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マーラー交響曲の楽曲別感想 5番〜7番

2017-11-15 18:50:00 | クラシック音楽
【マーラー交響曲5〜9番 概説】
交響曲5番~7番というのは、作曲家にとって調子の上がるナンバーかもしれない
ベートーベンなら5番「運命」、6番「田園」、7番も有名
チャイコは6番「悲壮」
ショスタコーヴィチなら5番「革命」、7番「レニングラード」
ああ、ブラームス、4番が最後とは・・・

そんなわけでマーラーも5番、6番、7番はノリノリである
といっても7番くらいから、迷走が始まったとも言えて、8番、そして8・1/2番(笑)の大地の歌と、ちょっとおかしなゾーンに入ってしまう
5番からの後期マーラーは、ナンバーが進むほどにマーラーが「死」を意識している。
5番は葬送行進曲で始まり、6番で悲劇的にハンマーが振り下ろされ、7番は夜の歌
8番で歌手たちによって叫ばれる神や生命の尊さは逆説的に死の恐怖の表れ
大地の歌にいたっては、これを聴いて自殺する人が現れるんじゃないか、と自分で語るほど
でも最後となった9番は原点回帰し、派手な盛り上がりも見せず、歌唱も使わずに弦楽によって4番あたりの天上の音色を聴かせることで、何か死も含めた人生と運命全てを肯定的に受け入れたように聞こえる

そんなわけでマーラーが1~4番を一つの交響曲と言うなら、5~9番だってマーラーが言ったわけじゃないけど一つの長大な交響曲として、一人の芸術家の苦悩の果ての解脱(またつかっちまった)を描いた感動のドラマのようなのである


【5番】
4番で「長大交響曲」に一区切りつけたマーラーの新たなステージ。
鬱と躁の振り幅の大きさがものすごくマーラー
でも、ノッてる時の彼らしく全体的に明るく前向きな気がする。
5番の第4楽章は多分マーラー全楽曲中もっとも有名な曲だろう
アダージェットと呼ばれるこの4楽章は演奏会でここだけ演奏されることもある人気曲だ。
映画好きならビスコンティ監督の「ヴェニスに死す」で何度も何度も聞かされたあの曲と言えばわかるだろう
「ヴェニスに死す」見たころ青臭い学生だった俺にとっては睡魔という名の悪魔の襲来を告げるほとんどトラウマ曲だ。長すぎだろ!って思ってたけど、こうしてマーラーが好きになってみると、使いたくなる気持ちはわかる。
第1楽章の葬送行進曲で重く始まり
第2楽章「嵐のように激しく…」というサブタイトルのとおりに壮絶に悶え苦しむ
第3楽章 スケルツォだけどベト9のスケルツォのような勇ましさではなく、むしろなんかウキウキと踊りだしたような
第4楽章 例のアダージェットでほっと一息
第5楽章 そしていつもの如くぜーんぶ納得してスッキリフィナーレへと向かう。ちょっとくどいくらいの繰り返しが気になるが、それくらいマーラーがイっちゃってるようで

CDを買うにあたり、
第5番の特にアダージェットはカラヤンの演奏が非常に有名なのだけど、あえてカラヤンではなく、サイモン・ラトルの2002年のベルリンフィル首席指揮者就任記念コンサートのライブ録音版を購入
これもラトルの名を音楽界に轟かせた名盤らしい。
ラトルの演奏は軽い。
悪口ではなく。
フルトヴェングラーやカラヤンといったベルリンフィルの伝説的指揮者たちは重低音を重視してきた。ラトルは重低音だけではなく、全ての音域を踊らせるような気がする。だからカラヤンなんかと比べると軽く感じるのだけど、それは決して劣っているというわけではない。指揮者の資質の違いでしかなく、ラトルの演奏のウキウキ感はカラヤンには全く感じられなかった。
特にこの5番には彼の魅力がぎっちり詰まっている。
アダージェットもカラヤンに負けず劣らず美しい

