今2014年秋期より、慶應義塾大学法学部において「航空法」が開講されることとなりました(火曜5時限)。
慶應義塾では数十年ぶりに正規授業としての「航空法」講座が復活いたします(数年前、大学院・宇宙法センターに同名の授業が設置されましたが、正規授業としての実態のないままに途中で閉講されています)。ちなみに、本講にはANAが全面的な支援をしています。
授業シラバスは、次のとおりです。
【授業科目の内容】
航空法とは、航空機の利用に伴って生じる様々な社会的現象を対象とする法分野です。いまや航空機は旅客・貨物にとって不可欠な運送手段ですが、経済のグローバル化の進展や民間航空事業の変革の加速化に伴い、航空機利用に関連して生起する法律問題はますます複雑多様になっています。
本授業では、航空運送法(航空私法)、国際航空公法、航空行政法、航空法実務の重要論点について、正確にその意義、内容、関連性を理解し、航空法全般に関する現代的課題を正しく把握することを目的とします。
【授業の計画】
第1回 国際航空法Ⅰ(国際航空法の俯瞰と史的展開)
国際法上の空域など、国際航空法規範を概観したうえで、航空の発展に伴う国際航空法制の歴史的変遷と特徴を検討する。
第2回 国際航空法Ⅱ(シカゴ条約①)
シカゴ条約における国際機関の設立と民間航空規制を検討する。
第3回 国際航空法Ⅲ(シカゴ条約②)
航空協定と航空輸送の自由化について検討する。
第4回 国際航空法Ⅳ(航空犯罪)
東京条約など、航空犯罪をめぐる国際法の発展を検討する。
第5回 航空行政法
航空機の運航、航空における捜索・救助、航空事故調査など、本邦航空法の主要規定について検討する。
第6回 航空運送法Ⅰ(ワルソー条約と近代化)
国際航空運送に関するワルソー体制の成立経緯と概要を検討する。
第7回 航空運送法Ⅱ(モントリオール条約①)
1999年モントリオール条約に基づく航空運送人の責任原理について検討する。
第8回 航空運送法Ⅲ(モントリオール条約②)
貨物航空運送に係る規制を検討し、併せて旅客・貨物運送の遅延問題を取り上げる。
第9回 航空運送法Ⅳ(モントリオール条約③)
条約の効力および裁判管轄権・出訴期限に関する規制と判例を検討する。
第10回 航空運送法Ⅴ(ローマ条約)
航空機による地上第三者の損害に対する責任規制の概要および体制の現代化について検討する。
第11回 航空法実務Ⅰ(航空機製造物責任)
航空機製造物責任の特殊性に留意しつつ、その成立要件と厳格責任の考え方を検討する。
第12回 航空法実務Ⅱ(航空保険)
航空保険(機体保険・損害賠償保険・戦争危険等)の仕組みを検討し、併せて現在実務が直面する課題にも言及する。
第13回 航空法実務Ⅲ(航空の企業法務)
欧米の国際旅客航空運送関連規則(EU Regulation261等)及び判例に触れ、各国・地域における旅客保護強化の動向および実務への影響について検討する。また、航空特有の経済法(allianceとATI等)・労働法(運航乗務員の労働条件と集団的労働関係)など、航空企業における法曹実務を紹介する。
第14回 総括と補足/試験
【参考書】
『新航空法講義』 藤田勝利編・菅原貴与志ほか著 信山社 2007年 ISBN:978-4-7972-5585-0