大相撲

大相撲についての想い

基準

2006-09-29 14:44:12 | Weblog
部屋創設可能な親方の基準が定められた。

横綱・大関
三役二十五場所
幕内六十場所
のいずれかだそうだ。

報道によるとその理由としては、大卒親方が数年の短い現役生活で引退して部屋を興しても指導が十分にはできないので、十分に現役生活を一定レベル以上の地位で送った力士に限るというものらしい。

三点において疑問があり、反対である。
まず、大卒親方が未熟であるという点は本当にそうだろうか。確かに黒海の態度は良くないことが多い。追手風親方が黒海の脇の甘さなど技能面でもっと指導をすればよいのにと思うことはあるが、追風海や大翔大が特に問題があるとは思えないので、親方が伝統の継承や人間形成が未熟だとは思えない。境川親方は期待されながら最高位小結で引退したが、その器の大きさを慕う者は多いときく。弟子の育成も実績がある。独立したばかりの尾上親方については、里山や白石といった成長中の若手がいるし、なんといっても把瑠都がいる。把瑠都は相撲態度や土俵所作など確かにまだまだだけれど、これは親方の指導力でなく物理的に把瑠都の経験値が低いからだろう。木瀬親方や田子の浦親方は弟子はまだあまり育っていないが特に問題があるという印象はない。他方で露鵬の師匠は大鵬さんから大嶽親方だが、大横綱および超ベテラン力士だった人たちである。琴欧州や琴冠佑も似たパターンで、琴櫻から琴乃若である。ということで幕内での現役経験が指導力に直結しているわけでは決してない。むしろ、大横綱と呼ばれた人でも、具体性や実現性の改革案をぶち上げて混乱を招いたり、スーツを着て稽古に来て弟子に胸も出さなかったり、角界のイメージを悪くするようなお家騒動を自ら起こすような人もいるのに。

第二に、この基準を満たす大成功者か大ベテラン以外の力士から、名伯楽が出る可能性が限定されてしまう。竹葉山は今後自分で部屋を興して白鵬を育てたいと思ってもそれはできないということになってしまう。また、益荒雄のように志半ばで怪我によって相撲人生を必ずしも全う出来なかった力士が、第二の人生で親方としてリターンマッチをかけることができなくなってしまう。

第三に、横綱・大関という看板力士には無条件で部屋創設資格を与えるということだが、これは方向性としては異論ないものの、部屋創設資格でなくむしろ年寄名跡の優先取得などで待遇すべきではないだろうか。まず、横綱大関にまでなったら協会に残って大相撲の発展に尽力してもらうべきであり、たとえば武蔵丸や朝青龍が部屋創設の資格があってもそれ以前に名跡自体を所有できなければあまり意味がない。

ということで、なんらか親方の指導力を高めよう、無闇に部屋ばかりが増えるのを抑制しようという協会の考え方そのものは大枠では異論はないが、今回の基準は非常にデジタルに区切ってしまっているところが問題だと思う。たとえば、上記の基準に満たない親方であっても親方になってからの功績で部屋創設資格を認めてもいいのではないか。たとえば、弟子を多くスカウトした親方、関取を多く育てた親方、なんらかの形で相撲道を体現していると認められる親方など。こういう親方が部屋を持ちたいという意欲があれば、一門の総意で推薦があれば協会で審議して特に問題ないと認められれば、創設資格を与えてもいいのではないだろうか。

