映画と自然主義 労働者は奴隷ではない.生産者でない者は、全て泥棒と思え

自身の、先入観に囚われてはならない
社会の、既成概念に囚われてはならない
周りの言うことに、惑わされてはならない

奥様は魔女 - I MARRIED A WITCH - (ルネ・クレール)

2019年11月04日 04時38分31秒 | ルネ・クレール
奥様は魔女 - I MARRIED A WITCH - (1942年 77分 アメリカ)

監督  ルネ・クレール Rene Clair
製作  ルネ・クレール
原作  ソーン・スミス
脚本  ロバート・ピロッシュ
    マルク・コヌリィ
撮影  テッド・テズラフ
特殊効果 ゴードン・ジェニングス
音楽  ロイ・ウェッブ

出演  フレデリック・マーチ
    ヴェロニカ・レイク
    ロバート・ベンチリー
    スーザン・ヘイワード
    セシル・ケラウェイ
    エリザベス・パターソン
    モンテ・ブルー


相手を好きにさせるつもりが、自分が好きになってしまった.















そして誰もいなくなった - AND THEN THERE WERE NONE - (ルネ・クレール)

2019年11月04日 04時15分12秒 | ルネ・クレール
そして誰もいなくなった - AND THEN THERE WERE NONE - (1945年 97分 アメリカ)

監督  ルネ・クレール Rene Clair
原作  アガサ・クリスティー
脚本  ルネ・クレール
    ダドリー・ニコルズ
撮影  ルシアン・アンドリオ
音楽  チャールズ・プレヴィン

出演  バリー・フィッツジェラルド
    ウォルター・ヒューストン
    ルイス・ヘイワード
    ローランド・ヤング
    ジューン・デュプレ
    ミシャ・オウア
    C・オーブリー・スミス
    リチャード・ヘイドン
    ジュディス・アンダーソン


死んだと思っていた人間が生きていた.


最後の億萬長者 - LE DERNIER MILLIARDAIRE - ( ルネ・クレール 1934年 92分 フランス)

2013年02月14日 13時34分06秒 | ルネ・クレール
最後の億萬長者 - LE DERNIER MILLIARDAIRE - (1934年 92分 フランス)

監督  ルネ・クレール
脚本  ルネ・クレール
撮影  ルドルフ・マテ
    ルイ・ネエ
音楽  モーリス・ジョーベール

出演  マックス・デアリー
    ルネ・サン=シール
    マルト・メロー
    レイモン・エイムス
    レイモン・コルディ




義務と権利

ネクタイのない召使.ネクタイを締めろと言ったら、給料を払ってくれと言った.
電話交換手は、給料を貰えなくて、宮殿への電話を切ってしまった.
警官も給料を貰えないので、宮殿を取り巻くデモ隊に加わっている.
繁栄の象徴の物貰いも、お金をくれと言い、貰えなかったのでピストルを撃って抗議した.
国民には、仕事をする義務と同時に、幸せに暮らす権利があるのだけれど.

祖国の財政難を救うお金と引き換えに、女王の孫娘との結婚を要求した富豪のバンコ.出資を義務、結婚を権利と言ってよいのかどうなのか?.
出資と引き換えに、行政長官の地位を得たバンコ.これは義務と権利の関係と言えるように思える.けれども、頭を打っておかしくなったバンコは、愚劣な法律を作っては、権力による暴政を行ったのだった.

話を戻して、バンコの出資の話がなかなか進まなくて、国家の破産を覚悟した女王は、「自分の義務は承知です」と言って、退位を宣言しようとした.「お前の父は王にはなれず、母は王紀にはなれませぬ」、それを聞いた、孫娘は大喜びをしたのだけれど.
そして最後は、孫娘に代わって国家の犠牲になる覚悟をして、破産したバンコと結婚してしまった女王.バンコは、二人の結婚を知らせる挨拶をするのは、女王の義務だと言い、そして、私には年金を下さいと言ったのだった.

国民には、国家に対して、義務と権利が存在する.けれども、国家の行政を司る者には、国民に奉仕する義務だけが存在し、権利は存在しない.

孫娘は、王家の義務として、祖母と同じ歳のバンコと結婚させられそうになったけれど、一人の人間としての権利、自由な恋愛を求めて、好きな男と離れ島へ逃げていった.彼女は王女になるつもりは全くなかった.最後の億万長者と言うより、最後の王様と言う結末になっているのではないのでしょうか?.












