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「怪しいタニマチ」に頼んだ9億円 幻の「野田・前原・後藤田新党」…週刊朝日、9/30号から。

2011年09月27日 11時09分55秒 | 日記
左から時計回りに、「怪しいタニマチ」の会合で保守新党構想を温めていた前原、野田、後藤田の3氏と、期待を寄せられていた細野氏

野田佳彦首相ら民主党政権中枢が怪しいタニマチのカネにまみれ、事業仕分けまで影響を受けていたという本誌のスクープで永田町には激震が走った。だが、“不適切な関係”はさらにある。自民党議員との「保守新党構想」で9億円の工面を依頼していたのだ。


民主党が政権交代を果たした09年総選挙の少し前に撮影された、野田首相と民主党の前原誠司政調会長が初老の男性たちと並ぶ記念写真がある。その持ち主は、感慨深げにこう語った。
 
「野田が首相になったのは順当だよ。民主党議員の中ではいちばんまともだった。今や財務官僚の言いなりだけどな。前原って男は常識がない。首相になれば政権は1年も持たなかっただろう。代表選でも前原グループの票の多くは野田へ流れ、前原に入ったのは1年生議員の浮動票ばかりだったと聞いている。人望のなさを物語っているよ」
 
訳知り顔に解説するこの男性は、本誌が先週号で報じた“怪しいタニマチ”グループの関係者である。写真は、このクループが民主党や自民党の国会議員らと重ねた会合の一つで撮影されたものだった。
 
グループの中心は“政治ブローカー”のM氏だ。
 
「自民党に顔がきくMはコンサルタントと称し、全国の土建業者を集めた政治家との『勉強会』を主催していた。だが、05年の郵政選挙後に前原と知り合い、民主党に肩入れするようになった」(M氏と前原氏の共通の知人)
 
M氏は前原氏を通じて野田首相や蓮筋行政刷新相ら民主党の中核までパイプを築いていったとされる。
 
政治資金収支報告書によると、M氏らのグループはこの3人と枝野幸男経済産業相、民主党本部へ計902万円の政治資金を提供している。
 
最大の問題は、一連の資金提供者の中に“元暴力団系タニマチ”S氏の関連企業があったことだ。
 
国会で追及した自民党の西田昌司参院議員はこう指摘する。
 
「前原氏らは節操がなさすぎた。Mのグループには、暴力団関係者とかかわりがあり、覚醒剤事件や脱税事件で逮捕歴があるSがいた。Mを『会長』と慕ったSは、前原氏らに資金を提供するだけでなく、自らの関連企業が出資したNPO法人『H』で本を出版するなど協力していたのです」
 
たしかに09年、前原、蓮肪両氏と自民党の後藤田正純衆院議員、みんなの党の渡辺喜美代表が登場する『未来へ道』(一粒の種の会)という本が出版されている。
 
「Sは前原と後藤田を特に気に入り、勉強会の2次会と称して銀座のクラブなどへ連れ出すことがたびたびあった」(S氏の知人)
 
こうした会合の出席者の間では、こんな構想まで持ち上がっていた。グループのメンバーが明かす。
 
「民主党は烏合の衆で、幹事長の輿石東は日教組出身だし、前原、野田はある意味、自民党より右でバラバラだ。とはいえ自民党もダメ。小泉政権後は町村派ですら保守ではなくリベラルになり下がった。だから、総選挙前に前原や野田、後藤田たちを集めて直接言ったんだ。『われわれの会合に出ている民主党議員12人、自民党議員10人らを束ねて本物の保守新党を作れ。選挙になっても君たちは100%当選するから、ついてくる議員は大勢いる』。すると連中は『新しい政党を作るのに9億円はかかります。資金を出してくれるスポンサーを見つけてください』と言ってきたんだ」
 
会合に参加していた議員の一人も新党構想があったことを認めた。
 
「金額までは覚えてないが、新党の話はよく出ていたよ。前原や後藤田はけっこう前のめりだったね。後藤田は『今こそ政界再編すべきだ』とまくし立てていた」

タニマチ間でも 分かれた前原評


M氏を慕うS氏は新党構想を真に受け、周囲にこう語っていた。
 
「今は民主と自民の2大政党だが、本当は政界再編したほうがいい。互いの改革派が一緒になれば政治はもっとよくなる。前原は人を束ねられる度量がある。新党の資金は俺が出してもいい。前原には将来、首相になってほしい。そうなれば日本は変わる」
 
しかし、タニマチグループの仕切り役であるM氏らの意見は違ったようだ。
 
「Mさんたちは前原と昔、大げんかをしたことがあって、あまり買ってなかった。前原は、小泉純一郎元首相が言いだした道路特定財源の一般財源化を踏襲しようとしていた。『法律で定められている特定財源をやめるなんて、とんでもない』とたしなめても全く聞く耳を持たなかった。前原は、とっぽくて、流行のものにはすぐ飛びつこうとする。常識ってもんがなかった。きっと大事故を起こすぞ、と思った」(グループの一人) 

この新党構想は、その後の民主党の党勢回復と政権交代によって幻となった。
 
M氏らはむしろ、前原氏が会合に連れてきた細野豪志原発担当相に期待するようになったという。
 
「細野は相手が誰でも言うべきことは言う。できるヤツで、小沢一郎元代表にも気に入られていた。だから、Mさんが『小沢の懐へ飛び込んで本心を探ってみたらどうか』とアドバイスした。前原は気が小さいヤツだから嫉妬するだろうけど、いずれはそれが前原や党の役に立つからね。細野は見事、それに成功したんだ」(同前)
 
新党構想の実態はどうだったのか。
 
野田首相と細野氏、M氏らに取材を申し込んだが、いずれも「担当者が不在でわからない」などと繰り返すばかりだった。
 
前原、蓮肪両氏は事業仕分け直前、M氏らの会合に出席したことについては。「多くの会合に出席しており、その中の一つ」と認めたものの、新党構想などについては「そのような事実はありません」と書面で回答した。
 
後藤田氏もこう回答した。「党派を超えた議員の集まりと承知し、数回参加したことはありますが、ここ1年ぐらいは参加しておりませんでした。流れで2次会に参加したことは記憶しておりますが、本会のメンバーと頻繁に銀座に出かけた事実はありません」
 
民主党は結党以来、オープンで透明な政治の実現を訴えてきた。
 
野田首相は9月15日、初の行政刷新会議を官邸で開き、無駄削減をPRした。担当相の蓮肪氏もさっそく事業仕分け第4弾の実施をぶち上げ、こう自画自賛している。「天下りの温床となっていた部分をずいぶん改善しました。更に進めていきたい」
 
野田首相は、自らも含めた党中枢をまずは仕分けすべきだ。

本誌・森下香枝、今西憲之、神田知子


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