文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

中国側が求めた会談にもかかわらず、彼らの発表では日本側に「歴史を深く総括し、中国に対する正しい考え方を持ち、ゼロサム思考を捨てよ」などと指導したことになっている

2022年09月07日 21時26分46秒 | 全般

以下は9/5に産経新聞に掲載された櫻井よしこさんの定期連載コラムからである。
本論文も彼女が最澄が定義した国宝、至上の国宝である事を証明している。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
見出し以外の文中強調は私。
日中正常化50年祝えぬ
日中国交正常化から9月29日で50年だ。
この半世紀、基本的に日本側は政財界共に前のめりで中国を支え、結果として中国にだまされむしり取られた。
背景に、それを是とする精神的負い目があった。
以降の50年、私たちは日本の立場を正当に主張する姿勢で日中関係を築かなければならない。
中国に正対する気概が大事だ。
安倍晋三元首相は中国がもちかけた靖国神社不参拝、尖閣諸島(沖縄県石垣市)領有権問題の存在確認など条件付き首脳会談を、あらかじめ日本を規制する枠組みには入らないとしてことごとく拒絶した。
結果、日本の協力を必要としていた習近平国家主席が折れて、2014年、前提条件なしの会談に応じた。
米欧諸国が基本戦略として取り入れた日本発の「自由で開かれたインド太平洋」構想を提唱したとき、安倍氏は中国敵視や排除の方針をとらなかった。
米国の離脱を乗り越えてまとめた環太平洋戦略的経済連携協定(TPR)においても同様だ。
安倍氏は一連の開かれた概念を、中国もあらがい得ない力強い国際的枠組みとしてまとめ上げた。
日本の戦略力だ。
いかなる国も排除しない理想的な戦略、それを支える強く賢い力の枠組みを構築した安倍氏は、中国に位負けしない初めての日本国首相となった。
岸田文雄首相も同じように中国への向き合い方を問われている。
一つ言えることは、自国への強い信頼と誇り、国家を支える経済力と軍事力の増強なしには国際社会を生き抜くことはできないということだ。
いま、日中両国はあまりに異なる価値観の壁に直面している。
プーチン露大統領を経済的に助け続ける習氏はプーチン氏と同類だ。
国際社会で孤立した中で今月、日中国交正常化50周年を10月には非常に重要な意味を持つ共産党大会を迎える。
イメージ回復が必要なとき、日本を利用するのが中国の常套手段だ。
8月17日、中国側の働きかけで、秋葉剛男国家安全保障局長と楊潔篪共産党政治局員が中国・天津で7時間にわたって会談した。
中国側が求めた会談にもかかわらず、彼らの発表では日本側に「歴史を深く総括し、中国に対する正しい考え方を持ち、ゼロサム思考を捨てよ」などと指導したことになっている。
日本側が沈黙を守っているために断定はできないが、中国側が首脳会談開催を要請したのは間違いないだろう。
しかし、中国がどれほど宥和的に振る舞おうとも、習氏の権力基盤固めと世界覇権を打ち立てる戦略目標は変わらない。
だからこそ、米国のペロシ下院議長の訪台直後の8月4日以降、中国は台湾を包囲する形で大規模な軍事演習を行った。
戦闘機、爆撃機は中台中間線を越えてほぼ連日、台湾空域を飛行し始めた。
軍事強国を目指す中国の習近平国家主席の変わらない執念は、3隻目の空母「福建」が備える艦載機の発艦能力を高めるカタパルト(射出機)をリニアモーターで発進させる電磁式にしたことにも見てとれる。
中国が保有する他の空母2隻はスキージャンプ式で、能力はカタパルトに劣る。
カタパルトは現在、蒸気式が使われており、完全に運用できるのは米軍だけである。
その先に電磁式カタパルトがあるが、米国でさえまだ完璧には実戦配備ができていない。
仮に中国が電磁式カタパルトの導入に成功したら、国際秩序を変える「ゲームチェンジャー」となり、軍事力のバランスは中国優勢に傾くとみられている。
国際関係を左右するのが軍事力であると信じてやまない中国は、米国のペロシ下院議長の訪台直後の8月4日、沖縄県・与那国島から80㌔のわが国の排他的経済水域(EEZ)にミサイル5発を撃ち込んだ。
日本への明白な恫喝(どうかつ)であり、敵対行為だ。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海にも繰り返し侵入し、軍艦も送り込む。
日本との首脳会談を切望しながら、軍事力で恫喝することの非を岸田文雄政権は明確に中国に理解させなければならない。
こんな状況下では、日本人として日中国父正常化50周年を祝えるはずがない。
力による恫喝も現状変更も許さないと、声を上げ続ける米国では、その声を政策として形にすべく、上院砂超党派で「台湾政策法釆」を審議中だ。
同法案は1979年の台丙関係法を全面的に見直し、台湾を日本や韓国同様、「非NATO(北大西洋条約機構)同盟国」に指定し、米国の台湾に対する年来の「曖昧路線」から決別する内容だ。
台湾との防衛装備品の共同研究・開発を可能にし、武器供与は台湾の防衛のためのみならず「中国軍の侵略抑止」のためにも行われる。
岸田政権に足りないのは実はこの種の政治の意志ではないか。
台湾を守ることは力による暴挙を許さないというわが国の価値観に沿うものであり、日本の国益だという信条が首相から伝わってこない。
年末にかけてまとめられる国家安全保障戦略など戦略3文書を見てから判断するのが恐らく正しいのであろうが、首相は世界が荒波で洗われているいま、もっと明解な方向性を言葉で伝え、国民を納得させるのがよい。
私たちはウクライナ侵略戦争から多くを学んだ。
中国も同様だろう。習氏は口シアが勝利できないのは米欧日の結束ゆえとの教訓を得たのではないか。
従って台湾政策で取るべき中国の戦略は、まず米台の分離、次に日米の分離だと身にしみて感じているだろう。
米国相手に台湾を攻めるには圧倒的な軍事力が必要だとも痛感したに相違ない。
それはつまり、中国の野望を阻止するには日米台の連携が欠かせないということだ
その中において日本の役割こそ最重要だということだ。
であれば、なおさら国交止常化50周年を理由に中国の日本取り込み戦略に巻き取られてはならないのだ。
国防力の増強を急ぎ、自衛隊の迅速展開を不可能にしているあまりにも多くの法的な縛りを急ぎ解き、憲法改正に踏み切らなければならない。

 



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