映画と自然主義 労働者は奴隷ではない.生産者でない者は、全て泥棒と思え

自身の、先入観に囚われてはならない
社会の、既成概念に囚われてはならない
周りの言うことに、惑わされてはならない

『さすらいの二人』 - IL REPORTER - (ミケランジェロ・アントニオーニ)

2014年06月29日 13時06分34秒 | ミケランジェロ・アントニオーニ
さすらいの二人 - IL REPORTER -
1974年 124分 イタリア/フランス/スペイン

監督  ミケランジェロ・アントニオーニ Michelangelo Antonioni
製作  カルロ・ポンティ
脚本  ミケランジェロ・アントニオーニ
    マーク・ペプロー
    ペーター・ワレン
撮影  ルチアーノ・トヴォリ
音楽  イヴァン・ヴァンドール

出演
    ジャック・ニコルソン
    マリア・シュナイダー
    イアン・ヘンドリー
    ジェニー・ラナカー


取材に同行した妻
大統領に取材後、車の中での会話
「不満なんだろ?」
「ええ、事実を知りながら、白々しい会話ね.大統領に言えば?」
「嘘つきと?」
「ええ」
「分ってても規制がある」
「守る必要ないわ」
「じゃ、なぜ来た?」

妻の言うように、相手が嘘を言っているのが分っていながら聞いているのは、報道記者としてあるまじき行為に思えたけれど、けれども、嘘つきと批判しても、そこから真実が見つかるわけでもなさそうに思える.
ロックは、大統領が嘘を言っているのが分っていたので、その嘘を暴くために、反政府組織のゲリラを取材することにした.それが映画の始まりであり、彼は必死にゲリラの姿を追い求めたのだけれど、
「ゲリラは何人いる?」「行けば分る」
「どんな武器がある?」「行けば分る」
やっとたどり着いた案内役の男の言葉を信じて、岩山を4、5時間歩いた結果は、山の上の岩陰から数人のゲリラの姿を眺めるだけで、取材することは出来なかった.

帰り道、車は砂漠に埋まって動かなくなる.何もかもうまく行かない.ふらふらになって歩いてホテルに帰り着き、シャワーを浴びようと思っても石鹸もなかった.
ホテルの隣の部屋の男が死んでいた.自分と容姿が良くにている.何もかも嫌になったロックは、自分の全ての過去を捨て、死んだ男と入れ替わることにしたのだが、それは死んだ男の現在を引き継ぐことでもあった.そして、その男は皮肉にも自分が報道記者として追い求めていた、反政府ゲリラに武器を売り渡していた人物であったため、結局彼は、自分の過去を捨て去ることは、出来なかったようだ.

夫の死に疑問を抱いた妻と、彼の仕事の依頼人であるテレビ局のディレクターは、彼を必死に追跡してきた.同時に、武器密売人に成り代わった彼を抹殺しようと、政府が差し向けた暗殺者も追ってきた.彼は、捨て去ろうとした過去からも、現在からも追われていたのか?

建築を学ぶ女の子
河原にて
「なぜ付いてくる?」と、つっけんどんに言われた、彼女は腹を立てたのでしょう、
「諦めるのは嫌い、頑張って」と言い残し、すたすた歩いて行く.
「何をだ?」と聞いた、ロックだったのだが.

ホテルのレストランにて
妻が遺品を受け取りに行った時、自分がテレビ局を通じてロバートソンを捜していることを話してしまったため、政府の差し向けた暗殺者は妻の後を追うようにして、ロックを追ってくることになった.
レストランで食事をしていると警察がやってきた.白い車を捜しているという.「捜しているのは車か、乗っている者か?」、半ば強引に女の子が警察へ出向いた.
「ロバートソンを捜しているわ.レーチェル・ロックと言う女性が.彼の身が危険ですって」
「どんな危険だ?」
反政府組織の人間は、「政府の妨害により身に危険が及ぶおそれがある.その時は手助けをする」と言っていたのだけど、ロックには理解できなかったのだろうか?.
そして、アルメリアのホテルで、ロックは妻と鉢合わせをする.電話をしていた妻も逃げ出すロックに気がついて、警察に頼んでロックを追ってくるのだが、ロックは必死に逃げ回るだけだった.
妻は自分が死んだと思っているはずなので、顔を合わせたくないのは分るが、自分から頼んで助けてもらった女の子に対して、一人で去って行こうとした時、追いかけて引き留めた女の子に対して、なぜ彼は、追ってくるのは妻だと話すことが出来なかったのか?.

車が故障して、バス停にて
「聞いて、逃げ回るのは良くないわ.待ち合わせに行って」
「ほかの場所と同じだ、誰も来ない」
「ロバートソンは何かを信じて、会う約束をしたのよ.あなたはそれを捜している」
「彼は死んだ」
「あなたは生きている.二人で行くのよ」

結局は三日後に待ち合わせて、海の向こうで落ち合うことにした二人だったが、彼女は反政府組織の者との待ち合わせのホテルで、ロックを待っていた.
「(窓の外に)何が見える」
「少年とおばあさん、どっちに行くかもめてるわ」
「来るなんて」
彼はベットに寝そべり、窓の外を眺める女の子に聞く.
「今度は何が見える?」
「男が肩を掻いてるわ」
「子供が石と砂を投げてるわ」
見たままを、ありのままに答える彼女.