改名

2006-09-28 15:08:31 | Weblog
二力士の改名があった。

澤井が豪栄道に。本名のファーストネームの「豪」を四股名のラストネームに入れてしまうというのは意外と珍しいのではないか。竹内雅人⇒雅山みたいなものか。埼玉栄高校からとった「栄」。一生背負っていく四股名に母校の字をつけるとは、よほど愛校心が強いのだろう。栃栄もたしか同じ由来のはず。よい学校なのだろうか。卒業生が増えると、安栄、琴栄、時津栄、北勝栄なども出現するか。朝青龍もファーストネームが明徳だし、最近だと拓大出身拓錦なんていう取的もいる。道は相撲道の道ということで、他人事とは思えず親近感がわく。なんとなくまだ馴染みがないが、phoneticalには呼び出しのときに力強い感じがするので慣れればいい四股名かもしれない。最近はもう少し呼び出しがキマラない音感の四股名も増えている中、悪いほうではないと思う。すばらしいのは三文字とも音読みであること。詳細な根拠を明示せずに音読みばかりの四股名はいけないと批判した内舘委員の意見(ナイカンボク…内舘牧のような四股名はダメ!)に真っ向から対決している。これからも親方衆には、このような個人の雑音に対しては是々非々で対応していってほしい。

驚いたのが琴欧州。琴欧洲になったこと。日本語ではヨーロッパのことはこうは書かない。中文では正しい漢語となるが、日本語としては意味不明になる。これで運気が上がるのだろうか、姓名判断の知見がないので全くわからない。昔、Final countdownというヒット曲を飛ばしたEuropeというバンドがあったが当時はスウェーデンのバンドがEuropeを名乗るのかよという気がしたが、今回の琴欧洲は、EuropeがEuröpeに改名したかのような感じをうける(実際そういうことはなかったが)。最近のこの大関の不振は、怪我という半不可避の条件、これをきちんと直さずに無理をした二次災害、これらから来る覇気の喪失という要素の重なりでもたらされたものと個人的には受け止めている。つまり、怪我を治してきっちり稽古しなおせばいくらでも脱出できるし、九月場所でもその兆しは見えたわけなので、なぜこのタイミングで改名なのか、というのは訝しさを感じる。今後もこの程度のことでつど改名するのだろうか。ファーストネームは勝紀だったかと思うがこれは改名どころは色々ありそうではある。しかし、漢字表記の変更は琴欧洲本人に殆ど精神的な刷新に結びつかないのではないだろうか。姓名判断とはそういうものではないといわれればそれまでだが。確かに師匠は自分の四股名を旧字体の琴の字に変えてみたり、ファーストネームをしょっちゅう変えてみたりと、改名マニアだったのでその影響かなと思う。でも怪我も治って稽古もしっかりしてそれでも星が上がらないのなら、そういう時の最後の神頼みにこういう改名っていう奥の手は取っておいた方がいいのではないだろうか。琴桜の四股名は、琴欧洲が横綱になっても譲らないのだろうか。先代の孫の将且君用にとっておくのだろうか。個人的には、琴欧「州」としての最後になるかもしれない九月場所の絵番付を購入しておいてよかったが。

張出

2006-09-26 22:31:36 | Weblog
安美錦は今場所すばらしかった。一時期膝がガクガクでもうだめかと思ったけれど、一時期よりもつよくなった。おそらくそれは、技だけでなく、立合いのあたりが出るようになったからだろう。三役から幕内上位に強豪犇く今、できれば今度は小結に上げてあげたい。

しかし、つらつら考えると今度の九州は筆頭止まりではないかという気がしてきた。

今場所は中ー下位での負け越しが多かった。このあたりで勝ち越した力士は、安馬、岩木山、琴奨菊、普天王、豪風、垣添、北勝力。さらに、負け越したけれど負越数が少ないのが、時天空、出島、栃乃洋。若干負越数は多いが、平幕中位くらいで止まりそうなのが把瑠都、玉乃島、旭天鵬。ここまでで十三人。あとは十五枚目で勝越点1の春日王だけ。これ以上は上に上げる人はいないのだ。これらの人で幕内上位を埋めても七枚目までしか埋まらない。

