共通前提が急速に失われているんだから、「空気を読む」とか「暗黙の了解」と、「阿吽の呼吸」なんて難易度爆上がりで、今から是正してかないと多くの人には無理ゲーになりまっせ(・∀・)
ていうことは「ことば関連」や「AI」のカテゴリーで何度も述べてきた通りだが、今回紹介されている『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか』もまた、認知の枠組み(スキーマ)が人それぞれ違うのだから、違うことを前提でコミュニケーションをすること(訓練、習慣づけ)が重要だ、という話をビジネスの領域を中心に書いており、まさにその通りだと感じた。
これはもちろんビジネスの領域に止まらない。本の紹介前にある子どもの「パチパチ」に関しては目的語の省略がディスコミュニケーションを生んだ事例だが、例えばバスのアナウンスの中に「お子様」という文言があったことにより、それを「ご飯のこと」と誤認した子どものような反応は、ある文言を見たら文脈を無視して批判するようなネット上のやり取りにも観察される、といった具合に様々な場面・年齢で観察されるからだ(これはジョナサン・ハイトの言う「象と乗り手」という理解の仕方にもつながる。ただ理詰めで説得しようとして乗り手は納得しても、象がその方向に行くのを拒絶すれば説得は成功しない)。
問題があるとすれば、ビジネスシーンの場合は「基本的に大人同士がフォーマルな場でやり取りをする以上、相手もきちんとしたスキーマを持っていて当然だ」という前提でものを考えがちなので、それが悪意なきディスコミュニケーションや不要なコンフリクトを生みがち、という構造だろう(だから暗黙知ではなく、マニュアル化・可視化の必要性が叫ばれるわけだけど。ちなみに「職場でのZ世代とのコミュニケーションギャップ」みたいなのも、こういった文脈である程度は説明可能である)。
そういったことを(再)認識させてくれる点で、ビジネスに限らず、広く(価値観が多様化・複雑化する今後の社会における)コミュニケーション全般に有用な本だと思った次第である。
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