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映像作品とクラシック音楽 第一回「2001年 宇宙の旅」

2021-02-07 13:14:00 | 映像作品とクラシック音楽
「クラシックCD鑑賞部屋」というFacebookの恐怖のグループに投稿した記事を転記します。

私はベートーベンの第九のアルバムなら11種持ってますが、その程度だとほんのヒヨッコにすぎないような、凄まじいクラシックマニアたちが集うグループです。

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映像作品とクラシック音楽
第一回「2001年宇宙の旅」

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思い切って初投稿させていただきます。齋藤新と申します。
クラシック音楽が好きで、皆様の投稿をいつも楽しみにしております。皆様の博識ぶりに恐れをなして「ムラビンのチャイ5イイよね」とか軽い気持ちで投稿するのが怖くなり今まで読み専でしたが…
私はインディーズですが映画制作などもしておりまして、そうだ!映画とからめたクラシック音楽話なら結構書けるぞ!と思って書いてみることにしました。
映画に限定しちゃうとドラマやアニメの話がしづらくなるので、「映像作品とクラシック音楽」というシリーズで時々書かせて頂きたいと思います。

第一回は、SF映画の金字塔的傑作「2001年宇宙の旅」を選びました。
かなり長文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。

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「2001年宇宙の旅」といえば、Rの方のシュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」だったり、Jの方のシュトラウスの「美しく青きドナウ」が即座に思い浮かびます。

映画で使われたのは、どちらもカラヤン指揮です。ツァラトゥストラはVPOとの59年録音、ドナウはBPOでの録音です(いつの?まではわかりませんでした)。
「あれ、私の持ってるサントラだとツァラトゥストラはベーム指揮ってなってるよ…」と思う方もいるかもですが、当時発売のサントラアルバムには映画で使用したのとは違う音源が使われていたとのことです。

左右対称の構図などに代表される整然とした画を好み完璧主義者としても知られるキューブリックが、冷徹で一糸乱れぬ演奏のカラヤンを好んだのはわかる気がします。フルトヴェングラーの演奏とかキューブリック映画には合わないんじゃないかなと思います。

ところで珍しいCDを紹介したいと思いますが、写真の左側は「2001年 デストロイドヴァージョン」という幻のサントラです。
2001年は当初クラシック音楽とオリジナルスコアを併用する予定でした。
キューブリックは「スパルタカス」でも組んだ映画音楽の巨匠アレックス・ノースに作曲を依頼しました。

ちなみに2001年はざっくり4部構成で、「1.サル編」「2.月編」「3.HAL編」「4.ビカビカ編」となると思いますが、キューブリックはとりあえずサル編と月編までの音楽を発注したのです。

ツァラトゥストラなどを使う予定ということを聞きつけたノースは、いいや、自分の楽曲だけで成立させてみせると奮起して、精魂込めて作曲に当たりました。
そして冒頭の音楽にツァラトゥストラっぽい、壮大で神々しい素晴らしい音楽を付けてキューブリック立ち会いのもとで録音までしたのですが…

キューブリックはHAL編以降の音楽を発注することはなく、しかも録音までしたノースの音楽を全部オミットしてしまったのでした。実はキューブリックは録音の時点でノースの曲は使わないと決断していたようです。
ノースとしても面白くなかったでしょう。以降キューブリックとノースのコラボは無くなるわけです。

このCDは、後年になって(93年ごろ)、当時の映画音楽の巨匠ジェリー・ゴールドスミスが、2001年のために書かれたノースのスコアを新録したものです。別に2001年のリバイバルやリメイクやリマスターがあったわけでもなく、ほとんどゴールドスミスが趣味で作ったようなCDですね。
演奏はゴールドスミスのお気に入りナショナルフィルハーモニック管弦楽団(ロンドンのレコーディング専門オケとのこと。シャイーとかもよく振ってるみたいですね)

ゴールドスミスだけに金管の鳴り方にどこかスタートレックっぽさも感じますが、スコアはどれもとても面白いです。
映画では音楽のなかった類人猿のシーンのための音楽があってパーカッションがドンガドンガと鳴ったりします(ちょっとだけゴールドスミスの「猿の惑星」を思い出したり)。
映画だとドナウがかかる宇宙ステーションとのドッキングシーン用の音楽もありますが、ドナウのような優雅なワルツではなく、無重力感を演出するような遊び心のあるホワホワした曲でした(ゴールドスミスのパピヨンにこんな曲があったような)。
このオリジナルスコアであの映画を観たらどんな気分になるんだろうと興味をそそります。

とは言え2001年はツァラトゥストラを「誰でも知ってる音楽」にした功績はやっぱり大きく(一方で長い曲なのに冒頭1分半しか知らない人がものすごく多い曲でもありますが)、映画やSFにしか興味のなかった私のような者をクラシック音楽という新しい世界へ誘うスターゲート的な映画でありました。
そんなわけで私はツァラトゥストラとドナウはカラヤン以外を聞くのは浮気でもするような気になってしまい、これまでほとんどカラヤンのしか聞いてません。アンチカラヤンの皆さんのお叱りを待ってます。

あと2001年というと、ツァラトゥストラとドナウが有名ですが、ディスカバリー号のシーンで使われるハチャトリアンのアダージョも何気に名曲ですよね
映画で使われたのはロジェストヴェンスキー指揮レニングラードフィルの録音です。
そんなところで、筆を置きます。

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この記事の出典
2001年のカラヤンか?ベームか?については以下サイトを参考にしています。この徹底検証は信憑性があると思います

アレックスノースと2001年のくだりは紹介したCDのライナーノーツを参考にしています

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