とすると、九枚目で負越点1の高見盛や朝赤龍を負け越したのに八枚目にすえなければいけなくなってくる。これは流石にありえない。代替案は二つ。上位で大負けの玉春日をこのあたりにとどめるのがひとつだが、流石に一勝十四敗ではもう少し下げないとバランスが悪い。もうひとつの手は、十両からの昇進組の大抜擢だ。しかし、十両三枚目で勝越し七の豊桜などいるとはいえ、全勝優勝でもないのにいきなり前頭八枚目も厳しい感じはある。それでもなんとか、昇進組を埋め込んで、高見盛ほか七勝八敗組は負け越したものの番付は据え置きとなるようにしてみよう。そうするとこうなる(勝越点・負越点からの単純計算)。躍進した露鵬と安美錦は張出小結に上がるという前提である。

1 安馬 岩木山
2 琴奨菊 時天空
3 普天王 出島
4 豪風 垣添
5 栃乃洋 旭天鵬
6 北勝力 把瑠都
7 玉乃島 春日王
8 豊桜 鶴竜
9 高見盛 朝赤龍
10 旭鷲山 潮丸
11 豊真将 北桜
12 豊ノ島 土佐ノ海
13 安壮富士 栃乃花
14 皇司 白露山
15 玉春日 嘉風

これだと、負け越したものの番付が半枚すら落ちない力士が七人も出てしまう。かといってそれを調整するためには十両からの昇進組への異例の大盤振る舞いでバンバン番付を上げないと帳尻が合わない。しかしこれでは秩序がもたないと協会は考えるのではないだろうか。

そこで審判部は奥の手を思いつく。そうだ安美錦を筆頭にして半枚ずつずらそう。そうすると、七勝八敗の力士は軒並み最低半枚は落ちるようにすることができるのだ、と。

そのときの仮想番付はこうなる(十両からの昇進組が極端に上がらないように微調整を加える)。

1 安美錦 安馬
2 岩木山 琴奨菊
3 時天空 普天王
4 出島 豪風
5 垣添 栃乃洋
6 旭天鵬 北勝力
7 把瑠都 玉乃島
8 春日王 豊桜
9 鶴竜 高見盛
10 朝赤龍 旭鷲山
11 潮丸 豊真将
12 豊ノ島 北桜
13 土佐ノ海 安壮富士
14 栃乃花 皇司
15 白露山 玉春日
16 嘉風

これでもまだ豊桜や鶴竜が八・九枚目とかなりアンバランスなのだが、果たして誰と調節するのだろう。でもとにかく負け越して落ちないということはないという秩序は保たれた。

こうならないでほしいのだが、現時点では大きな方向性はこうなりそうな気がする。もちろん露鵬は張出小結として再昇進。というのも、今後しばらくは三役・幕内上位で勝ち越す力をもった力士が目白押しだろうから(言い換えると大関が取りこぼすのと、平幕中位グループ以下がぼろぼろ負ける)、張出三役は復活させないわけにはいかないのだ。そうしないとそれはそれで秩序がもたない。筆頭で二桁の露鵬を半枚上げというわけにもいかない。三枚目で勝越七の安美錦が二枚半しか上がらず筆頭止まりも不条理でないわけではないのであげてもいいのだが、上記のような理由で安美錦を妥協の産物の犠牲にすることで、番付全体の秩序は保たれる。というシナリオ。もちろんこうあってほしくないのだが。