夜ごとの美女 - LES BELLES DU NUIT - (ルネ・クレール 1952年 87分 フランス)

2013年02月12日 23時57分40秒 | ルネ・クレール
夜ごとの美女 - LES BELLES DU NUIT - (1952年 87分 フランス)

監督  ルネ・クレール
脚本  ルネ・クレール
撮影  アルマン・ティラール
音楽  ジョルジュ・オーリック

出演  ジェラール・フィリップ
    マルティーヌ・キャロル
    ジーナ・ロロブリジーダ
    マガリ・ヴァンドイユ
    マリリン・ビュフェル
    レイモン・コルディ


- 生きる優しさ -






自動車のエンジン音、クラクション、道路工事の騒音、音楽の授業では生徒が騒ぎ、飛行機が爆音を響かせる.
音楽家のクロードにとって、生きるに耐えられない環境.それに加えて、みんなが彼をバカにしてからかい、おまけに借金のかたにピアノを取り上げるという.彼が生きるには辛いことばかりの現実でした.
現実から逃れて、夢の世界に、過去の時代に、美しい時代を求めたクロードだったのですが、けれどもどの時代にさかのぼってみても、恋愛がこじれると、決闘、銃殺、おまけに断頭台と、人殺しの時代ばかりで、どこにも美しい時代はありませんでした.





けれども、一つだけ、美しい想い出を残す時代があったのです.
それは、ルイ16世の時代、貴族の娘と音楽家の恋.身分の違いから二人は引き裂かれてしまうのですが、牢屋の格子を隔てて二人は語り合う.

- フランス革命 -






僕のせいで
 いいのよ.こうして会えたんですもの
  僕が待ち望んでいた革命が、命取りになるとは
   あなたは言ったわ.喜んで犠牲になると
    幸せな世を築くために.でもまだ遠い先の話だ
    どんな世の中かしら
   20世紀を生きる子孫は、平和を享受するだろう
  そんな時代に生まれたい
 身分の差はなくなっているだろう
父は貧しい職人.私も一緒に働くの
 僕は音楽を教える
  同じ村に住み
   僕らは隣同士
    毎朝、窓の下を通るあなた
   そしてある晩、道端で出会う
  あなたは言う
 愛してる
その言葉を待っていたと、私は答えるわ
20世紀には、僕らの幸福を阻むものはない
 夢ね
 夢だ
  さようなら
   また会いましょう.別の世界で










- アフリカ出兵 -
フランスのアフリカ出兵、戦争、そして植民地支配は、アフリカの人々にとって悪夢の始まりだった.




愛に夢を膨らませたお姫様.










けれども将校の方は、単なる遊び心、結婚する気はさらさら無かった







- (フランス革命の時の夢がかなった) 現代 -
ルイ16世の時代を良い時代だったと言った老軍人は、「革命のせいで、生きる優しさを失ってしまった」と言って嘆きました.彼の言葉のように、アルジェリアへの侵略戦争だけでなく、ナポレオンはヨーロッパ中で戦争を行いました.革命後、国民が義勇軍として自ら戦争に加わるようになったのですが、戦争の時代は、生きる優しさに程遠い時代と言わなければなりません.
中尉でしたっけ、将校がアルジェリアのお姫様を口説きながら、結婚しろと言われると嫌だと言って逃げ出した.アルジェリアに対する戦争を悪い行為だと描いていると言えます.
けれども、そうした時代を経て20世紀になり、この映画の撮られた頃になると、身分の差はなくなり、誰でも自由に恋愛が出来る時代になったのです.
過去の時代に、将来に向かって抱いた夢が、現実になった.自由で平等の時代が到来した.男女の恋愛にとっては、生きるのに優しい時代になったのですが.けれども、音楽家のクロードにとって、現在が生きるのに優しい時代と言えるのか?.
過去の夢が現実になった現在において、恋愛だけに限ることなく全ての面で、生きる優しさを、夢ではなく、現実にして行かなければならないはず.










2016/04/03
- 生きる優しさ -
音楽家になる夢が適ったとき、同時にもう一つ適った夢がある.それは、親が反対していたけれど、その親の考えがころっと変わって、隣の娘と結婚できることになったこと.
こう考えると、もう一つ適った夢がある.それは、フランス革命の時適わなかった夢、身分の差が無く、誰もが自由に恋愛し結婚できる時代が来ること.

