以下は前章の続きである。
朝鮮半島の非核化
では、アメリカが北朝鮮の言う「朝鮮半島の非核化」という要求を呑むかどうか。
トランプ大統領は米軍の海外展開について、経営者的な視点からできるだけやめたがっているように見える。
米韓合同軍事演習も、トランプ大統領は安倍首相に「本当にやらなければいけないのか。金がかかるんだよな」と聞いてきたそうです(笑)。
安倍首相は「いや、北への圧力になるからやらなければダメです」と。
だから、在韓米軍の撤退については、トランプ大統領は大歓迎でしょうし、文在寅大統領だって、それを望んでいます。
米北韓の三国の利害が一致していますから、その流れになる可能性は十分あり得るのです。
もちろん、米朝首脳会談が決裂に終わる可能性も考えられます。
今まで、北朝鮮はさんざんアメリカをはじめ世界を騙し続けてきました。
国が困窮していると訴え、支援を受け、その援助によって核開発を進めてきた。
そのような北朝鮮に対して、トランプ政権は「我々は過去の二の舞はしない」という趣旨のことを何度も言明しています。
この発言は非常に画期的なことだと思います。
クリントン政権時代、オルブライト国務長官は、2000年、北朝鮮を訪問しましたが、相手の巧みな策略に騙され失敗に終わった過去があります。
ただ、この場合は、国務長官という一大臣にすぎませんでした。
ところが、今回はアメリカのトップが直接、北朝鮮のトップに会う。これで騙されたとなったら、即、軍事行動でしょう。
安倍首相も、文在寅大統領に「もし米朝首脳会談が決裂したら、どのような事態が発生するかわからない」と伝えているそうです。
米朝首脳会談が成功裏に終わり、朝鮮半島の非核化か進んだとしたら、どうなるか。
日本の負担が新たに増える可能性もある。
北朝鮮からすると、まとまったお金を引き出すことができるのは日本だけだと考えている。
日朝国交正常化の暁には、小泉政権時代、外務省の田中均アジア大洋州局長(当時)の密約(2002年、日朝国交正常化交渉の際、北朝鮮に1兆円の支払いの密約があったと言われる)もあり、おそらく1兆円規模の資金援助がされると目されています。
今、北朝鮮は反日活動を活発に続けていますが、いざとなったら、日本との協調路線を選ぶことも考えられる。
東アジアの安全保障環境が劇的に変化する可能性がある中、日本は大きな岐路を迎えつつあります。
戦術核兵器を持つか、軍事力を増強するなど、新たな選択肢が生まれることにもなるでしょう。
私が新聞記者になって30年近くになりますが、これまでの外交の中でもっとも重要な局面に差し掛かっている。
多重構造的であり、外交ゲームが活発に行われ、なおかつ、戦争が勃発する可能性も秘めている、
非常にダイナミックな状況になっているのです。
この稿続く。