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外貨は中国経済の成長と軍拡を可能にするばかりか、世界各国を取り込む資金源になる。

2021年04月29日 09時59分57秒 | 全般

以下は4月25日の産経新聞、日曜経済講座に掲載された田村秀男の論文からである。
日本のメディアの経済記者や学者は財務省の受け売りを論説している存在に過ぎない。
彼は数少ない本物の経済論を語り続けている。
本論は、世界の経済関係者が習近平の香港弾圧に加担している実態を明らかにしている。
金儲けだけを考えている人間達が史上最悪の悪に加担している寒々しい実態を明らかにしているのである。
世界中のメディアを覆っている似非モラリズムとPCの実態でもある。
グレタ・トゥーンベリやとトラウデン直美達が必読の本物の論文である。
習政権の粗暴な拡張主義の源泉に
膨張する中国の外貨負債
新型コロナウイルス・パンデミック(世界的大流行)の中、日米欧の余剰資金が中国になだれ込んでいる。
習近平政権にとって経済を拡大できるばかりではない。
巨大経済圏構想「一帯一路」や「ワクチン外交」に代表される対外攻勢を加速させる資金源にも活用できる。
拙論が以前から指摘しているように、中国は事実上のドル本位制で、中央銀行である中国人民銀行は公定レートでドルを買い上げ、外貨準備を積み上げ、これに応じて人民元を発行する。
外準の供給源は貿易収支など経常収支の黒字と対外負債の増加だ。
外貨は中国経済の成長と軍拡を可能にするばかりか、世界各国を取り込む資金源になる。
今や対外負債こそが習政権を増長させる原動力なのだ。
グラフは中国の対外負債、資産の前年比増減額だ。
2020年末の対外総負債の増加額は前年末比1兆68億ドルで、19年の増加額の4.55倍に達した。
対外総負債の増加は主に海外からの対中投融資が増えたことを反映する。
積み上げ棒グラフで示した対外総負債増加分の内訳をみると、20年は、直接投資負債、株式負債、債券負債の増加がめざましい。
負債増加が意味するのは日米欧の製造業や金融機関が行う中国への投資による資金流入だ。
銀行や投資ファンドは香港、上海と深圳の株式市場に上場する中国企業に投資している。
この3つの株式市場は「ストック・コネクト」と呼ばれる仕組みで一体化され、外国投資家は香港市場経由で上海、深圳市場の中国企業株を売買できる。
習政権は株式市場において新規株式公開(IPO)という手段を使えば容易に外貨を低コストで調達できる。
国際取引所連合(WFE)によれば、20年のIPOによる資本調達額は香港、上海、深川市場合計で1242億ドルに上り、IPOの総本山であるニューヨーク市場とナスダックの合計額851億ドルを凌駕した。
米国のトランプ前政権は中国の軍事につながる中国企業を米国株式市場から締め出して、ドル資金調達を阻もうとしたが、習政権は香港の全面的中国化で対抗したわけだ。
習政権は20年6月末に香港国家安全維持法(国安法)適用を強行して香港の民主主義勢力を徹底的に弾圧し、今年3月には香港立法会(議会)の民主派勢力を事実上一掃した。
19年夏から香港株式市場には中国本土企業の新規上場が相次ぎ、今年3月時点の同市場の時価総額の8割、売買額の9割近くを本土企業株が占めている。
北京による香港政治の強権支配を重ね合わすと、本土の外貨決済の大半を担う香港金融市場は習政権の意のままになって操縦できる体制が確立された。
グラフに戻る。
3つの折れ線では、前述の対外総負債の増加額と、外貨準備、さらに外準を除く対外総資産の増減額の対比をみることができる。
外準は人民元を発行する際の担保同然で動かしにくく、増減の動きはわずかだ。
一方の外準を除く対外総資産の増加には、外国の資源や不動産の買収ばかりでなく、嶄型ワクチン提供や一帯一路参加国へのインフラ投資など「経済協力」を通じた対外借款の増加が反映され、20年の増加額は7488億ドル。
しかし1兆ドルあまりに達する対外総負債の増加を大きく下回る。
一口で言えば、習政権は対外借金で対外進出攻勢をかけていることになる。
その背景にあるのが日米欧の膨大なカネ余りとゼロ金利政策だ。
西側の投資家は超低コストで調達したドル資金を競い合って対中投資している。
もともと習政権のやり方はコロナ以前から、あこぎな金融業者のようでもある。
米独の対外援助分析シンクタンクの専門家たちが今年3月末に発表した「中国の貸し出し方法」と題する報告書はその実態を明らかにした。
発展途上国向けの中国政府と国有銀行による融資の大半は中国にとって有利な返済条件となる「秘密条項」や、中国当局が自称する「経済協力」とはかけ離れた高金利を押し付けている。
途上国の債務返済を猶予する西側の「パリクラブ」ルール適用も拒否し、相手国が債務不履行になると、投資資産を差し押さえる。
「債務のわな」への道である。
こうした習政権の粗暴な対外政策を支えるのは、対外負債追加に応じる西側の強欲金融資本だ。
ニューヨーク、ロンドン、東京の市場参加者は、香港が全体主義者に支配されようと、新疆ウイグル自治区ですさまじい人権侵害が起ころうと、我関せずの態度を決め込む。台湾有事勃発でもその恐れ十分ありだ。
中国脅威抑止を果たすためには、日米欧の政治リーダーたちが金融に介入するしかないはずだ。


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