聖マリアンナ医科大学病院臨床研修Blog

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指導医日記 ~ポートフォリオとポートフォリオ評価は違う~

2011-08-11 21:22:44 | ポートフォリオ評価
土持ゲーリー法一先生の書籍『ラーニングポートフォリオ*』にあるように
ポートフォリオはさまざまな教育の場で活用され
その有用性が取りざたされるようになっている

ポートフォリオについて
『学習者自身が学習をシステマティックに省察することを促し
教員が学習者の能力を総合的に見据えるための学習過程を示してくれる
一種のストラテジー』と定義づけるものがあります

この場合にキーワードは学習過程にあります

つまり
最終的に体裁が整えられていればいいのではありません

もし
研修医が
日々の研修の中で習得したものを足跡として残さず
さながら夏休みの宿題のごとく
ちゃちゃっとファイルしてきても
それは単なるファイルであってポートフォリオではありません

もちろん
凝縮ポートフォリオとしてまとめて感想を書いたとしても
それを裏付ける客観的なものがそこには示されていなければならない

だからといって
いくらポートフォリオが質的な評価に長じたものだとしても
研修医の独断的な内容になってはいけないのです

時には量的な評価
たとえばmini-CEXのような手技評価を挟み込んだり
学会発表のスライドや抄録
さらには手術記録や家族や患者とのやりとりなど
実際のエビデンスを挟み込む必要があるわけです

もちろん
それだけでなく
自分のポートフォリオを定期的にテューターとともに読み返して
『現時点の自分の研修はここでこの部分は自信があるがこの部分はできない』と振り返り
さらに
『前回はこんな内容だったがこの研修診療科でこれを修得した』と
その達成過程が示されることこそがポートフォリオに挟まれるべき内容となります
これこそが
指導医と研修医が一緒にポートフォリオを作成するということにつながります

そういう点で
ポートフォリオを採用しはじめた当初よりも
内容的にはポートフォリオそのものの質は向上していますが
研修医がすべて理解して作成しているとは
まだまだ言えないでしょう

最後に
研修医や指導医から『電子ポートフォリオは?』とお勧めいただいている点について
私見ですが一言

たしかにEPOCも含めて電子媒体による研修評価は多忙な研修において有用なツールとなりえます
しかしながら
土持ゲーリー法一先生も述べているように
ときに『電子ポートフォリオ』は紙媒体ポートフォリオに比べて
研修医のパソコン技術に左右されかねません

技術的な側面(つまり見栄えのいい画面)が強調され
学習processの省察的実践という肝心な部分が薄れる傾向にあります
これではせっかくのポートフォリオが
単なるデジタルスクラップブックや
ファンシーな電子版研修記録や研修履歴書
マルチメディアプレゼンテーション
もしくは
個人向けウェブサイトと同じ意味しかもたないものになるでしょう

ポートフォリオ評価を行うからこその紙媒体だと考えています

*注意事項:
ポートフォリオにはいくつか種類があります
論文や文献、書籍を読まれるときには
そのポートフォリオが何を示しているのか十分に注意して読むべきです
ポートフォリオそのものの内容は基本的に同じですが
目的や活用内容がことなることがあります

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