菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

運送法改正の今後

2013-12-07 06:30:00 | 学会・研究会

 法務省・運送法制研究会(座長・山下友信東京大学教授)の「運送法制研究会報告書」が公表されました。来春以降には法制審議会が開かれると思われます。

     http://www.shojihomu.or.jp/unsohosei/unsohosei.pdf

 この法制審において、運送法制研究会での検討結果がどのような方向で議論されるかについては、予想・推測の域をでませんが…

① 現行商法(運送法)には時代遅れな部分が多々あるため、運送実務を踏まえた現代化が図られるでしょう。

② 海上と航空に関しては、国際性の視点も重要です。しかし、航空分野に限っていえば、国際運送(モントリオール条約)と国内運送(各社約款)との規律に異なる点もありますが、コードシェアが広く行われる現状下、同一便の旅客に異なる約款が適用されるケースは珍しくないため、実は規律を一律に統合する必要性は高くありません。

③ 陸上・海上・航空に共通な部分は、総則的な規律を設けることになりましょうが、各運送手段に特有の問題のほうがむしろ多いと思われるため、各論的な特例規定を検討することになると思われます。

④ 他法との整合性にも配慮が求められるでしょう。たとえば、民法(債権法)改正に関する法制審の約款議論と無縁ではいられません。

⑤ 運送法制研究会は、主に運送事業実務の専門的な観点から議論されましたが、法制審では利用者・消費者的な視点も加味されることが予想されますので、研究会報告とは少し異なった方向性で議論される部分も出てくるかもしれません。

 これから運送法分野は注目されると思います。
 ちなみに、慶應義塾でも数十年ぶりに「航空法」講座が復活し、来年度秋期から法学部・大学院法学研究科で開講する運びとなりました。