映画と自然主義 労働者は奴隷ではない.生産者でない者は、全て泥棒と思え

自身の、先入観に囚われてはならない
社会の、既成概念に囚われてはならない
周りの言うことに、惑わされてはならない

山椒大夫 (溝口健二)

2013年01月18日 02時21分02秒 | 溝口健二

『山椒大夫』
公開 1954年3月31日 (124分)

監督  溝口健二
製作  永田雅一
企画  辻久一
原作  森鴎外
脚本  八尋不二
    依田義賢
撮影  宮川一夫
美術  伊藤憙朔
衣裳  吉実シマ
編集  宮田味津三
音楽  早坂文雄
助監督 田中徳三


出演
田中絹代  玉木
香川京子  安寿
花柳喜章  厨子王
進藤英太郎 山椒大夫
河野秋武  太郎
菅井一郎  仁王
見明凡太郎 吉次
浪花千栄子 姥竹
毛利菊江  巫女
清水将夫  平正氏
三津田健  藤原師実
小柴幹治  内蔵介工藤
香川良介  曇猛律師
橘公子   波路
相馬幸子  萱野
小園蓉子  小萩
金剛麗子 汐乃
荒木忍   左太夫
大美輝子  遊女中君
南部彰三  平正末
榎並啓子  小女時代の安寿
加藤雅彦  少年時代の厨子王


これは、人が人としての目覚めを持たない、平安朝末期を背景に生まれた物語である
それから数百年、庶民の間に語り伝えられ、今日もなお 人の世の、嘆きの限りをこめた説話として知られている
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映画は、この字幕ではじまります.

厨子王は山椒大夫を捕らえ丹後の国から追放し、そして自ら職を辞しました.
厨子王の後に悪い守護(権力者)がやってきたら、また元に戻るだけ.
これでは、絶対に良い世の中にはなりません.

この話は、人が人としての目覚めを持たない時代の話であり、つまり、人が人としての目覚めを持たなければ、世の中は良くならないと言っている.
もっと分かりやすく言えば、正しい人が権力を握ったら世の中が良くなるかというと、絶対にそんなことはあり得ない.権力に頼るのではなく国民の一人一人が、良い世の中をつくる努力をしなければ、世の中は良くならない.

権力とは、どの様なものなのか?
厨子王の父親は、自分の正しい道を、農民を救う政策を行おうとしたら、権力を剥奪され追放された.彼は自分の権力が剥奪されるのを承知の上で、農民を救おうとしたのだが.....
山椒大夫は、奴隷を使って金を稼ぎ、その金を朝廷、すなわち、より強い権力を持った者に貢いで(賄賂)、自分の権力の座を守ろうとした.
まとめれば、
権力とは、正しい者が正しいことを行おうとすると、剥奪される.
権力とは、悪人が悪事を行う為に、必要とするものである.
つまり、権力によって良い世の中にすることは、絶対に出来ない.

権力が親から子へと受け継がれる世襲制度が無くなることが、身分の差が無く皆が等しく平等の世の中になること、すなわち、人々を(奴隷)支配する権力が無くなる世の中への第一歩.
厨子王の権力は、関白という権力者から与えられたものであり、かつ、親から受け継いだものであった.
『私が職を辞することは、私と同じ苦労をしてきた人々の願いである』、厨子王はこう言い残して去っていった.


太平洋戦争において、戦死するときに『天皇陛下万歳』を叫んだかどうかは別として、日本兵は事ある毎に『天皇陛下万歳』と叫んでいたのは間違いないことです.
太平洋戦争で鉄砲の弾に当たって戦死した人は、ほんのわずか.餓死、および栄養失調を起因とする病死が半数以上.それから輸送船の沈没.
特攻隊というと、飛行機による特攻を思い浮かべるでしょうが、それだけではない.
ソ連が参戦して国境を越えてきたとき、850人の兵士が10Kgの爆薬を背負って敵戦車めがけて突撃を命じられ、実際に750名が突撃しました.
偵察を命じられ丘の上から見ていた人の話では、人間の体がバラバラに吹き飛ぶが、戦車はびくともせず進撃していった.

日本は東洋長久平和の為に戦争を行いました.つまり、天皇=権力者が言うことを正しいと信じ、良い世の中にするために戦争を行った、その現実は映画に描かれた奴隷たちよりも、もっと悲惨であった.


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