映画と自然主義 労働者は奴隷ではない.生産者でない者は、全て泥棒と思え

自身の、先入観に囚われてはならない
社会の、既成概念に囚われてはならない
周りの言うことに、惑わされてはならない

『必勝歌』 1945年2月 (溝口健二、田坂具隆、清水宏、マキノ正博、大曽根辰夫、高木孝一、市川哲夫)

2019年03月12日 20時07分52秒 | 溝口健二
『必勝歌』 1945年2月 117分

演出  溝口健二、田坂具隆、清水宏、マキノ正博、大曽根辰夫、高木孝一、市川哲夫

配役
小隊長..........佐野周二
父親............大矢市次郎
伜三平..........島田照夫
母親............沢村貞
大川老人........小杉勇
工員川西........三井秀男
同 中村........斎藤達雄
陸軍中尉........高田浩吉
雄一少年........沢村アキヲ
その父..........河村黎吉
信江............高峰三枝子
その父..........坂本武
義姉律子........轟夕起子
子守歌をうたう母.....田中絹代
海軍中尉一野誠...上原謙
その母..........吉川満子
妹弓子..........星美千子
大河内曹長の父..荒木忍
田中中尉の老父..藤野秀夫



特攻
レイテ沖海戦 1944年10月23日~25日
必勝歌 公開 1945年2月22日
レイテ沖海戦で初めて陸海軍とも組織的に特攻が行われました.それを受けて製作された映画だと思われます.

雪国
一生懸命家の手伝いをしている子供に、『お前は身体が弱いから薬を飲んで、明日の仕事に差し支えないように早く休め』
と親が勧める.
雪で列車が不通になった知らせが来た.子供が出かけるというと、『お前は体が弱いから無理だ.身体を大切にしろ』と言い、父親は除雪作業に出かけて行った.

病院船の沈没
この話、敵の戦闘機が病院船を攻撃した出来事で、日本の戦争行為を正当化する話だと思ったけれど、そうではないようだ.
傷病兵が看護婦達に『自分達より貴方たちが逃げなさい』と言って、ボートに乗り移ることを拒んだ.
看護婦達は制服に着替え『自分達の職務を全うさせてください』と、傷病兵達に訴えた.

妹は招集が来た兵士のもとへ嫁ぐという.姉は戦地の夫へ手紙を書いた.
『.....まだ子供だと思っていた信江ちゃんが、しっかりした考えを持った.....それでは、お身体大切に』

仕事帰りの工員、酔っ払いのようだけど、電車に乗り合わせた人が『身体を大切にして下さい』と言って席を譲ってくれた.

航空兵になりたい子供に、『お前も立派に死んでこい』と、父親が言ったけれど、ふざけた言葉に受け取られる言い方だった.

『立派に死んでこい』が特攻ではない.
国民の皆が身体を大切にして、それぞれの職場で自分の仕事を完うすること、それが国民全てが特攻することであり、国を守ることだと、この映画ははっきりと言っている.

爆弾を積んだ飛行機で敵艦に体当たりすることが、航空兵の職務を完うすることかどうか?.
特攻という行為を真正面から捕らえて、人それぞれに考えさせるように描いた、見事な作品だと思います.

芙蓉部隊と言う、特攻を拒否した航空隊がありました.
この部隊は特攻の代わりに、多くの迎撃任務を行い、多くの敵機と交戦した結果、特攻を行った部隊よりも多くの犠牲者を出しました.
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戦争に反対する映画ではありませんが、特攻に反対する映画なのです.

隣組の組長が防火水槽の氷を割ったり、防空壕の出来具合を確かめるのは、職務を完うする姿.
学徒動員の子供が、軍需工場で鉢巻きを締めて、さあ頑張るぞ.女の子が工作機械を操っている.職務を完うする姿.

それに対するのは、特攻で死んだ兵士の遺族を集めた宴会.
『おめでとうございます』.....人が死んでめでたいわけがない.

病院船の看護婦の話は、職務を完うするということは、生きることなのか?、死ぬことなのか?、真剣に考えさせる出来事でした.
もしこの出来事が、きちんと映像で描かれていたならば、芸術作品として世界的評価を受けることが出来る作品になったと思われます.






















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