以下は前章の続きである。
「49kWの罠」は、50kW未満の事業には一切の規制がかからないことを悪用した開発の仕組みである。
あまりにひどいため平成26年3月末に打ち切られたが、それ以前に結ばれた契約はいまも有効で、次々と工事に人っている。
罠の背後には大手事業者が存在する。
彼らは山林などを大規模に買収し、49kW以下の発電に見合うよう分譲する。
相場は2千万円前後、利益率は年10%以上といわれる。
20年で4千万円の利益を生み出すこんな取引がゼロ金利の時代にあるのだ。
資金を提供する小口の買い主以上に大手の開発・建設業者はさらに大きな利益を得ていると考えてよいだろう。
彼らに渡る利益は全て、私たちの国民負担だ。
再生エネルギーにかかるコストは全て電力料金に上乗せされるからだ。
国民全員の負担で支えている太陽光発電にもかかわらず、49キロワット以下の開発には、規制は一切ない。
第一、日本には太陽光発電を規制する法律がない。
国の環境影響評価(アセスメント)法の対象は火力、風力、水力だけで、太陽光は対象外だ。
圧倒的多数の地方自治体もほぼ同様だ。
であれば、小規模事業として大目に見てもらえる49キロワット以下の事例で野放図な開発がまかり通るのは当然だろう。
樹木を切り倒し、根を抜いても、基礎工事をする必要がない。
土事現場の鉄骨を組み立ててその上にパネルをポンポンと載せていくような手抜きの手法が使われる。
建築基準法にも該当しないために、どんな傾斜地にも設置できる。 配電線の工事も比較的容易に取得できる第2種の資格でできる。
除草は高い人件費を払うかわりに強烈な農薬をまいて終わる。
それがどれほどの土壌や地下豕の汚染をひき起こすか、樹木が切り倒された後の山からどれほどの量の土砂が川に流れ込むか。
こんな開発はどう考えてもおかしい。
無論、まじめな太陽光発電の企業も存在するが、それでも現在の太陽光発電が本来の目指すべき在り方から大きく逸脱しているのは否定できない。
世界の再生エネルギーの現場では、最先端を走る中国もドイツも太陽光発電から離れつつある。
中国は猛烈な勢いで原子力発電に傾斜し、ドイツはFITを打ち切った。
日本でも、九州電力が不安定な太陽光発電の全量買い取りにはもう耐えられないとして買い取りを制限すると宣言した。
日本全体の問題として太陽光発電の長所・短所を比べ、考えるべき時だ。
こうした中、伊東市の住民らは8月31日、建設工事の差し止めを求める仮処分を静岡地裁沼津支部に申し立てた。
太陽光発電が私たちを幸せにしてくれるのかどうか。
日本の未来を守る闘いはこれからだ。