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蒼き狼 地果て海尽きるまで [監督:澤井信一郎]

2007-03-11 22:20:43 | 映評 2006~2008
【個人的評価 ■□□□□□】(■□□□□□:最悪、■■■■■■:最高)

アベシンゾーが徹夜国会直後の試写かなんかを観て「感動した」とか抜かしたのを聞いて、見る気がだいぶ萎えたのだけど、ドリームガールズを見ようと思っていたら時間があわなくて仕方なく観たのである。どうすればこんなもんで感動できるのか、彼の感性を疑いたくもなるが、まあ考えてみりゃ彼は立場上、絶対に「いやあ、ひどいくそ映画でしたね。」とは言えないわけで、徹夜国会のあとこんなもん見せられて睡魔と戦わねばならなかったことを思うと、一国の首相というのは大変だなあ・・・とちょっと同情すらした次第。
ラストのチンギスハーンの侵略戦争肯定発言を引き合いに出されて「ファシスト」とか言われないように気をつけてください。

にしても、久々の昔懐かしい角川映画。ハリボテ感いっぱいの空虚なゴミ大作。
金持ちはこんな糞みたいな脚本でも企画が通せるんだからうらやましい。

スペクタクル大作のつもりらしいが、そのスペクタクルシーンが全く面白くない。
沢山の馬があちこち行き交うのをロングショットで写すだけ。
しかも戦いの過程は全てナレーションで説明するだけ。
「**様の軍が背後から襲いかかり敵は総崩れになったのです」みたいなナレーションが入るのだが、そのナレーションの再現映像すらない。馬が行き交うだけ・・・
しかもその程度の面白くもなんともない戦闘シーンがやたら何度も何度も用意されている。
バカじゃねえのか
気合いいれたスペクタクルシーンが二つもあれば、後は喋るだけの展開でもみんなが傑作だと勘違いしてくれるんだよ。
ベン・ハーもプライベート・ライアンもグラディエーターもブレイブハートも、壮大な戦闘シーンなんて二つしかないだろ。
馬がうろうろするだけの戦闘シーン五つも六つも入れて、ほんとにバカだバカだバカだ
メルギブがリメイクしたら血みどろの素晴らしい歴史大作になるだろうなあ・・・
始まって早々に観客の心を鷲掴みにして歴史大作の世界に引きずり込むツカミのスペクタクルシーンを入れるべきだった。
ところが始まって最初の女を略奪するだけのしょぼげなアクションシーンでもう幻滅。

テムジンが大きくなってからのシーンでも脚本のダメさがこれでもかと突きつけられる。
馬泥棒に馬盗られた~と言われ、「よーし、俺様が取り返してきてやる」と、鼻息あらく駆け出すテムジン。
その後、観客たちは何を期待するだろうか?
当然、馬泥棒一味とのスピーディでダイナミックなチェイスが観たくなるだろう。
そしてそのチェイスのさなかにテムジンを助けるために飛び込んでくる奴でも現れて、そいつが後々テムジンの片腕になるとか、そんな風にしてアクションしながらキャラ紹介を進めるのがハリウッド流だ。
ところが、角川流のシナリオでは・・・・泥棒とのチェイスなどせず、すでに気の利く奴が馬を取り返してくれていて、そいつとテムジンが会話して信頼関係が築かれる様を説明する・・・
バカバカバカ
そんな会話なんか聞きたくねえんだよ。
戦いを見せろ。
ドラゴンボールは何故好きなの?と聞かれたガキどもは「戦いがあるから」って答えるんだよ。
みんな戦いが観たいんだよ。ほんとわかってねえ。

キャラ紹介も人間関係も全て、台詞かナレーションで説明するだけのへぼいにも程があるシナリオと、眠くなるだけの戦闘シーンが延々続くこの映画。あとの楽しみは俳優の芝居を見る他ないのだが、テムジンの苦悩は絶叫系芝居をする反町の顔をアップで撮るだけ。あまりに表面的すぎて深みもへったくれもない。泣きながらでかい声だせば英雄の苦悩が表現できるとでも思っているのだろうか。反町じゃなくて演出の問題だと思うが。
澤井信一郎監督ならではの、「下手でもいいから最後まで言い切れよ。みんなが頑張れ頑張れって応援するからね」的演出が健在なのはちょっと微笑ましかったが

シナリオもスペクタクルも演技もダメ。
じゃあ、映像を楽しもう。
オールモンゴルロケによる大平原の映像を堪能するんだ。
でもでも、何も無い草原では日差しがさんさんと画面全体に一様に照りつけ、めちゃくちゃ薄っぺらい感じの絵になってしまっている。もっと考えて撮れよ・・・

よしこうなったら、あとは音楽だ。なんたって岩代太郎だ。いい曲を書いてくれる筈さ・・・
音楽の岩代太郎は最近、日本でも韓国でも大活躍の作曲家だ。
しかし「殺人の追憶」でも「蝉しぐれ」でもちょっと首を傾げたくなる箇所がいくつかあった。音楽を使いすぎるのだ。
今回は使いすぎで丁度いいくらいの大作史劇だから、その点で心配はなかったのだが・・・
テムジンがかつて友の誓いをした男と決戦する時、音楽は当然テムジンの心の葛藤を表現する叙情的なものにしなければならないハズなのに、壮大な戦闘シーンを彩る叙景曲となっている。広い草原とそこに行き交う数千の人馬の情景を表現する雄大な曲・・・これではテムジンが戦いに凄く満足しているような印象を与えはしまいか?
いつもいい曲を書く岩代太郎だが、どうにも選曲を誤ってばかりな感じがするのである。

****
そんなこんなで、本当にどうしようもない映画であったが、このどうしようもなさが80年代の角川テイストの再現みたいで懐かしくもあったりする。
「野性の証明」みたく何十年後かには酒飲みながら笑ってみるのに最適な映画になってるのかもしれない。

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2 コメント

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カーリング (マー)
2007-03-22 21:02:38
初めましていつも拝見しています 実は映画ではなく 女子カーリングいまBSでやってますが その感想があれば ぜひ記事にしてください お願いします
返信する
やっぱり・・。。 (nyanco)
2007-03-13 16:27:08
こんにちは♪
コメント&TBありがとうございました。

この映画、予告で観た時からなんとなく嫌な予感はしていましたが、やっぱり角川映画らしい作りになってしまったようですね。。^^;
あんなに大勢のエキストラを使っていながら、魅せるアクションシーンが一つもないなんて、、大金を投じて製作しているだろうに、本当にもったいないことです。。
同じ角川映画でも原田知世や薬師丸ひろ子の全盛時はそれなりに面白い作品いっぱい作っていたのになぁ。。

ドリームガールズはぜひおすすめです♪(^^)
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