やがて、約束通り一人で先に行くように言われ、彼女はどうしようか迷いながらも部屋を出る.そして入れ替わるようにやってきた暗殺者に、彼は殺された.

警察と妻も、すぐにやってきた.
「ロバートソン氏は?」
「部屋にいます」
「案内しろ」
「奥さんが隣の部屋に」

「知ってる人か?」と聞かれ、妻は幾年も連れ添ってきた相手のはずなのに、「知らない」と答えた.それに対して、旅の偶然の出会いに過ぎない女の子は「知っている」と答えた.

本当の妻は、妻であることを隠し、知らない人ですと、嘘の答えをした.
偽物の妻、嘘の妻の女の子は、知ってる人ですと、本当のことを答えた.

夫は、死んだ武器密売人の男に成り済ましていた.そして、政府の派遣した暗殺者に殺された.この時、妻には、全てが明瞭に分っていたはずである.妻が本当のことを言いさえすれば、全てが明かになったのだが.

女の子は、後からロックがやって来るはずのホテルで、自分が妻である言って部屋を取り待っていた.女の子が妻だと嘘を言わず、単に知り合いの男が来ると言って部屋をとっていたならば、どうであっただろうか?.
女の子が妻だと言ったので、本当の妻は、知らない人だと言ったのではないのか?.

妻は、テレビ局のディレクターが、夫の追悼番組をやると言ったときは、興味が無いというよりは、並の記者よと夫を軽蔑していて、そんな番組は見たくもない、なぜやるのといった雰囲気だった.突然の出来事なので、初めはなんとなく夫の死に疑問を抱いたに過ぎなかったけれど、けれども、遺品を受け取りに大使館に出掛けたりしている内に、疑問は次第に深まっていったのであろう.自らテレビ局に出掛けて、夫が残したフィルムを見るようになっていた.訳の分らない祈祷師のインタビュー、ショッキングな銃殺のシーン、それらを見ている内に、記者としての夫への彼女の評価は変化していっていたのかもしれない.
妻は、初めはなんとなく夫の死に疑問を抱いたに過ぎなかったが、遺品のテープに残された二人の男の会話を聞きながら、写真の張り替えられたパスポートを見て、夫が生きているのではないかと、かなりの確信を持って追ってきたのであろう.危険を知らせるために必死に追ってきたはずであり、真実を伝えるために追ってきたと言ってもよいはずである.けれども死んでいる夫を見たときには、一度は死んだと思った人間が、本当に死んでいたに過ぎなかったのだろうか?.
妻は浮気相手と一緒になりたかったから、夫が居なくなってくれた方が都合がよかったことでもあり、自分が妻だという女の子がそこにいるのに、今更、自分が妻だと言って、言い争うような気にはなれなかったであろう.

嘘が嘘を呼び、何も分からなくなってしまった.女の子にしてみればロックのことを思うが故の、他愛のない嘘に過ぎなかったのだが、彼女がそんな嘘をつくことになったのは、ロックが事実をありのままに彼女に話さなかったためである.追ってくるのが妻だとロックが話していれば、女の子は逃げずに妻に会うように勧めたはずであり、こんなことにはならなかったと言える.

別れたいと思っていた妻には全てが分り、妻になってもよい、あるいは妻になりたいと思っていたのであろう、女の子にはなにも分からない結果になってしまった.
真実を追い求めるには、単に、事実をありのままに伝えること、それが一番大切である.

「何をするにしても、自分は自分だ」
「何をするかに依るわ」
それなりに才能を持った人間には、自分にふさわしい生き方がある.
「頑張ってね」と、女の子は言った.
そして、「二人で行くのよ」と、探し求める相手に一緒に会いに行こうと言った.
彼女は、彼を理解する、理解しようとする、若くて可愛らしい女の子だったのだけど.

誰でも他人のことだと真実を知りたがるのに、自分のこととなると真実を話そうとしない.自分にとって都合の悪いことは誤魔化そうとする.ロックもやはりそう.記者として真実を追い求める仕事をしていたけれど、助けてもらった女の子に真実を話したとは言えない.良心の呵責からか、旅行の行き先を変更して、死んだ男が約束していたバルセロナへと、やってきた彼ではあったのだが、誤解されて、武器密売に関わる大金を受け取ったことは話さなかった.追ってくるのが妻だと知ってからも、話そうとはしなかった.
話しもしたくない妻と、離婚だのなんのと煩わしい話をしなくても別れられる、そう思って、他人に成り代わった彼であったろうが、自分が逃れようとした煩わしさに追い回されることになってしまった.女の子が言ったように、逃げ回るのはよくない、逃げようとしなければこんなことにはならなかったはずである.

