文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

日本の国柄への理解が希薄であるから、わが国の実情を理解しない米国に反論できなかった…日本国民として失望の極みである

2023年08月07日 11時36分05秒 | 全般

以下は今日の産経新聞に掲載された櫻井よしこさんの定期連載コラムからである。
本論文も彼女が最澄が定義した国宝、至上の国宝であることを証明している。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。

日本再建見えぬ大戦略
岸田官邸に不安を覚える。
聞く力、有事に対応する政策断行内閣と言いながら、聞いているのか、断行しているのか。
安倍晋三元首相の日本国建て直し路線を引き継ぐとしながら、中心軸を外しているのではないか。 
一例が安全保障だ。
国家安全保障戦略など安保3文書は昨年12月、立派な形に整えられ、あとは実行あるのみだ。
「最大の戦略的な挑戦」である中国に、わが国は総合的国力と同盟国、同志国等との連携を以て対処する。
そのために令和9年度までに防衛関連経費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる。 
7月末に公表された防衛白書は右の予算には他眷の防衛関連予算も含まれるとした。
9年度の防衛費は計約11兆円、約9兆円か純粋な防衛費、約2兆円は他省庁にもまたがる分だ。 
3文書の具体化を政治の意思として示す防衛白書から国際情勢の速い動きにい上げられる日本の姿が透視される。
欧米を見ればGDP比2%も十分ではない。
軍事力の整備は至上命題だが経済の武器化が常態化し、経済安全保障の重要陛が高まった。
早急に第二の手を打つ必要がある。 
安全保障に関するわが国の絶対的遅れは法律を見れば明らかだ。
行政法体系の基盤を成すのが事業法だが、元国家安全保障局長の北村滋氏は、政府が保安、育成等の観点から民間事業を規制するこの一連の法律群には安全保障的観点はほとんど存在しないと指摘する。
電力、鉄道、水道などの重要インフラ施設の構築などは全て各事業法に基づいてなされるが、そこには他国では当然の安全保障の要素を加味する発想がない。 
昨年成立した経済安全保障推進法は基幹インフラの安全性確保を含む4つの制度を創設した。
これで安全保障の観点を欠く事業法の欠陥は一応補われるが、ここにも大きな穴がある。 
たとえば、事業法に定められていない重要な分野としてのデータセンターである。
いまやデータこそ有機体としての国家の基盤を成す。
データセンターを破壊されれば、わが国は機能停止に陥るが現行の経済安保推進法では対処できないため、改正が必要であろう。 
米欧はいま対中投資の規制に乗り出そうとしている。
投資ファンドの資金が中国に流入し、中国経済を支えることは日本の国益にもかなわない。
この点からも経済安保推進法のさらなる強化を急ぐべきだ。 
対中戦略の枠組みをより強固にすべく指示を出し、大戦略を提示するのが首相の役割だが、首相にはそれができていない。
まさか中国への遠慮ではあるまい。
岸田文雄首相が重要閣僚として支えた安倍政権は国の守りを高める取り組みをひとつひとつ進めた。 
まず情報管理が可能な国にするために平成25年に特定秘密保護法を成立させた。
次に防衛力の運用幅を安全保障関連法で広げ、集団的自衛権の行使を可能にした。
加えて全てが軍事につながる時代にあって、経済安全保障を進めるために国家安全保障局に経済班を作った。
新しい制度を打ち立てる度に安倍政権は支持率を下げた。
幾度かの死に物狂いの戦いを経て、いまわが国は少し普通の国に近づいている。 
だが、わが国の戦いは終わらないどころか、厳しさを増すばかりだ。
地球上で最も高い密度でミサイルと核が集中する戦域にわが国は心細い形で存在する。
必死の軍事力強化を続けてもここ数年は考えるだに厳しい脆弱性の中にある。 
だからこそ、あらゆる面でわが国の強さを発瞿できる国民、社会、国にしなければならない。
北村滋氏は安倍氏がインテリジェンスブリーフに多くの時間を割き、各種政策の前提となる情勢認識の検証に充てたと述懐している。
深い情勢分析は力の源泉である。 
中国の習近平体制は但在、混乱の極みにある。
中国の発するメッセー号の裏を読むことだ。
彼らの強さも弱さもよく見て、常に対等につき合うことだ。
間違っても懇願してはならない。 
岸田首相にわが国の国柄を守る気があるのかについても疑問が拭い切れない。
LGBT問題である。 
岸田首相は先進7力図首脳会議(G7広島サミット)に合わせてLGRTなど性的少数者への徑解増進法案の国会提出を指示したが、法制化には進まないとの考え方だった。 
それがあっという間に法制化された。
G7のどの国にもLGBTに特化した権利擁護の法律がない現状で、この問題について他国に比べて伝統的に寛容な日本が、なぜ法律を作らなければならかかったのか。
米国も欧州も行きすぎた対策を反省し、後退している。 
日本各界にあからさまな圧力をかけた米国自身、共和党の反対で同種の法律制定は望めないにもかかわらず、エマニュエル駐日大使はなぜ、日本国に強要したのか。
岸田首相はなぜ、日本の国柄や伝統を踏まえて説得し、法制化を回避しなかったのか。
日本の国柄への理解が希薄であるから、わが国の実情を理解しない米国に反論できなかった、と考えざるを得ない。
日本国民として失望の極みである。 
このようなことは国と国の関係としても強い違和感を抱く。
圧力を受けて自国の文化や伝統にそぐわない法整備を強いられるのは不本意極まる。
とりわけ同盟国は運命共同体である。
日米両国のために互いに前向きに進んでいける関係でなければならないのに今回の件は強い不快感を残した。
岸田外交の汚点である。 
もうひとつの苦言がある。
御子息の振る舞いに関するものだ。
官邸での親戚の若者たちの数葉の写真は日本を代表すると言ってよい上流知識階級の家族の振る舞いとは思えないものだった。
歴代の首相や閣僚を輩出したエリートー族の、これが実態かと、多くの国民を失望させたことに首相は気づいているだろうか。
この失望は、岸田首相の大事にしている日本人としての価値観は何なのかという疑問にもつながっていったと、私は思う。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。