大乃国とか北勝海とか北尾とかいたころはごろごろ張出三役がいた。今のあの頃のような一強戦国時代なので、張出三役は問題なしとしてよいのではないのか。

安美錦よりももっともっとへぼい力士でかろうじて最高位小結というのは、過去にも何人もいて、それだけに安美錦には早く上がってもらいたいのだが、どうなるだろうか。

いずれにしても、嘉風は隆乃若との争いだろうが、またもや番付運良く、幕尻でとどまりそうに思えている。

稀勢の里が張出関脇になるか小結筆頭かはわからない。千秋楽戦わずして勝越しと三賞をゲットしたので、その反動で地位は据え置きかなという気もする。

いずれにしても、春日王が最も番付上得をしそうな九州場所。

九月場所千秋楽

2006-09-25 20:45:25 | Weblog
国技館にて向正面より観戦。

今日も内舘委員が正面最前列でご観戦。ただし連日の観戦でお疲れなのか、しばしば瞑想に耽っておられるようだった。

安倍官房長官が来るということが事前にわかっていたので、入場時のセキュリティチェックが厳しいかと思ったが、何もなかった。正面の桝席(桝席Bくらい)に座ったが、立ち上がって四方八方に手を振り会場がそれにかなり反応していたので、露鵬と栃東が少し気の毒に思えた。しかし、四方八方から狙える位置に座っているので気が気でなかった。「刺客」は選挙のときだけではないのに。対外的な刺激や、イデオロギー的な変革を伴う公約を掲げている人なので、今後あのような警備で大丈夫だろうか。オリンピックおじさんにさるぐつわを咬ませてあの衣装と小道具を入手した暗殺者が、扇に仕込んだ吹き矢から安倍さんに一撃を放つとも限らない。あるいは、朝青龍の手首のテーピングに匂いを嗅ぐと力が抜けるような薬品を付け人の目を盗んで染み込ませ、時間いっぱいでごしごし顔の前でテーピングをこする横綱を脱力させ、あっけなく負けさせて座布団が舞う中で、安倍さんにめがけて爆発物を仕込んだ座布団を投げつけることだって可能だ。北桜の塩に毒薬を仕込んでおいて、高く舞い上がった瞬間に送風機で風を起こして安倍さんの周囲に塩が飛ぶようにすることだって荷物チェックがないので可能である。あそこまで無防備なのはきっと昨日きていた安倍さんは本物でなくて影武者だったからだろう。「T本」という名の友人だが、シークレットブーツを履けば安倍さんにかなり似ていることを思い出した。

さて、千秋楽一番うまい酒を呑んだのは誰だろう。多分杉野森兄弟だろう。安壮富士は勝ち名乗りをうけてから花道を引き上げる瞬間にすでに熱いものがこみ上げているようにオペラグラス越しに見えた。次は不戦勝で勝ち越して殊勲賞もきちゃった稀勢の里か。二十歳にはなったから酒は呑めるが、仏頂面でちびちび熱燗を呑みそう。打ち出し後自転車で井筒部屋のそばを通ったら、賑やかそうだった。鶴竜の祝いだろうか。入幕したら逆鉾の四股名を与えるようなことを師匠がコメントしていた記憶があるがどうなるのだろう。

千代大海はなんとなく予想はしていたが、やはりあっさり琴欧州に負けて、自分の店が出している懸賞を回収することはできなかった。小刻み系突っ張りは懐があれだけ深い人に対しては、手の届く範囲内でばたばたやっているだけなので掴まえ易いのだろう。どうも長身の力士に対しては苦労することが多いように思う。一撃の強さと、把瑠都戦のような炎の立合いがないと、ちょこまかスピード回転させているだけではなかなかつらい。ということでかなり健闘したように思うものの十勝止まりに終わった。

十四日目の打ち出し後の混雑の中でのことだが、満員電車状態の帰り道で、あるおじ様がたまたまそばにいた親子連れの子供の方に対して、「誰のファンなの」と訊いていた。子供は「白鵬」と答えたら、おじ様は手にしていた紙袋から白鵬の色紙を出して子供に与えていた。親は「どうもすみません」と謝意を表していた。きっとこれでこの子供がずっと大相撲ファンになってくれればいい。力士になってくれれば言うことないが、百歩譲って力士にならなくてもファンであり続けてほしい。そして自分が親になったら子供を連れてくるのだ。ということでこのおじ様のすばらしさを見習って、自分ももしそんな展開があったときのために、千秋楽のこの日、木下大門さんの絵番付を購入して帰り道小脇に抱えていたのだが、ついいつもの癖で空いている東側の裏口から茶屋側の門に出てしまったので、そのような場面に出くわすことはなかったので持ち帰ることとなった。とはいえいつものように素晴らしい出来栄えの絵番付なので、それはそれで問題なしなのだが。あと、木下大門さんにこれまでのwebでのすばらしい情報と画像の提供に謝意を示したいと思ったという背景もあるのだが、購入時の大門さんは在庫管理か非常に忙しそうに作業をされていたので声をかけそびれてしまった。