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祈祷師
「昨日聞いた話によると、あなたは祈祷師として育てられたとか
  フランスやユーゴで数年過ごした経歴は、祈祷師として異例だ
   部族習慣への考え方が、変わりましたか?
    土着の風俗習慣は、弊害だと思いませんか?」
「ロックさん、君が満足する答えを言うことは出来るが、
  君は理解できず、答えから学びもしない
   君の質問は、君自身をよく表わしている
    私の答えが、私自身を表わす以上に」
「素直に聞いただけです」
「我々が語り合えるとすれば、君が素直な心で物事を考え
  私が、その誠意を信じる時だけだ」
「その通りですが」

少し言い換えてみると、
『祈祷師というものは、土着の風俗習慣に根差したものであり、文明社会とは相容れない.文明社会で暮したことのあるあなたは、その事をどう考えるのか?』
もっと端的に言って、
『祈祷師などというものは、文明社会から見れば嘘つきに過ぎない.文明社会で暮したことがあるあなたには、よく分っていることと思うが、どうなのか?』
『お前は俺に対して嘘つきというのだから、俺が何を話してもお前は信じないはず.話して無駄だ』

聞いた方が聞いた方なら、答えた方も答えた方、どっちもどっち.それはそれとして、この祈祷師、都合の悪いことを聞かれたので、自分が答えない理由を相手のせいにして、何も答えなかったに過ぎないのではないか.お前が素直じゃないから、俺も素直になれない、と言うのなら、相手の素直な心を引き出すには、先に自分が素直になるべきであるはず.
















『夜』 - LA NOTTE - (ミケランジェロ・アントニオーニ)

2014年06月08日 02時19分24秒 | ミケランジェロ・アントニオーニ
『夜』 - LA NOTTE - (1961年 122分 イタリア/フランス)

監督  ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本  ミケランジェロ・アントニオーニ
    エンニオ・フライアーノ
    トニーノ・グエッラ
撮影  ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ

出演  ジャンヌ・モロー
    マルチェロ・マストロヤンニ
    モニカ・ヴィッティ
    ベルンハルト・ヴィッキ


喧騒と静寂(孤独)、近代建築と古い建物(廃墟)

現在でも相当な高層建築、当時ならば目を見張るような高層建築の、上層階から下りてくるエレベータから、おそらくこれから建設が始まるであろう空き地、建設中のビル、そうした変化して行く街並みを映しながら映画は始まる.

開発(都市開発)
病院に着いた車の目の前に、パワーショベルが投げ出されるように倒れてきた.
開発とは、破壊なのか?、創造なのか?

病院
残された命がどれほどもないことを知った病気の人は、孤独なはず.孤独から逃れるために、誰でも良い、側に居てくれることを望むのではないでしょうか.それは、評論家の男も、隣の病室の女も同じであったと思われる.
若い頃から評論家の男は、作家の妻になった女が好きで、その事は、妻も夫も気がついていたことのようだ.彼は二人が結婚してからも、新婚家庭の甘い夜を邪魔したことを詫びていた.
好きな相手なら、なおさら側に居て欲しかったであろうけれど.その気持ちを知ればなおさらに、末期の病人を前にして、一緒にいても、気休めの言葉、嘘の言葉を並べるしかない、その辛さに耐えかねて、女は一人病室を出て、病院の建物の外で泣いていた.

出版記念のパーティ
「次作の予定は?」
「未だ何も」
「若者は、せっかちだ」
あの若い女性は、出版されたばかりの本を読み終えたかどうか?、なのに、次の作品について知りたがった.
そして、少し付け加えれば、若者は刺激的な内容、奇抜な内容、つまりは今までにない新しい内容を期待するのではないでしょうか?

若者たち
喧嘩をしている者達.必死になって殴り合っていたけど、「止めて」と止めたら、喧嘩かを止めて、そして、今度は女を追いかけてきた.
なぜ喧嘩をしていたのか、理由は分からない.そして、なぜ女を追いかけてきたのかも解らないけれど、若者とは、理由もなく何かに夢中になる.

おもちゃのロケットを打ち上げているのを、多くの者達が見物していた.
「月に行きたい?」
「別に」
夢中にはなっていたけれど、そこに夢、希望があるわけではないらしい.振り返れば、夢中になって喧嘩をしている者達にも、喧嘩をする行為に夢、希望があったとは言い難い.

古い建物、廃墟、空き地
「昔のままだな」
「今に変わるわよ」
「昔、ここを電車が...」
今は、街角にぽつんと一軒、小さなカフェがあるだけ.
けれども、残っている廃墟の建物を見ると、結構洒落た建物が並んでいる.往時はきっと賑やかな街だったのでしょう.

「迎えに来て」と言う電話を、カフェのおばさんは、仕事をしながら聞いていたらしい.
「会うならホテルにすれば?」
その辺は、空き地か廃墟の建物ばかり.男女の一時の欲望を満たすならば、ホテルに行くのが、難しい話し、回りくどい話をする必要も無く、手っ取り早い.
(「なぜここに来た?」「別に」、こんな話を、する必要はない.)

女=妻
妻は出版記念の会場を抜け出して、一人街をさまよい歩いた.彼女は、(どちらかと言えば)孤独を好む女性のようだ.
近代的な建物の側に、半分崩れ落ちた古い建物が残っていた.廃墟かと思ったら、洗濯物が乾してあることから人が住んでいて、おそらく住人であろう、少女が一人、泣いていた.捨てられ、止まったままの時計は、そこだけが取り残されて止まったままの空間を思わせる.
街角でパンにかぶりつく郵便配達、あるいは、家の中で読み物をしていた人は、自ら孤独を望んだであろう、自分を観られて迷惑そうにした.それに対して、泣いていた少女、あるいは、ヨーグルトを無心に食べていた老婆は、自ら望んだ孤独ではなく、他から与えられた孤独と言って良いのか、アヤされても、目の前を通られても、無関心だった.


