文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

インターネットやSNS等を通じ、ディスインフォメーションを広げ、反米軍感情から「独立論」を煽る世論工作を仕掛ける

2022年01月18日 20時32分17秒 | 全般

以下は、今日の産経新聞、正論に、「偽情報」拡散も安全保障の脅威、と題して掲載された日本大学教授松本佐保の論文からである。 
国際関係は緊張の時代に 
今年の国際関係は緊張の時代に突入したと言わざるを得ない。
昨年までに積み上げられてきた国際問題が、一気に先鋭化する危険性をはらんでいる。
年明けは北朝鮮によるミサイル発射に始まった。
ロシアとウクライナ国境には10万人規模のロシア軍が集結し緊張状態が続く。
昨年末の米露電話協議では両者の主張は平行線だ。
ロシアは北大西洋条約機構(NATO)拡大停止などを強硬に求め、拒まれれば軍事介入も辞さない姿勢だ。
また中央アジアのカザフスタンでは、燃料値上げ等を発端に反政府デモが起き、当局は鎮圧に動き激しい衝突で多数の死傷者を出した。
ロシアがカザフスタン政府を支援するため部隊を派遣し軍事介入を行ったからである。
冷戦期のハンガリー動乱やプラハの舂を彷彿させる状況だ。
今月3日には米国と中国、ロシア、英国、フランスは、核軍縮を目指して「核保有国同士の戦争回避」の共同声明を発表した。
1962年のキューバ・ミサイル危機のような、核戦争勃発の緊張状態もあり得ることから先回りした感が否めない。
冷戦期と大きく異なる点は経済的にも軍事的にも巨大化しつつある中国の存在だ。
中露は現時点では対欧米で協力関係にあることから、日本と欧米諸国にとってより厳しい国際情勢の到来といえるだろう。 
そこで、日本の軍事的な脆弱性が改めて懸念される。
米国のインド太平洋軍と自衛隊を合わせても中国の軍事力の方が優越し、中国軍の主力の戦闘機、戦闘艦艇は米インド太平洋軍の5倍以上だ。 
ディスインフォメーション 
ウクライナ問題で米軍がNATO軍にかまけて、極東に投入する米軍事力が手薄になった隙にもし台湾有事が発生したなら、目も当てられない。
日本の軍事力の拡充が、抑止に繋がることは言うまでもないが、サイバーや情報戰の重要さも軽視すべきではない。
沖縄の米軍基地の重要性がいまだかつてないほど増している。
敵はあらゆる手段で日米の切り離しを図ろうとしている。
決して陰謀論ではなく、冷戦期には米ソは情報・心理戦を含め、シンパを育成、また士気を挫こうとした。
冷戦後もロシアは実際、英国のブレグジットや欧州の右派政権の台頭で、EU(欧州連合)切り崩しのため選挙介入に余念がない。
ネットやSNSなどでデマが流されれば、あっという間に拡散する現在は、むしろ情報戰を容易に行うことができる環境にある。
「ディスインフォメーション」についても中国などによる活動がすでに指摘されている。
偽情報を拡散し世論を歪め、政府の政策決定過程に影響を与えようとする活動で、民主主義の根幹を揺るがし、国家の安全保障に関わる最大の脅威の一つになり得る。
新型コロナウイルス感染拡大で社会が不安定になりがちで、ディスインフォメーションの付け入る隙が広がった。
欧州委員会によれば、中国だけでなくロシアも、感染症に関する虚偽情報を拡散、欧州の民主主義を弱体化させ、その影響力を拡大しようとしているという。 日本もまた中国による浸透工作の格好の標的であり、特に沖縄がその対象である。
米軍基地の存在により、沖縄県民の反米軍感情を引き出すことは容易である。
沖縄を訪問すると、摩擦はあるものの、県民はそこまで米軍に敵対的ではなく、米軍側も休日に基地の施設を県民に開放するなどの交流努力をしていることに驚く。
しかしインターネットやSNS等を通じ、ディスインフォメーションを広げ、反米軍感情から「独立論」を煽る世論工作を仕掛けることができる。 
沖縄めぐる情報戦にも注意 
中国の台湾を含む海洋進出戦略にとって、在沖縄米軍を排除することは最重要課題であるからだ。
中国は昨年2月に「海警法」を導入、尖閣諸島奪取を狙い既成事実をつくり、日本の世論を、軍事問題への無関心と対中国経済優先外交に誘導すれば、中国の作戦は成功といえる。
今月7日の日米の外務・防衛の閣僚協議「2プラス2」では、沖縄県の尖閣諸島に日米安全保障条約第5条適用の再確認と、いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有も明記された。 
しかしここにきてオミクロン株による新型コロナ第6波が日本にも到来、その主要なる発生源が沖縄や岩国など米軍基地であるとされ、特に沖縄は医療体制が脆弱である中で、急速な感染拡大が起き、反米軍基地感情に拍車がかかる可能性がある。
林芳正外相は、在日米軍の感染対策厳格化や外出制限を米国務省に求めるなど異例の対策を打ち出し、日米間で在日米軍の外出制限で大筋合意が成立した。
感染症によって沖縄における日米関係が揺らぐなら、中国の「思う壺」に嵌ることだと覚えておこう。       
(まつもとさほ)


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