文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

大体、あの常に警戒心を怠らない無表情の典型的な独裁者を習さん、習さんと親近感を込めて呼べる神経は彼らの代理人以外の誰も持ち合わせないものだろう。

2019年07月15日 13時38分52秒 | 全般

田村秀男は財務省の受け売りの知識で経済を語る言論人ではない。

ましてや朝日新聞や日経の論説の受け売りでなどあるわけがない、数少ない本物の経済通である。

以下は26発売された月刊誌HANADA今月号の巻頭に連載している彼のコラムからである。

見出し以外の文中強調は私。

トランプをけなす日本メディアの倒錯

米中両国は76日、相互に相手国から米の輸入品に制裁、報復関税を発動し、貿易戦争に突入した。

驚いたのは、中国に肩入れするメディアや識者が日本には圧倒的に多いことだ。

トランプ米大統領を「保護貿易主義者」とみなし、自由貿易ルール無視の習近平中国国家主席を事実上持ち上げる倒錯ぶりである。 

まずは7日付の日経新聞朝刊社説。

見出しは「米中は制裁を撤回し対話で摩擦緩和を」で、中身は「様々な手口で技術や情報を奪う中国の知財侵害は悪質だ」などと中国を批判しているのだが、結論は「だからといって制裁や報復に走るのでは、お互いの首を絞めるだけだ」。

けんか両成敗といわんばかりだ。

そして、「米国は鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を、中国以外の国にも発動した。日本や欧州が連携し、保護貿易を封じる必要もある」と締めくくっている。

「米国=保護貿易」との印象を読者に与える意図が見え見えだ。 

朝日新聞の4日付社説は、「報復関税連鎖保護主義に歯止めを」である。

米国の鉄鋼・アルミ輸入制限と「中国製品に対する高関税」を同列視したうえで、米国に対し「保護主義を改めるべきだ」と説教した。

8日のNHK日曜討論でも、「保護主義米国」を懸念する識者が多い。

欧米の主流メディアはおしなべてトランプ政策に批判的なのだが、トランプ政権の対中強硬策を保護貿易主義と決めつけることはしない。 

古典派経済学の「自由貿易」理論発祥の地、英国では、議会が長年の論争の挙げ句、自由貿易主義を政治上の建前として祭り上げた。

輸入制限措置をとっても、政界や言論界は「保護主義」とみなさず、「相互主義」または「公正貿易」と言い、あくまでも自由貿易の枠内に位置づけた。

米国議会も歴代大統領もそれに倣っている。

1980年代、「自由貿易主義者」レーガン大統領は、通商法301条の対日適用を「公正貿易」と呼んだ。

トランプ路線はその対中版だ。

対照的に、日本のエコノミストたちは相も変わらず教科書流「自由貿易」を金科玉条とし、半可通のメディアや識者、政治家が唱和して、中国擁護に回る。 

関税や非関税障壁をなくし、各国は優位産業に特化して他国と分業すれば、お互いに繁栄するというのが自由貿易理論だが、基幹産業やハイテクを放棄して他国からの輸入に頼れ、コメなどの主食の生産を他国にまかせるというなら、国家主権は無用だ。

国内の雇用を犠牲にして、他国でしか生産しない企業は、自由貿易の名のもとに本国を裏切る。 

現実の国際自由貿易体制は国家間の競争であり、勝者と敗者を生む。その動力は国家間の政治力学であり、経済学の空念仏ではない。

世界貿易機関(WTO)の自由貿易ルールは国家間の妥協の産物であり、自由貿易の理想郷であるはずはない。

日本のメディアや識者だけが、金太郎飴のごとくひたすらWTOルールを持ち出してトランプ大統領を批判するのは、国際政治への無知をさらけ出すようなものだ。 

中国こそはWTO体制に便乗してやり放題、親中派の日経社説ですら認めているように悪質極まるのだが、メディアはWTOルール違反の中国の処罰を求めず、米国の報復措置を非難する。

それこそ不公正だ。 

最も深刻なのは、中国の脅威が対米貿易黒字に由来するという認識の欠如だ。

中国当局は流入するドルをことごとく吸い上げ、外貨準備を原資に人民元を発行し、金融を量的拡大して高度成長を遂げてきた。

ハイテク米企業買収、中華経済圏構想「一帯一路」の軍資金も外準が拠り所だ。 

昨年までの10年間の対米黒字合計額は32000億ドルで、その間の人民元資金発行増加額の9割以上に相当する。

豊富な資金を拠り所に軍拡を進め、沖縄県尖閣諸島奪取の機をうかがい、南シナ海の岩礁を占拠、埋め立てて軍事拠点とする。

拡大する市場に日米欧企業を引き寄せ、先端技術提供を強制する。

サイバー攻撃や企業買収で技術を窃取する。

周辺の弱小国に輸出・投資攻勢をかけて債務負担を膨らませ、返済難になると現地のインフラを接収する。 

トランプ政権は対中制裁する輸入品総額を今後2000億ドル、さらに3000億ドルと上積みし、合計で5500億ドルにする構えだ。

米国の対中輸入総額は5200億ドルだから、輸入すべてに追加関税をかける算段だ。

中国の国際収支は1200億ドルだから、対米黒字が吹っ飛べば中国は赤字国に転落し、金融は萎縮する。

すると、経済・軍事の膨張が止まる。

それは日本や台湾、東南アジアなどの安全保障となる。

トランプ政策は「米国第一主義」が主動機なのだが、日本にとっては安保なのだ。

「保護主義米国」と連呼する日本の報道を見て、習氏はほくそ笑んでいるに違いない。

*習さん、習さんと笑みを浮かべて連呼する赤い組合活動家の有馬が日本国営放送局の看板番組でキャスターをしているのだから戦後日本の歪みも極まっているのである。大体、あの常に警戒心を怠らない無表情の典型的な独裁者を習さん、習さんと親近感を込めて呼べる神経は彼らの代理人以外の誰も持ち合わせないものだろう。それこそが赤い組合活動家の本質なのだろうが。


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