家に帰っても、先に帰ったはずの妻が未だ帰っていなかった.家の中を探し回り、隣の家にも声をかけて探し、更にはベランダに出て妻が早く帰ってこないか、待ちわびる様子だった.
このような素振りから、彼は妻を愛しているように思えたのだが、けれども、入浴中の裸の妻に接するときの愛想のない様子を観ると、そうも言えないような感じ.彼は寂しがりや、つまり孤独が嫌いな男にすぎず、妻と一緒にいたいのに一緒にいても退屈していて、内心は、新しい刺激を求めている男なのが、後になって解ることになる.

ナイトクラブ
夫は興味を持って観ている素振りでいたが、後の妻の言葉によれば、『仕草も表情もわざとらしい』セクシーダンスを、夫も退屈して観ていたらしい.

富豪のパーティ
富豪の娘は、孤独が好きな女のようだ.難しい本を一人で読んでいたり、一人でゲームに夢中になっていたり.そうした孤独を邪魔するように、夫は彼女に言い寄っていった.最後には『スランプから抜け出すには君が必要だ』、とまで言ったのだけど、どこまでが本当のことなのやら、ただの口説き文句に過ぎなかったのではないか?.
富豪の娘と夫がキスをしているのを目撃した妻.それでも彼女は孤独に耐えようとしたのだが、夫は、テラスに自分を一人残して、富豪の娘のお尻を追いかけていってしまった.
やがて妻も、それまでは、あたかも孤独を好むかのごとく、男を避け続けていた彼女だったけれど、一時の欲望を満たすために、あるいは新しい刺激を求めたのか、男の誘いに乗って、降りしきる雨の中を車で一緒に出掛て行った.けれども、ふと我に返って思いとどまった.

富豪の娘と妻は、夫を、一人の男を巡って喧嘩になりかけたけれど、仲良くなりました.二人とも孤独を好きというよりも、孤独を理解する女であったので、互いの心を理解することができたと言ってよいのでしょうか.

夜を徹してのパーティ、刺激的だった夜が明けて、二人は帰ることにした.
庭を抜け、ゴルフ場へ歩く二人.
妻は別れ話を始めるが、別れるのは嫌だという.
妻がラブレターを読み始めた.若い女心を魅了する、刺激的な文章だった.夫は「誰の手紙だ?」と聞いた.作家のくせに、自分の書いたラブレターを覚えていない男だった.
彼女は、若い頃、夫の上辺だけの言葉を信じ込んで結婚してしまった.今でも、夫は自分と一緒にいたがるけれど、けれども、一緒にいても退屈ばかりしている.そして、事あれば、新しい刺激を求めたがり、若い魅力的な女性を見つければ、すぐに夢中になって口説き始める、そんな男に過ぎなかった.
その事をはっきりと理解した妻は、夫に『別れよう、あなたは私を愛していない』と言うのだが、けれども夫は『愛している、愛している』と言って、妻に抱きつき、離れようとしない.この二人、この後、別れたのかどうなのか?

富豪の言葉
『私にとって事業は芸術だ.大事なのはお金ではなく、後世に何かを残すことだ』
『未来のことなど分らんよ、一応の抱負はあるが今のことだけで手一杯だ」
「未来は不透明だ、今や事業家とて仕事に自身が持てん」
『はるか昔、若い頃は、バラ色の夢見て働いたものだ』
そして彼は、
『社の活性化には、労使間の意志疎通が欠かせない.今の社員は、社の沿革はもとより創始者の私のことも知らん』
『出版部や広報部を創設して、社員を啓蒙しようと.そこで思いついたのが社史の発行だ』

断片的な言葉なのですが、なんとなく分るはず.後世=未来に何かを残そうと思うならば、社の沿革=歴史を知らなければならない.
富岡製糸工場を残し、保存してきた方達は、工場の歴史を学んだからのはず.
決して新しい綺麗な街を作ること、都市の再開発を否定するものではありません.けれども、古いものを壊そうとするとき、その歴史を学んでからでも遅くはないはずであり、また、新しいものを作ろうとするとき、古いものの歴史を学んでからでも遅くはないはず.
ことさら許されないのは、自分の書いたラブレターを憶えていなかった作家のように、一時の欲望を満たすため、刺激を求めるために、新しいものを求めること.すぐに飽きるのは当然である.
彼は、寂しがり屋で、孤独を嫌う人間だったけれど、皆で議論を戦わせるだけでなく、自分一人(孤独)になって、冷静な気持ちで判断することも必要なはずである.
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新しい国立競技場
デザイン決定に関わった委員の人達の中に、後日迷いが出てきた人がいるらしい.奇抜なデザインに引かれ選んだのだけど、幾日かたって冷静になって考えてみると、なんとも頂けないデザインに思えてきたのではないのか?