国技館の正面出口はパレードを待つ観客+単に混雑で動けない観客のせいで、パレードカーが視界に入るところまで寄れなかったので、あきらめて帰ることとした。のだが、その後清澄通りに出て高はしのあたりを進んでいると、道沿いにばらばらと人が出て何かを待っているようである。もしやと思ってそこでしばし張っていると、予想通り白バイに先導されたパレードカーが登場した。同乗者は朝赤龍か皇牙かと思っていたら、高見盛なので驚いた。千秋楽で負け越してしまった高見盛の気晴らしにとでも横綱の配慮だったのだろうか。この日は露払い・太刀持ち同士の対戦があるわけではないのに、横綱土俵入りは北勝力と高見盛が助さん格さんをやって朝赤龍は出てこなかった。でも自分の取組は普通に取っていたのが何となく不思議である。とにかく、横綱はもうばらばらとしかいない沿道でも両手を上げて声援に答え、持っていた巨大な花束を、肩車されていた子供に向かってひょいっと投げ与えていたのはさすがの物腰だった。そこにいたおばさんが「貴乃花はこうやって待ってても仏頂面で何もしないで通り過ぎていった」と言っていたようである。ということで今度東京場所で千秋楽行った時は、パレードは同じ場所で張ろう。

T一門系の某親方(頭文字のアルファベットだとわかる人はすぐ絞り込んでしまいそうな名跡)が両国駅そばの100円ショップでご祝儀袋を買っていた。裏方さんへの労い用だろうか。

表彰式のとき、ブルガリア大使の日本語がかなり上達していた。もしかしたら前と別の人だろうか。千秋楽は、あの新序出世で来場所から番付に四股名が出る新人を会場みんなで三三七拍子で祝福するあの行事が好きだ。そしてそのまま神送りの儀式で行司さんを胴上げする。そして十五日間土俵に宿っていた神様は去っていくのだ。神は十一月に土俵に戻ってくる。


九月場所十四日目

2006-09-24 10:46:23 | Weblog
国技館にて向正面側より観戦。

優勝は安馬が栃東に負けたことで決まったものの、結びの朝青龍-千代大海戦はそれ一番だけをとってみると観戦している者が思わずのめりこんでしまういい一番だった。なんとなく優勝が決まって、いつものように横綱が圧勝して、だとお客様も釈然としないまま帰途につくことになっただろうが、座布団投げはいただけないとしても大変盛り上がる好取組だった。その立役者は言うまでもなく千代大海。二番前の安馬と栃東の取組で控えに座った頃から、明らかに気合の入り方が違っていた。打ち出し後の九重審判長の言葉で、張り手で千代大海の闘争心に火がついたのではないかとの話があったが、そうではなくて千代大海の心に期すものがもともとあったのだろう。まだ「オーラの泉」効果は持続していると見る。そもそも四敗して横綱の独走を許したという戦犯の一人ではあるのだが、この結びの一番をゼニのとれる取組としたのは、大関の責任を十分に果たしたと言える。もう一歩再精進して、あと二番くらい勝ち星を上積みできることができたなら、大関在位記録の更新を断念せざるを得ない話題が出てくるのではないか。

実はこの日は結び以外も比較的のこもった相撲が見られた。琴欧州-白鵬のがっかり組同士の対決も、白鵬が左上手を例によって取り損ねたおかげで大男同士ががっぷり組み合って投げの打ち合いとなる対決だった。白鵬、今日負けて七敗となるか、横綱に対して意地を見せるか。

