文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

こんな規制委を国際原子力機関(IAEA)の専門家チームも厳しく評価している。2016(平成28)年初め、12日間にわたって規制委の仕事ぶりを調査し暫定評価を公表した。

2024年08月05日 11時38分14秒 | 全般

以下は、今日の産経新聞のフロントページに掲載された櫻井よしこさんの定期連載コラムからである。
本論文も彼女が最澄が定義した国宝、至上の国宝であることを証明している。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。

悪魔の如き規制委の視線
熱中症死者が急増中だ。
7月、東京23区内で6年ぶりに100人を大幅に超え123人が熱中症の疑いで死亡した。
うち9割超が60歳以上で、9割弱が冷房を使わずに死亡していた。 
国家行政組織法第三条に基づく委員会として強い権限を有する原子力規制委員会は中立公正の立場で原子力発電の安全性を確認し科学的に判断する責務を負う。
だが、その責務を放棄し再稼働を不条理に阻止し続けた結果、日本の電力料金は世界最高水準だ。
そうした中での悲劇の一つが熱中症死亡者の急増であろう。 
8月2日、規制委は福井県の日本原子力発電、敦賀2号機は新規制基準に適合しないと正式に結論づけた。
注目の論点は2つだった。
①2号機の北方300封に位置するK断層と命名されたものは活断層か
②K断層は2号機の下までつながっているかーである。 
興味深いポンチ絵がある。
敦賀2号機の審査を主導する規制委の石渡明氏が7月31日の規制委で、山中伸介委員長に報告するために用いた「K断層の活動性と2号炉原子炉建屋」の位置関係を示す図である。
同資料ではK断層を示す赤い線は途中で消えており、2号機原子炉建屋の下には複数の破砕帯(ひび割れ)が走っている。
K断層がどこまで続いているのか、石渡氏も証拠に基づく整理ができていないのだ。

原子力学会で活断層リスクと工学的対策の調査報告書を取りまとめた東京工業大特任教授の奈良林直氏が指摘した。 
「日本原電は掘ったトレンチ(試圓溝)の地膕や採取した試料に含まれる火山灰や鉱物などから活動年代を調べ、『K断層は古い年代の地層で活断層ではない』 『原子炉建屋の下までつなかっていない』と証明しました。
しかし、規制委は『曖昧で、科学的根拠に乏しい』『K断層が将来動く可能性を否定できない』として退けました」 
2号機建屋の真下の岩盤は6500万年前頃に形成された花崗岩だ。
ひび割れは長い年月動いていないことが証明されていて、K断層ともつなかっていない。
日本原電は規制委に否定された点をさらに証明するため追加調査を要請した。 
だが規制委は一切応じずK断層が2号機直下の既知の破砕帯の他につながっている証拠がないまま議論を打ち切った。
追加調査でK断層が活断層でないこと、2号機建屋の下まで続いていないことがより鮮明に科学的に証明されたら不都合な真実になるのであろう。 
原子力工学が専門の東大教授の岡本孝司氏はこの規制委の筋書きを「空想小説」だと喝破した。 
AI(人工知能)、データセンターなどわが国は電力需要の大幅増に直面している。
わが国は十分な電力を供給できるのか、世界的に高い水準の電力料金を妥当な水準に下げられるのかが問われている。
非科学的判断で原発再稼働を阻止し、国民生活を貧しくし、わが国産業を弱体化させてはならない。
電力料金の高騰で冷房も使わず亡くなってしまう人を増やしてはならない。 
原子力規制委員会の本来の役割は原子力産業の安全性を高め国民生活を豊かにすることだ。
平成24年12月、政権を奪回した当時の安倍晋三首相は民主党の原発ゼロ政策の白紙撤回を表明した。
しかし、菅直人元首相は「そう簡単に元に戻らない仕組みを民主党は残した。その象徴が(自身が設置した)原子力規制委員会だ」と述べ、具体例として日本原電敦賀原発2号機の活断層問題を挙げた(25年4月30日、北海道新聞)。
原発再稼働を阻止し、原発ゼロを目指す菅氏のたくらみに沿った形で活動する規制委の原子力産業への視線は、敵対的で悪魔の如しだ。 
例えば、欧米では原発に関する検査記録はすべて電子化されパソコンでの閲覧が可能だが、日本では必ず紙に転記して提出しなければならない。
規制委が原発各社に要求する検査関連書類は概して10万ページ、厚さ10センチのパイプ式ファイルで150冊分、積み上げると15メートル、5階建ての建物に匹敵する。
現在、青森県六ヶ所村では規制委の要求する書類作りに体育館を借りて300人が汗だくで働いている。 
こうして作成された書類を規制委は皿の目で検閲し、誤字脱字を見つけてはそれをとがめ、やり直しを命ずるのだ。
正に狂気の沙汰だ。 
こんな規制委を国際原子力機関(IAEA)の専門家チームも厳しく評価している。
2016(平成28)年初め、12日間にわたって規制委の仕事ぶりを調査し暫定評価を公表した。
規制委に対して改善すべき具体例として筆頭に挙げたのが「もっと能力のある経験豊かな人材を集め、教育、訓練、研究および図際協力を通じて原子力片叙射能の安全に関係する技術力を上げるべきだ」という点だった。 
「能力ある人材を集めよ」とIAEAに指摘された恥ずべき存在が規制委だ。 
現在、欧米各国では小型モジュール炉〔SMR〕や革新炉の建設が始まっている。
米国の大学ではキャンパスにSMRやマイクロリアクター(超小型の原子炉)を設置する動きもある。
IAEAの特別チーム、米国原子力規制委員会(NRC)が大学と協力して計画は進行甲だ。
東工大特任教授の奈良林直氏が苦笑した。 
「日本の規制委はおそらくSMRに関して10年以上の活断層審査をするのではないか。でも彼らにはSMRの知識もありませんから審査そのものができないでしょう。このようにしてわが国の科学技術の進歩は世界からどんどん遅れていくのです」 
菅氏が強い敵意をもって原発潰しのためにつくった規制委が高い独立性をもった三条委員会であるという事実に恐れをなして、自民党は対策を立てられないでいる。
情けない。 
国民と国益のため、IAEAの助言のようにもっと能力のある経験豊かな人材を規制委に任命せよ。
その上で、どの国でも普通に行われている規制委と政治の対話を怠るな。
国民生活を安全に豊かに、経済安全保障の土台として、安定したエネルギー供給をはかれるようにせよ。



2024/7/30 in Onomichi


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