収容人員8万人程の、世界最大の競技場らしいけれど、世界一を望むのは一時の欲望に過ぎないのではないのか.
めったにそんな人数の観客を集めることは出来ない.そのため、若者向けのコンサートを行えるように、屋根を付けたりと考えているらしいけれど、若者向けにそんな設備を作る必要があるのかどうか?.
大きな施設を作れば維持費もかかる.多くの人が直接自分の目で見て競技を楽しめるようにと言ってみても、楽しく競技を観戦できる施設の大きさは限られているはず.離れた席から観戦するより、テレビで観ていた方が楽しいのではないのか.
(お金と相談も、当然必要)

同じ建築家の設計した大規模商業施設が韓国にあり、周りと調和しない景観が問題になっているらしいけれど、なぜ選ぶ前に観に行かなかったのか疑問でなりません.選んだ人達は、映画に描かれた夫婦のように、一時の感情により、刺激的なデザインに引かれただけにしか思われないのですが、どうなのでしょう.男と女の問題ならば、別れれば解決できるけれど、建物の場合はそうは行かない.気に入らなくて嫌だ嫌だと言ったにしても、あるいは皆が新たな刺激を求めて他所へ移って行ってしまっても、建物の維持費は、いつまでも払い続けなければなりません.


https://www.youtube.com/watch?v=vrT-slcjaLk


愛のめぐりあい - PAR DELA LES NUAGES - (ミケランジェロ・アントニオーニ)

2014年05月16日 19時08分52秒 | ミケランジェロ・アントニオーニ
愛のめぐりあい - AL DI LA DELLE NUVOLE - (1995年 110分 フランス/イタリア/ドイツ)

監督  ミケランジェロ・アントニオーニ
    ヴィム・ヴェンダース
製作  フィリップ・カルカソンヌ
    ステファーヌ・チャルガディエフ
脚本  ミケランジェロ・アントニオーニ
    ヴィム・ヴェンダース
    トニーノ・グエッラ
撮影  アルフィオ・コンチーニ
    ロビー・ミューラー
音楽  ルチオ・ダルラ
    ローラン・プティガン

出演  ジョン・マルコヴィッチ
    ソフィー・マルソー
    ファニー・アルダン
    キアラ・カゼッリ
    ピーター・ウェラー
    ジャン・レノ
    イレーヌ・ジャコブ
    ヴァンサン・ペレーズ
    イネス・サストル
    キム・ロッシ=スチュアート
    マルチェロ・マストロヤンニ

淫乱な女との恋の物語




豪邸を自分の家だと言ったカルメン.10日程前に同棲していた男から手紙が来たと言い、その手紙を暗唱したが.....
けれどもその同棲相手とどうなったのか?、別れたのか、それともいつか、戻ってくる相手なのかさっぱり分らない.....
分らないと言えば、カルメンはシルヴァーノを待ち続けていたと言った、が、なぜカルメンが自分を待ち続けていたのか、シルヴァーノには解らなかった.
シルヴァーノは結局カルメンを抱かなかった.


気に入れば誰とでも一緒に暮らす女


女の犯罪




なぜ、あの女は犯罪を打ち明け、恋人がいるのに、通りすがりに過ぎない私(映画監督)と肉体関係を持ったのか?.
父親を刺し殺したと言う女.話があると言うので、その理由を話すのではと思って女の家へ行ったのだが、何も話はなく関係を持ってしまった.
結局、女がなぜ父親を殺したのか解らなかった.私はその町から逃げ出した.(彼女の前から姿を消した) なぜって、自分も訳の分からない内に殺されるかもしれないから.




魂の女


メキシコの探検隊の話から気の合った、男と若い女.この男、若い女と別れようとしても、その色香の前に肉体関係を絶ちきれなかった.
この女の話し、理解できるだろうか?.妻のある男を誘惑しながら、他の女の匂いがすると言って、男と妻との関係を問い詰めた.嫉妬深いだけで、何も分からない女だった.






私を探さないで


夫はなぜ妻が家財道具を引き払って、家をでていったのか分からない.幾年か連れ添ってきた妻の気持ちが分からない.そこへやって来た、自分の妻と同じように、夫の元から逃げ出してきた女、この女もやはり夫の気持ちが理解できなくて、逃げ出してきたみたい.
夫もこの女も、幾年も連れ添ってきた相手の気持ちが理解できなくて、生きることに索漠とした気持ちを抱いている、と言うことが、互いに理解されたので、この二人、初めて会ってすぐに、何となく気が合ってしまった.






妻に逃げられた男と、その逃げ出した妻





画家と友人


画家とその友人の女.現代は偽物流行り.その話の内容は触れずに置くとして、結局この女と言うよりこの二人、互いの気持ちを理解し合った友人のようだ.(この二人、マルチェロ・マストロヤンニとジャンヌ・モロー.こんなに優しい表情のジャンヌ・モローを観たの初めて)

聖女との恋の物語


若い男女.巡り会いをチャンスとばかり、男は女に言い寄るのだけれど、けれども彼女は明日から修道院へ行くと言う.参考までにこの二人、肉体関係はないけれど、有ろうが無かろうが、二十歳の若い娘が修道院に行くなんて、男にとって、到底理解できないことだった.