安馬も栃東によく抵抗した。今の力では、やはりそういう評価にならざるを得ない。調子を戻してきている栃東はやはり総合的に見て角界ナンバー2の力はまだまだある。

そのほか十文字と玉春日がお互い攻め切れなったためではあるけれど、熱戦となった。そういう時に大抵負ける十文字が勝った。また、普天王と嘉風も土俵際の投げ合いとなり、差し違えで普天王となったが腰を強打したようだった。安美錦は立合いしっかり当たってからの技の展開が冴えて稀勢の里にも勝った。稀勢の里は七敗となってしまって意外に勝ち越すのに苦労している。千秋楽は普天王戦だが普天王の腰次第ではあるが熱戦を期待したい。しかし、一時期立合いの尻振りは封印しかけていたのに、また堂々とやりはじめたようだ。なんとなく小気味悪いのは事実なのだが。

正面の審判長すぐ脇のテレビに写らないあたりで感染していた内舘審議委員は稀勢の里のお尻はどうご覧になったか。

あと、現場で見ると、朝青龍の膝のテーピングがまかれていないあたりの痣はかなり広範に紫になっているのがよくわかる。稀勢の里に負けた時にいためた部分だろうが痛々しい。痛いからというより痛々しく見えるからテーピングしているのではないかと思った。同様に、安馬の左足甲の肌色のテーピングはかなりぐるぐる巻きになっている。白くないので目立たないが、これも結構痛めているに違いない。

この日はどすこいFMに北の湖理事長と武蔵丸親方が登場。明日もユニークな配役で、優勝決まっても会場に足を運ぶファンへの還元をしてほしい。

千秋楽の興味としては三賞と入れ替え戦か。
まず三役は稀勢の里の勝ち越しがかかる。稀勢の里が勝ち越して三役陥落者ゼロとなったときに筆頭の露鵬の扱いは?露鵬は今日負けて九番だと東筆頭へ半枚昇進据え置きもあるだろう。今日勝って二桁だと張り出し小結もあるかもしれない。調子のいい栃東戦だけに露鵬が先場所千秋楽と同じく露骨に立合い変化する可能性もある。やたらに「心が成長した」と報道されて、ここまで引き技も封印してきた露鵬だけに、千秋楽も真っ向からの勝ちで返り三役を掴んでほしい。さらに、三枚目の安美錦が仮に十一番勝った場合、筆頭据え置きなのか張り出して新三役となるのかも興味の対象である。これも黒海戦なので安美錦にとっては楽ではない。

三賞は安美錦、安馬、露鵬あたりが候補か。稀勢の里はもう少しでも勝っておけば殊勲賞だっただろうが、やや弱いか。北勝力は例によって忘れたころの二桁勝利だがまあ今場所は別にいいだろう。

幕内陥落候補者は結構いる。若の里、琉鵬、霜鳥は確実だろう。千秋楽の星と、十両成績優秀者数との兼ね合いでは、白露山、十文字、嘉風、春日錦、寶智山も危ない。

これに対して十両からの昇進候補者は、確実なのは鶴竜、豊桜か。豊桜は先々場所に次いでの優勝がかかる。皇司もほぼ当確か。加えて可能性ありとしては、安壮富士、潮丸、片山、北桜。八枚目の隆乃若が十二番勝てば、ありえなくない。個人的には安壮富士に勝たせてあげたい。安治川勢は何か勢いが違うのでいけるのではないか。

次に、十両陥落候補者だが、出羽鳳と、まだ初日の出ない武雄山。北勝岩も今日負けると危ない。ということで最大三人か。

これに対して幕下からの昇進候補者は澤井が確定。十四日目の準入れ替え戦で北勝岩を下した三枚目で五勝の玉飛鳥。北勝岩も十両から落ちるようなら、二枚目で四勝の白馬が三人目の昇進者だろう。この場合、陸奥部屋は、十文字・琉鵬・豊桜と、地味な三力士に加えて四人が関取となる大勢力になる。

ということで、本日も見逃せないのだ。本日も向正面で観戦予定。

国技館のちゃんこだが、十四時の部については十五分くらい前から列が並んだのでそれに加わっておいてよかった。そのあと長蛇の列ができ、数十人ずつの入れ替え制なのでなかなか前に進まなかっただろう。