文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

中国人の思考の根底…「強い者が偉い」「侵略は正しい」…彼らの正義と邪悪の観念が、いまの世界と正反対なんです。 

2022年10月16日 11時42分56秒 | 全般

2022/10/4発行の最新本である。日本国民のみならず世界中の人達が必読。
活字が読める日本国民全員は今すぐに最寄りの書店に購読に向かわなければならない。
何しろ、戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである高山正之と、北京大学を卒業、神戸大学に留学、その時に友人に誘われて訪れた嵐山で天啓に打たれ、日本人と結婚、日本に帰化し、世界有数の中国通として、容赦なく、中国の悪を暴き続け、舌鋒鋭く批判し続けている石平さんの、初めての対談本なのだから。
以下はp173-p177からの抜粋である。
文中強調は私。

ネット上に溢れるプーチン賛美は習近平への不満の表れ
石平
一方的に自分たちの主張を展開しているだけなんですが、それは中国共産党がよく使うプロパガンダの一種。
しかしこの影響で中国のネット上には圧倒的にプーチン賛美の声が溢れ、反対に「ウクライナけしからん」という非難の大合唱。
私ですらショックを受けました。いくつか紹介しましょう。
プーチンが侵略戦争を開始したのは二月二十四日ですが、そこで中国のネットユーザーがどういう声をあげたかというと、「よかったよかった」「我慢に我慢を重ねてプーチンが、我々のプーチンが立ち上がった」「痛快だ、楽しみだ。浴びるように飲もうか」
高山 
なるほど、みんなプーチンがすぐに勝利すると思っていたんでしょうね。
石平 
「さすがはプーチン、有言実行だ。いまウクライナの連中もNATOもアメリカも震え上かっているだろう」「ロシアは必ず勝つ。正義が邪悪に勝つのだ」
高山 
プーチンのロシアが正義であるとはとても思えないけど。
石平 
「ははは、いよいよ始まったのか。ウクライナの大馬鹿、我らのプーチンに逆ら戸たらこうなるのだ。プーチン万歳、ロシア万歳」「ウクライナと欧米ざまあみろ。邪悪の欧米とその番犬のウクライナに、英雄プーチンが果敢に立ち向かった」「プーチンを応援しよう。ロシアを応援しよう」「我らの戦う男神プーチンの完勝を心から祈ろう」「世界一の英雄のプーチンが手を出した以上、ウクライナなんかはあっという間に制圧されるだろう。いずれプーチンが欧州を支配し、我らがアジアを支配するんだ。だからプーチンと一緒にやろうじゃないか」……。 
ここでわかったのは、いじめられているウクライナに対する同情心がまったくないこと。
誰から見てもロシアとウクライナはサイズが違う。
大の男と赤ちゃんが喧嘩するようなものです。
しかしいっさい同情しない。「強い者が偉い」というのが中国人の思考の根底にあります。
もう一つが「侵略は正しい」というもの。彼らの正義と邪悪の観念が、いまの世界と正反対なんです。
それがまずプーチン擁護、そして猛烈な賛美につながっていく。
プーチンは現代の英雄であり、強い意志を持つすばらしい指導者だという賛美です。 
高山 
旧ソ連解体後、ロシアは大混乱に陥って三流国家に転落したが、プーチンの出現によって救われた、というところですか。 
石平 
彼が二十年間苦労した結果、ロシアは世界大国の栄光を取り戻したという意見もあります。「プーチンのような強い人の出現はロシアの幸い」とかね。
「彼は中国人民の朋友、我々は心強い」。「向前看」というアカウントのネットユーザーの声はもっとすごい。
「プーチンは尊敬すべき強い人。鉄のような強い意志、切れる頭脳の持ち主だ。スポーツ万能であるだけでなく、戦闘機も戦車も大砲も自由自在に操作でき、敵をやっつける。対外戦争では連戦連勝、まるでロシア民族の戦う神様、ああプーチンは素晴らしい。指導者として堅忍不抜、高貴にして闊達、ロシアの栄光を取り戻すために、彼はあらゆる敵に立ち向かって、邪魔者を粉砕していく。このやり方は痛快で、まるで落ち葉を揺する烈風のごとし。このような男を尊敬せずにいられるか、このような指導者を崇拝せずにいられるのか……」
高山 
う~ん、聞きしに勝るね。
石平 
「安木浴晴」という女性ネットユーザーは自身のウェイボーで、「七十歳に近いプーチンがどうして中国の若い女性の心を虜にしているか」と書いています。
「鉄のような強い意思と優しい心の両方を持ち合わせ、まさに女性にとって白馬の王子様」だそうです。
そして彼女は「嫁ぐならプーチンに嫁ぎたい」と、六十九歳のロシア人に熱烈なラブコールを送っているのです。
この声につられるように「氷山薤花」という女性は、こうウェイボーで書いています。 
「プーチンは多くの中国人にとって憧れの英雄。私の周りの多くの少女たちもプーチンのことが大好き。彼のことを崇拝しています。最近のロシア戦争では、私たち全貝がプーチンのことが心配で、プーチンのために祈って、プーチンに精一杯の声援を送っています」
これらはもちろん、中国人全員の意見ではないでしょう。でも、一般庶民の心情がよく表れています。
中国人は、我々のような世界の正義とか公正などという感覚はまったく持ち合わせていない。
強いものが弱いものをいじめるのは当然で、弱いものが反抗したら馬鹿だという観念です。
強いものに憧れて、強いものはどんなことやっても許されるというもの。
こうした言葉を見ていて、私はいまの中国人の心理を読み取りました。
ここまでのプーチン賛美は、自分たちの指導者・習近平に対する不満の裏返しではないかと。
つまり習近平は、「まだプーチンのような強い人になっていないじゃないか」ということ。習近平にもプーチンのように「あらゆる敵と果敢に戦って、落ち葉をゆする烈風のごとき人になってほしい」という願い。
とても危険だと感じます。
高山 
習近平へのそういう物足りない思いが市民の中にあるというほうに少し驚きを感じます。
国民のそういう狂気が、指導者を戦争に駆り立ててしまうことにもなりかねない。
石平 
私は中国で生まれて、中国の民主化のために努力してきたつもり。それは、この国がよくなると信じていたからです。
でもこんな投稿を目にしたら、もう絶望するほかない。
共産党政権だけの問題ではなく、中国国民の大半も病んでいる、異常な精神状態に陥っているとしか思えません。

この稿続く。

 



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