男女が互いの心を理解し合うのに、肉体関係はあっても無くても関係ない、と言うことで良いのでしょうか.もう少し付け加えれば、上辺の言葉、綺麗な言葉、お世辞とか、こんな言葉で女の子は喜ぶとか、そうした会話によって、男女の心が理解し合えるものではない.空き家同然のアパートに取り残された男と、そこへやって来た女、この二人の、ふとなんとなく気が合う心は、こんなふうに語っているのでしょう.
男と女、互いに理解を求め合うとき、必然的に体も求め合うけれど、けれども肉体関係を持ったからと言って、互いに理解し合ったと言うことはできない.もっと簡単に、肉体関係を持っても相手の気持ちは解らない、でも良いでしょうか.




この辺りに真実がありそうな.....


挿話を書き加えましょう.


この二人、夫婦なのか、恋人同士なのか、兄弟なのか、単なる友達なのかよく分からない.夫婦、あるいは兄弟ではないみたいなのだけど、この分からないを逆に捉えると、夫婦であれ、恋人同士であれ、兄弟であれ、友達であれ、互いの気持ちを理解し合う事(そう努力すること)が、何より大切なこと、と、言うことになる.










































太陽はひとりぼっち (ミケランジェロ・アントニオーニ) - イタリア/フランス -

2012年12月11日 08時03分45秒 | ミケランジェロ・アントニオーニ
太陽はひとりぼっち - イタリア/フランス 1962年12月19日 124分 -

監督   ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本   ミケランジェロ・アントニオーニ
     トニーノ・グエッラ
     エリオ・バルトリーニ
撮影   ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
音楽   ジョヴァンニ・フスコ


出演   アラン・ドロン
     モニカ・ヴィッティ
     フランシスコ・ラバル


時代的背景
1960年 フランスの核実験.以降、アルジェリアで核実験を続ける
1963年 ケニア独立.独立は、この映画が撮られてから1年後である

原題(英語訳ですが、綴りがイタリア語と似ているので、多分これで良いでしょう)
Eclipse 失墜.暗い影、日陰の部分、日の当たらない場所、人が目にしない場所、
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- 本来の姿、自然な姿 -

別れることにした、婚約者同士の男と女
男は車を捨て、木立の中を行く女を追う.
鳥の鳴き声が聞こえる.
『こんなに早く、一緒に歩いたことはなかったな』
この二人、翻訳関係の仕事をしていたらしいけれど、夜型の生活をしていたのでしょう.
日の出と共に起きて生活するのは、人間にとって本来の姿のはず.
『君を幸せにしたいんだ.どうすればいいんだ』別れたくない男は、必死に女を引き留めようとするけれど、すればするほどに取り乱して、彼本来の姿を失って行ってしまった.
(散歩中に出てきたキノコの形の家、どうも、原爆のきのこ雲を連想させるものらしい)

ケニア生まれの婦人
ケニアの美しい自然の写真を見ながら、彼女達は話をする.
彼女の家族は、ケニアで鉄砲を撃って狩りを楽しんでいたらしい.自然に生きる動物達にとっては不幸な話である.
のみならず、カバは沢山草を食べるので、時々何頭か殺すという.人間の都合によって自然を歪める行為に他ならない.
小学校に行ければ幸せな方だというケニア.大半の住民が文明とは無縁の暮らしをしているケニア.住民の多くは、単純で、幸福を追求しない生活をしているらしい.そうした彼らの生活が、幸せなのかどうなのか?、それは分らないけれど.....
原住民が民族意識に目覚め、彼らの土地で彼らが幸せを求めるとき、侵略者の白人は幸せな生活を失うことになった.侵略者の白人は、自分たちの文明によって原住民を支配し、原住民の不幸の上に、自分たちの幸せを築いて来たのである.そうした侵略者の白人がたとえ不幸になったとしても、当然の結果と言わなければならない.

逃げ出した犬
探しに行くと沢山犬が居たけれど、犬は犬同士の方が楽しいのではないのか.犬の本来の姿は犬同士の暮らしにあると思う.
芸をする犬は、犬にとって幸せな姿かどうなのか?.

飛行機
試験飛行に便乗して、ローマの上空を飛んだ彼女たち.雲の内は、氷と雪の結晶で輝いていた.文明のすばらしさと、自然の美しさ、どちらをも満喫して、彼女は幸せだった.
けれども、別のシーンでは大空を行く四機の戦闘機、飛行機雲を引きながら編隊飛行する戦闘機が映し出されるのだけど、それらは人を幸せにする文明ではなく、その反対、人を不幸にする文明に他ならない.

証券所
関係者の一人が亡くなったらしい.一分間の黙祷の時間、亡くなった人の事を本当に悲しく思った人がどれだけいたのか?.
人の死を悲しく思うのは、人の自然な感情、人の本来の姿のはずなのだが.

母親
随分前に夫は死んだのだろうか、今ではもう夫のことを思い出すことは無くて、株のお金儲けに夢中だった.亡くなった夫を、妻が時々は思い出すのが人の自然な姿だと思うけれど.

証券マンの男
彼の付き合っていた女の子は、以前は金髪だったらしい.彼女はこっちが本物だと言うのだけれど、けれども黒髪に染めた彼女を見た彼には、どちらが本来の姿なのか分らなかった.何が本当か分らなくなった彼は、彼女と別れることにした.
車を盗んだ酔っ払いは、池に落ちて死んでしまった.車は死んだ男を乗せて池から引き上げられた.彼は『痛みは少ないから直せば乗れる』と言う.『未だ8000キロしか乗っていない』、こう言いながら彼女を見て、やっと彼は気がついたらしい.死んだ人間が乗っていた車なんか、気味が悪くて乗る気になれない、こう思うのが人の自然な感情のはず.