【6番「悲劇的」】
「悲劇的」というサブタイトルの割に、1楽章と2楽章のカッコよさ、勇壮さは他のマーラー交響曲には全くない。なんか戦争でも始まるみたいだ。
ああ、だから悲劇的なのかもしれない。
ただ1楽章と2楽章が曲調もテンポも似ていて、なんで続けたんだろうと疑問にも思う。アタッカで続けているわけでもないのに、慣れないうちはいつ2楽章に移ったのかわからないくらいだ。
3楽章が、5番の大ヒット曲再びと思ったかどうか知らんがまたまたアダージェット
でも実は6番のも5番に劣らず良い
そして4楽章
ハンマーがバコーーーンと打ち鳴らされる
タモリ倶楽部で打楽器レンタル店の変わったレンタル楽器特集があって、そこで紹介された。
ハンマー自体はホームセンターで売ってるもので、レンタル料は一泊でうん千円だったか、意外と安かった。ハンマーを振り下ろす台はただの木製のテーブルみたいなやつで、楽器ではないのでティンパニや銅鑼のような響きは全く期待できない。正直知らずに聞いてると、いつハンマーが振り下ろされたのかわからないくらいだ。どっちかというと、コンサートでその光景を見る方が心に来るだろう。
それでもマーラーはハンマーを鳴らしたかったのである
この終楽章は他のマーラーと違ってとても物悲しく終わる。だいたい最後は壮大に盛り上げて収めるのに、6番はハンマーを打ち鳴らしはするが、主人公死亡と言わんばかりの悲しさに包まれる。そうか、だからやっぱり悲劇的なんだ

CDは、ヘルベルト・フォン・カラヤンのベルリンフィルによる1975年録音版を購入
こういうかっこいい曲はなんだかんだでカラヤンがいいよ
カラヤンとベルリンフィルの全盛期と言えるころの外さない重厚感、1楽章からシビれる、掴んで離さないカラヤン節
やっぱりカラヤンはいいなあ、と素直に思えた

【7番 「夜の歌」】
マーラーで一番難解という悪い噂を聞き、しかも夜の歌なんて、あまり楽しい感じはしないサブタイトル。なんか勝手におどろおどろしい「春の祭典」みたいな曲を想像して買うのに躊躇いのあったナンバーだが、実際聞いてみるとなんてことない、普通のマーラーって感じ
などと言いつつマーラーの「普通」ってなんだ?マーラーの普通レベルってすでにモーツァルト、ベートーベン、チャイコフスキーよりどっか変なとこいっちゃってるけど。
とはいうものの、それでも確かにこの7番には華のようなものがない。
第4楽章のティンパニドコドコはちょっと心踊るけど、全般なんてことなく終わる。
黒澤映画で言えば「生きものの記録」や「醜聞」のような、面白いけど誰もベストに上げない映画のような。
とは言いつつも、第1楽章のホルンの湿った感じの音、そこから木管やらトランペットやらに引き継いでいく構成、それでいて一貫して無情というか、突き放した感じ。
もしかしたら6番の最後に死んだ人物(多分マーラー本人)が、生と死の淵を徘徊している、そんな情景なのかもしれない
そして第2楽章、第3楽章はほんとになにがしたいのかわからん。全く訳がわからん!というテーマの曲なのかもしれない。
だから夜の歌というサブタイトルも、1日の時刻や日の有る無しという意味でなく、マーラー本人の音楽が見えなくなった暗黒のようや気持ちを言ってるのか?
とすれば終楽章の、なんかもう全然わかってないけどとにかく笑おうじゃないか!あはははは!っていうようなヤケクソノリなフィナーレもちょいわかる

CDはベルナルト・ハイティンクのロイヤルコンセルトヘボウ1982年録音を購入
誰が呼んだか世界三大オケが、ベルリンフィル、ウィーンフィル、ロイヤルコンセルトヘボウなのだそうだ
ベルリンフィルはわかるけど、シカゴ響ロンドン響贔屓の自分としてはうーん、、そうかなー、と思いつつも、コンヘボのこの7番は確かに美しい
実はベルナルト・ハイティンクという人のCD買うのもこれが初めて
綺麗でいいと思う、と大したこと言えない
あ、この部分バーンスタインならもっとバッカーーンといくんだろうなあ、とか思ったりしつつも、バーンスタインのようにこれ見よがしな緩急ではなく、さりげなく感情のタメを作るような優しい演奏はこれはこれで良い

一気に9番まで書くつもりだったけど長くなったので、一旦こんなところで
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