たいようとともに

心臓病をもってうまれたわが子の成長日記
~左心低形成症候群と生きる~

胎児診断

2006-02-16 00:05:40 | 心臓病・治療関連
以前にも書きましたが、たいようの左心低形成症候群は妊娠8ヶ月時に定期的に検診をうけていた地元の病院での超音波胎児診断にて発見されました。
 
早期に発見していただけたおかげで、症例数の多い福岡市立こども病院の紹介を受け、遠く離れた福岡県での出産・手術などの準備がスムーズにできました。
そして多くの皆さんの応援をうけ、難手術も無事乗り越えて現在は自宅での療養ができるほどです。
 
たくさんの人に支えられてきましたが、まずは出産前の胎児診断が始まりでした。
これがなければ今の息子も、私達もなかったと思います。発見してくださった先生には言葉で言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。
 
しかし、この胎児診断についてはまだ課題もあるようです。
神奈川県立こども医療センター新生児科 川滝 元良医師が述べていることを整理してみました。
「著書 心臓病児者の幸せのために:全国心臓病の子どもを守る会編 より」
 
先天性心疾患の胎児診断の歴史はわずか20年程度しかありません。新しい医療分野のひとつです。
残念ながら胎児診断によって先天性心疾患の治療成績が向上しているわけではなく、胎児診断されるのがあまりにも重症な心疾患だったり、重症な心外疾患や染色体異常を合併しているために、むしろ胎児診断症例のほうが予後不良ともいえるようです。
 
左心低形成症候群では出生後すぐ治療を開始しなければ、身体に供給されていた血液が停止するため多臓器不全をきたし死に至るか手術ができたとしても重篤な神経学的後遺症をのこしてしまいます。胎児診断ができれば出生直後から治療を開始し、手術の成功率だけでなく、後遺症を減らし長期予後を改善するのに有効と報告されています。
 
また胎児診断は医療面とは別に家族にとっても胎児のこと、病気のことをゆっくり考える時間を与えるという大きなメリットがあります。
 
胎児診断されていない場合、普通に生まれてから突然赤ちゃんの状態が悪くなり、赤ちゃんだけ別の病院に搬送されお母さんは赤ちゃんと過ごすことも出来ず、お父さんは二つの病院をあわただしく行き来しなければならないという家族にとっては厳しい時間をすごすことになります。
一方、胎児診断をされた場合、両親そろって病気の説明を聞き、その後はインターネットや書物で調べることも出来ます。深い悲観と不安がおそいますが、時間とともに病気に立ち向かう気持ちになっていきます
 
そういう点から、胎児診断の最大の利点は家族にやさしい医療が可能になることといえます。
 
産科医の課題としては重症心疾患の胎児診断率をさらに向上させることで、診断を確定する体制を全国規模で作り上げること。
 
妊婦さんとその家族の課題としては、胎児診断の意味を正しく理解し、産科医に胎児の顔や性別の診断だけを求めるのではなく、本当に胎児にとって役立つ病気のスクリーニングを求めること。
 
社会や行政の課題は、胎児医療の重要性を理解し、支援することです。どんなに正確に診断し、長い時間をかけてご家族にお話しても診療報酬はまったく算定されておりません。すべてが無料報酬です。
このままでは日本において胎児診断の普及と診断レベルの向上を望むことは無理だと思います。
1日も早く胎児診断が日本の中で認められ、支援されるように社会全体として支援してすべきです。
 
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 
胎児診断により救われた家族として、まだまだ課題の残る胎児診断について多くの方に知っていただきたいと思うとともに、診断レベルが向上し今後同じように生まれてくるこどもたちが少しでも多く救命されるよう願っています。