野次馬
集まった群衆たちは、引き上げられる車を見ながら騒ぐだけで、一人の男が死んだことを悲しく思う人間は居なかったみたい.

労働者の若者
『いい男ね』と彼女は言った.汗水を流して働く姿は、人間本来の姿であるのは間違いがない.

株の暴落
大損をした男は、精神安定剤を買い求め、その薬を飲みながら木の絵を描いていた.自然は精神を静めるらしい.彼は安らぎを求めた.
『損をした人のお金は、もうけた人の所へ行くの?』と言う問いに、『そんなに単純な問題ではない』と、証券マンは答えたけれど、文明社会の仕組みは複雑らしい.その複雑な仕組みによって、皆、一度は大儲けをしたのだけれど、けれども結果的には儲けを失っただけでなく、儲ける以前に持っていたお金よりも、遥かに多額のお金を失ってしまった.

新聞記事
男は新聞を読みながらバスから降りてきた.
『競い合う核開発.束の間の平和』
文明の進歩とは、決して人々の幸せを追求する行為とは言うことが出来ない.文明の進歩によって、人々は安らぎを失ってしまった.

ちちくり合う男女
証券マンの男は、仕事の電話の受話器を全部外して、好きな女と何かしていた.好き合った男女は、文明を拒絶して、自然な行為に夢中になった.
彼は受話器を戻しながら、仕事を始めるかどうするか、考え込んで映画は終わる.
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未文明の世の中が、幸せであったのかどうかは分らない.けれども、人間は幸せを求めて文明を発展させて来たのだと思うのだけど、文明の発展と共に、人々は人としての本来の姿を失って行き、何が幸せなのか分らなくなってしまっている.
人本来の姿は、安らぎを求める心の中に、自然を求める心の中にある.もう一度、人本来の姿に戻って、皆が幸せになるにはどうしたらよいのか、考えなければならないはず.


砂丘 ( ミケランジェロ・アントニオーニ 1970年 111分 アメリカ)

2012年12月08日 10時38分27秒 | ミケランジェロ・アントニオーニ
『砂丘』 (1970年 111分 アメリカ)

監督 ミケランジェロ・アントニオーニ
製作 カルロ・ポンティ
脚本 ミケランジェロ・アントニオーニ
   トニーノ・グエッラ
   サム・シェパード
   フレッド・ガードナー
撮影 アルフィオ・コンチーニ
音楽 ピンク・フロイド

出演 マーク・フレチェット
   ダリア・ハルプリン
   ロッド・テイラー
   ポール・フィックス
   ハリソン・フォード

【瞑想】―サウ[名][自サ]目をとじて心を静め、深く考えること.▽―にふける.

瞑想の街
お金の無いときアルバイトで何かをしている女の子、彼女は瞑想をする場所を求めて砂漠の中の街を探して行ったのだった.
探し求めていた街はどうやらここのようだけど、子供の集団が『一発やらせろ』と、女の子に迫ってきた.
『言ってる意味が分っているの』と、子供たちに言い返したけど、でも相手は子供とは言え多人数、彼女は身の危険を感じたのかもしれない.瞑想の街への彼女の予想は外れて、とても彼女が瞑想できる街ではなかったようだ.
けれども、場所を確かめに入ったレストランに居合わせた老人は、店の隅の方で黙って一人飲み物を飲んでいた.何を考えているのだろうか.老人は考えるだけで、何もしなかった.そうなんだ.彼は瞑想していたのだ.
ある老人は、自分は若い頃、ボクシングのチャンピンだった、と言った.若い頃は血気盛んだったけれど、年老いた今は、一人静かに瞑想にふけるのが日課らしい.

瞑想なんてその気になれば何処でも出来る事だったらしい.けれどもこの街は彼女にしてみれば期待外れに終わった.そして、期待外れで帰途に就く彼女は、その帰り道で飛行機を盗んだ若者に、『議論よりは行動』、つまり瞑想なんて縁遠い、何も考えずに行動する若者に巡り会う事になる.

アメリカの銃社会と若者
銃を、車に置き換えて考えてみましょう.
誰でも、高性能な車に乗ると、スピードを出してみたくなる.銃を持つと、撃ってみたくなる.
誰でも、高性能な車に乗ると、運転が上手くなったように思う.銃を持つと、強くなったように思う.
そして付け加えれば、若い男女が二人で居ればSEXして当然.なぜSEXするか、そんなことは考えない.
このような若者の心理を描いているのだと、私には思えます.