若い女の子が、きゃあきゃあ騒ぎながら、アフリカへ出兵する兵士を見送った.けれどもそれは、アフリカの人達にとって、どの様な出来事だったのか.
ここが、ルネ・クレールの見事なところ.あの将校は、アフリカのお姫様と結婚できる事になった.結婚しろと言われた途端、自分は結婚する気はないと逃げ出した.
アフリカのお姫様にとって、フランスの将校との恋愛は悪夢だった.フランスのアフリカ出兵は、アフリカの人達にとって悪夢だったのです.
さて、話を戻して.
かつて、自由を求めて戦ったフランス革命.その時抱いた夢が、今では適う時代になった.今また、かつてフランス革命においてフランス人が求めたと同じように、アフリカの人々が自由を求めて、独立運動を行っている.
フランス人である自分達が、アフリカの人々の夢を適えてあげるのは当然のことのではないのか.....

沈黙は金 - LE SILENCE EST D'OR - (ルネ・クレール 1946年 99分 フランス)

2013年02月11日 14時32分00秒 | ルネ・クレール
沈黙は金 - LE SILENCE EST D'OR - (1946年 99分 フランス)

監督  ルネ・クレール
原作  ルネ・クレール
脚本  ルネ・クレール
撮影  アルマン・ティラール
音楽  ジョルジュ・ヴァン・パリス

出演  モーリス・シュヴァリエ
    フランソワ・ペリエ
    ダニー・ロバン
    マルセル・デリアン
    レイモン・コルディ
    マックス・ダルバン


沈黙は金、雄弁は銀

映画館の前にて
『忠告を一つ.喜劇よりも悲劇の方が大衆受けする』


パレードにて
『不思議なご縁ね』
『下心はありませんよ』、腰に手を回しておいて何を言うの、じゃなくて、下心がなくちゃつまらない.と、言う映画の始まりみたいなのですが?.

エミールとマドレーヌの母親との恋愛.悲恋の想い出の女性の結婚相手のセレスタンであっても、エミールは彼と友情で結ばれていました.
セレスタンが巡業にでてしまい、やむを得ず、友情からマドレーヌの親代わりを引き受けたエミールだったのですが、その親心のもたらしたものは、マドレーヌにとっては『誰からも愛されない』寂しさだけでした.親心、下心がない心だけでは、人生はつまらない.あるいは、下心がないと、恋愛は成り立たないと言うべきなのでしょうか?.
そして、マドレーヌがなぜ泣くのか、エミールは彼女の気持ちを聞き出す内に、マドレーヌの気持ちを知るに連れて、彼の親代わりの心が、恋心に変わって行ったのでした.

楽屋で手を握り会って挨拶したマドレーヌとジャックの二人は、馬車の上で始めて出会ったように巡り合いました.エミールはマドレーヌを騙したのではないけれど、嘘の言葉で女性を口説く手ほどきをしたジャックが、彼に言われたように、マドレーヌを嘘の言葉で口説き落としてしまい、誰が正しいのか分らない、どうしたら良いのか分らない、困った出来事になってしまいました.

マドレーヌの父親のセレスタンは、『巡業は大成功、巡業は大成功、今度、新しい歌で一山当てる』と、仕事に夢中で、そして、若い女との結婚に夢中になっていました.仕事に夢中、若い女に夢中になって、自分の娘のことは他人任せで、何も考えない親でした.
エミールは、セレスタンのその様子を見て、『困ったやつだ』と、言ったのですが.
自分のことしか考えず、娘の気持ちを考えないので、困ったやつだと言ったのですが、この時エミール自身も、マドレーヌの気持ちを考えない人間であったことに、気がついたのでしょう.

雄弁は銀
相手の気持ちを考えない.自分の感情だけで、雄弁を奮うこと.雄弁によって自分の感情を掻き立てること.

沈黙は金
相手の気持ちを考えた上で、黙って行動をすること.

自分の感情だけに振り回されると、悲劇になる.
相手の気持ちを考えて行動すれば、喜劇になる.
エミールは、若い二人の気持ちを考えて、悲劇に終わる映画を、喜劇で終わる映画に変えました.



















下心のない男女の感情はあり得ない、と言うべきなのでしょうか.そして、友情も、親心も、恋愛の感情も、一人の人間の心の中で区別のつかない心なのだと思えます.
『男だって同じよ.女を甘い言葉でだますだけ』
マドレーヌの言ったように、確かにそうかもしれないけれど.
けれども、下心も、友情も、親心も、恋愛も、相手の気持ちを考えるときに、全て正しい心になり、相手の気持ちを考えなければ、全て間違った心になってしまう、と言うことではないでしょうか?