みなさん こんにちは。
今回の担当は山口剛広です。
今年も残すところあと僅かとなりましたね。流行語大賞に「名ばかり管理職」や「後期高齢者」が選ばれるなど、我々にとって関連深い出来事が多い1年だったと実感しています。
暗い話題が多い中、今回はできれば明るい話題を…と思いましたが、やはり明るくない話題です。
昨日の日経新聞にこんな記事がありました。
塩谷立文部科学相は15日、新卒学生の内定取り消しが相次いでいるとして、日本経団連、経済同友会、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会の4団体に対し、内定取り消しの防止などを求める要請文を送った。要請文は「内定取り消しは本人に大きな打撃と失望を与え、社会にも不安を与える」と指摘。万一、内定を取り消す場合には、別の就職先を確保するなど各団体に所属する企業が学生に十分な配慮をするよう求めた。(日本経済新聞15日)
前回の解雇の記事にも関連しますが、急激な景気の悪化に伴って、人員削減を実施する企業が増えています。その方法の一つとして採用を抑制することがありますが、果たして内定取り消しは認められているのでしょうか?
独立行政法人 労働政策研究・研修機構によれば、
1)特別な別段の合意がなければ応募者に対する採用内定の通知とこれに対する承諾により、労働契約が成立する。ただし、この労働契約は、従業員として雇入れられた後の労働契約とは性質を異にする。内定時に成立する労働契約とは仕事を開始する時期を大学卒業直後とし、それまでの間に万が一誓約書記載の採用内定取消事由が発生した場合には使用者が解約権を行使することができることを内容とするものである。
(2)採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当としてみとめられることができるものに限られる。
とされています。
判例では、
【内定取り消しが無効とされたケース】
・大日本印刷事件 最二小判昭54.7.20
・日立製作所事件 横浜地判昭49.6.19
・インフォミックス事件 東京地決平9.10.31(中途採用のケース)
【内定取り消しが有効とされたケース】
・電電公社近畿電通局事件 最二小判昭55.5.30
などがあります。
いずれも個別具体的に内容を見ていかないと、一概に有効・無効を判断できないケースばかりです。解雇に比べれば、まだ法的な制限も少なく、対象となった方のやり直せる可能性は高いと思われがちですが、特に新卒の内定取り消しというものは、社会に出る前にその門を閉じられたような気持ちになると聞きます。その後の職業生活に与える影響は、計り知れないものかもしれません。ある企業では、違約金として100万円を渡して、あとのことは知らないよ、という態度だったというニュースを見ました。会社の事情で、内定取り消しがやむを得ないことだったとしても、やはり誠意を尽くして対応することは、最低限必要なことではないかと思います。
私の担当は今回で本年最後となります。
来年は景気も回復し、皆様にとって良い年となることを願っております。
皆様どうぞ良い年をお迎え下さい。
山口社会保険労務士事務所