「家庭を守る権利はある.相手が庭に入ってから撃て」、この言葉は、スピードを出すなら、取り締まりをやっていないところで出せよ、と、言っているのと同じではないのか.高性能な車に乗ったからと言って、スピードを出してはいけない.拳銃を持ったからと言って、撃ってはいけないのですが.少し言葉を変えて、高性能な車に乗ったからと言って、スピードを出す権利は無いはず、けれども拳銃の場合は、かなりいい加減な条件を満たせば、撃つ権利が得られるらしい.
(酷い社会である)

主人公の若者(以下、単に若者)、彼は議論よりは行動、つまり、何も考えずに、あるいは物事をよく考えずに行動する人間だった.彼は、いつも家の近くの駐車禁止の場所に車を置いていた.
(他人の迷惑を考えない、酷い人間だった)

彼はデモに参加したわけではなかった.捕まった仲間に会いに行ったけど駄目だと言われた.「おーい」と、鉄格子の扉の外から、捕まった仲間に声をかけたら、「会いたければ、会わせてやる」、彼も逮捕されてしまった.彼は、何もしていないのに逮捕された.
(警察も、酷い社会であった)

若者は拳銃を持って警官を撃ちに行った.けれども彼が撃つ前に、他の誰かが先に撃ってしまった.彼は撃たなかったのだが、テレビに自分の姿が映っていることを知り、疑いが自分にかかっていると思った彼は、飛行機を盗んで逃げることにした.彼にしてみれば、車を盗むのと同じ程度の意識で、いたって気軽に飛行機を盗んだようだ.けれども何も深く考えずに行った、あるいは行おうとした彼の行動は、ニュースのネタになる重大事件だった.やがて巡り会う、お金が無いときだけ、秘書のアルバイト兼、何かをしている女の子は、彼のことをラジオのニュースを聞いて知っていた.
砂漠の砂丘を探索して、戻ってくるとパトカーがやってき来た.女の子が何とか上手く警官と受け答えをしたけれど、その時、若者は警官を撃とうとしていた.彼は思いとどまりうちはしなかったのだが、女の子に『何をしてるの』と聞かれて、やっと自分が何をしようとしていたか気がついたらしい、同じ間違いを繰り返さないように、彼は自ら弾を全部捨ててしまった.
飛行機を返して、楽しませて貰ったお礼をしよう、若者は元の飛行場へ戻ることにした.警察から逃げれるかどうか、冒険をしたいと言った.ペンキを塗りたくった飛行機を、相手がお礼として受け取るかどうか、と言うより、この言葉には真剣味が無く、悪事に対する反省は何もない.彼らは物事を自分の都合で、おもしろおかしくしか考えることが出来なかった.
「会いたければ、会わせてやる」、と言って逮捕された経験のある若者は、警察がどの様な行動をするか予想が出来ても良さそうに思うのだけど.女の子にしても、事の重大さをまった理解していなかったのだろう.彼の言葉を女の子も了承したのだけど、その結果、飛行場に戻った若者は警官に撃ち殺された.彼は拳銃を一発も撃っていないのに、撃ち殺されることになってしまった.

彼女は車のなかで、ラジオのニュースで若者の死を知ることになった.車を止めて考え込んだのだが、なんとなく気の合う相手、おそらく好きになっていたであろう若者の死の意味を、その時は未だしっかりと理解できなかったようだ.

銃を持ったら、警官を見ると、やみくもに撃ちたくてならなかった若者.
何も考えずにSEXに夢中になる男女.(抽象的表現.砂漠の中のシーン)
お金が無くなると、秘書のアルバイト兼、何かをする女の子.

お金が無いときだけ、秘書のアルバイト兼、何かをしている女の子は瞑想をする場所を探していた.つまり、自分のしていることが良いことかどうか?、彼女なりにそれを考えようとしていたのだが.....
好きになった男が撃たれて死んでしまったことを、車のラジオで知って彼女は悲しかった.悲しい気持ちになりはしたが、けれども仕方なく、売春相手との約束の場所、フェニックスのレストランに来ていた.
相手の妻は夫が浮気をしている事に感づいていて、そのうちに尻尾を捕まえてやると話していた.彼女はアルバイト相手の妻が、自分の存在を疑っていることを知った.それだけでなく、アルバイト相手には、別な秘書もいたようだ.

彼女は自分が嫌になった.自分のしていることが嫌になったに違いない.
一人レストランを後にする女の子.
爆発のシーン、何がなんだかさっぱり解らない.解らない爆発を何度も何度も繰り返して観せた.
レストランが爆発した?.否、女の子の心が爆発したのだ.解らないものが幾度も幾度も吹っ飛んで行った.....彼女の心の中から、解らないものが飛んで行った.

彼女はお金が無くなると、深く考えることも無く売春をしていた.そのことが良いここと思わなくとも、悪いことをしている意識も無かったのだが、そうした自分で解らない心が、吹き飛んで行ったのだ.

女の子に残ったのは、好きな相手が死んでしまった事を悲しむ、素直な心だった.
人を好きになることがどういうことか深く考えれば、お金が欲しいからと気軽に身体を売ったりはしないだろう.
そして、むやみに人を銃で撃ったりもしないだろう.



お金に困ると、秘書兼何かのアルバイトをする女の子


銃を買ったら誰かを撃たなくちゃ




一発やることは、彼女にとっては、お金が無くなったときのアルバイトだった


借りたお礼を言うために戻るという


車のラジオのニュースで、彼の死を知った


約束のホテルの部屋へ行くと、自分と同じような女が出てきた


何か分らない、何か汚らしいものが、自分の中から飛び去って行く.....