに包囲されてしまう。
プーチンは今、ウクライナ国境にロシア軍を集結させている。
せめて東半分だけでも守りたいという思いなのだろう。
その辺を公平に理解できるのはキリスト教のたちの悪さをよく知っている日本人だけだ。
北方四島を素直にすぐ返せ。
そしたら日本が仲裁に入ってやるから。


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