文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

そこに中国企業が日本の商社を介してアプローチし、致命的な技術流出にもつながっていく。

2022年04月18日 17時05分52秒 | 全般
以下は、今日の産経新聞、正論に、「技術狙う中国」への危うい備え、と題して掲載された、細川昌彦明星大学教授の論文からである。
彼は元通産官僚として日本国の運営に携わっていた人間である。
日本と日本国民にとって極めて需要な警鐘を彼は鳴らしている。
本論文は日本国民のみならず世界中の人達が必読である。
特に朝日新聞等を購読しNHK等や民放の報道番組だけを視聴している人間達は必読。
まともな日本国民なら全員がゾッとするはずである。
見出し以外の文中強調は私。
ロシアによるウクライナ侵攻に世界の耳目が集まる中、「冷戦後の秩序」の終焉をにらんで手を打つのが中国だ。
「原材料、重要部品などでリーディングカンパニーによる産業チェーンの安全・安定を守る」3月上旬、中国が全国人民代表大会で発表した報告の一節だ。
メディアが見落としている重要な産業戦略で、日本も無警戒ではいけない。
中国が戦略産業の国産化に躍起になっている
ことは本欄でも指摘した(昨年12月21日付)。
ロシアに対するかつてない厳しい禁輸は中国の戦略を一層加速させている。
単なる一時的な制裁にとどまらず、中露に対抗する新たな国際秩序への一歩となる可能性もあるからだ。  

「誘致と買収」に要警戒 
中国はアキレス腱である「原材料・重要部品」という供給網の川上に照準を当てている。
外国企業の「誘致と買収」は技術獲得のための手段としている。
中国は誘致する産業リストを発表しているが、技術獲得の目的を達すれば「誘致から排除へ」と豹変する。
日本企業も苦い経験をしている。
電気自動車(EV)のモーターなどに必要な高性能磁石もその一つだ。
中国からの熱心な誘致に合弁で進出した。
数年後にはパートナーの中国企業が技術を獲得し、今では単独でテスラのEVに納入している。

外国企業の買収も要注意だ。
最近、中国は戦略産業の基幹部材を供給する中堅・中小企業を買収するファンドを立ち上げ、買収候補企業のリストを作成している。 
深刻なのはこうしたリスト作りに日本の一部の大手商社が協力しているという事実だ。
中国政府の歓心を買うためか、ビジネスに徹してか、いずれにしても経営姿勢が厳しく問われる。
特に警戒すべきは製造装置や基幹部材の技術流出だ。
高性能磁石でも中国企業が日本の製造装置を購入することで製造技術を獲得した。
基幹部材でも企業は安く調達しようとし、買い叩かれた中堅・中小のサプライヤーは経営に窮する。
そこに中国企業が日本の商社を介してアプローチし、致命的な技術流出にもつながっていく。
企業は製造装置から基幹部材に至るまで供給網全体のリスク管理が急務だ。
 
法規制外の「不可欠な技術」 
問題はこうした事態に外為法の規制が及ばないことだ。
中国企業による買収に対する外為法の規制には「重大な抜け穴」があることは本欄でも指摘した(昨年10月21日付)。
党が民間企業を統制する中国に対して、国有企業か否かで規制を変えるのも“抜け穴”だが、問題はそれだけではない。
外為法の規制対象である軍事関連の先端技術は明らかに現在の国際情勢からは狭すぎる。
特に買収に対して半導体などの装置・部材産業の多くは無防備に近い。
外為法の規制外でも競争力維持のため死守しなければならない「不可欠な技術」は多い。
中国はそれを徹底的に調べ上げている。
政府は早急に外為法の規制を見直すべきだ。
企業も「外為法の規制さえ守っていればよい」との安易な考えではいけない。前出の大商社もそうした考え違いによるものだ。
経営者に必要なのは、競争力を左右する「不可欠な技術」か否かの「技術の仕分けと管理」だ。
経済安全保障は政府だけではなく企業自身の問題でもある。
国会では経済安保推進法案が衆議院を通過した。
経済界は「規制は必要最小限に限定すべきだ」とステレオタイプの注文を付ける。
しかし今や官民はミッション志向で協業する時代だ。
経済界は「規制される側」との旧来の発想を脱すべきだ。
政府とともに「経済安保の担い手」であるとの自覚が欲しい。 

情報の共有こそ要 
政府の責任は法規制の不備だけではない。
多くの経営者が、必要な情報をベースに的確な判断ができているかが甚だ疑問だ。
これは政府と企業の情報共有が不十分であることにもよる。
企業は競合他社に疑心暗鬼になつて中国に揺さぶられる。
高性能磁石のような苦い経験が他業界に教訓として活かされず、同じ轍を踏む。
だからこそ情報共有は行政の重要な役割だ。
外為法の規制だけしているのは行政の怠慢だ。
ただしこう言うと、「官民協議会」といった器を作る発想になりがちだ。
しかし政府から産業界全般への一方的な情報提供では形だけに終わる。
技術を巡る状況は戰駱物資ごと、企業ごとに大きく異なる。
必要なのは、それに応じて企業と「双方向のすり合わせ」をきめ細かく行うプロフェッショナルな対応だ。  
「ビジネス追求か経済安保か」と対立的にとらえるのも聞違いだ。
足元のビジネスを追求する近視眼的な経営は中長期的に持続可能な経営とは言えない。
これは高性能磁石を見れば明らかだ。
経営者だけの問題ではなく、行政の無策も反省すべきだ。
「自由放任の行政の方がありがたい」と勘違いの経営者がいかに多いか。
経済安保の要諦は、官民が協業して持続可能な産業競争力を強化することだ。

  

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