2011年11月14日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「肥満の原因と加速する“アメリカンサイズ化”」
を企画、取材、執筆しました。
キーワードは「肥満」…。
11月13日付の日本経済新聞朝刊に「肥満の原因 解明進む」という記事がある。これによると、東京大の佐々木敏教授らの若い女性1,700人を対象にした調査や、名古屋大の豊嶋英明名誉教授らの中年の男女4,700人を対象にした調査によると、「食べるスピードが速いほど肥満度が高まる」という。
その理由の一つは「満腹中枢」といって、食べた物が胃にたまると脳に信号が伝わるが、早食いの人はその信号が届いて満腹だと感じる前に、必要以上の量を口に入れてしまうためという。
理由の二つ目は、「野菜や果物などの食物繊維をあまり食べないため」という。食物繊維は歯ごたえがあり、すぐに飲み込めないので、必然的に早食いができなくなるという理屈である。
三つ目は、「よく噛んで食べないため」という。食べ物には内面からしみ出る味があるので、しっかり噛めば少ない量でも満足感が増すことができる。
また、早食い以外にも「夜食べない」ことが肥満防止に効果的という。体内の脂肪組織は昼間は脂肪を分解し、夜はエネルギーを脂肪としてため込むためだ。
こうした肥満の原因が科学的に明らかになってきたわけだが、昔から「腹八分目」いう言葉があるように、食べ過ぎこそが肥満の原因の第一であることは言うまでもない。ちなみに、OECD(経済協力開発機構)の2005年の調査によると、国民の肥満率が最も高い国はアメリカで30.6%。2位メキシコ24.2%、3位イギリス23.0%以下を大きく引き離し、“世界一の肥満超大国”として名を馳せる。
そのアメリカの実情は、日本経済新聞ロサンゼルス支局長の猪瀬聖氏の著書「アメリカ人はなぜ肥るのか」(日本経済新聞社刊)によると、例えば、アメリカの清涼飲料は、日本のお茶とは違い、砂糖が入った甘いドリンクばかり。それを四六時中、がぶがぶ飲んでいるという。
塩分も明らかに摂りすぎで、塩の塊のような塩辛風味のスナック菓子が人気。映画館に欠かせないポップコーンも、中サイズのものでさえ1,200カロリーに達するという。
しかも、アメリカ人はもともと大食いなのかというと、そうではなく、1980年代からビックマックなどの “アメリカンサイズ化”が急速に進み始めたという。ビックサイズは安くて満腹感を得られるので、アメリカ人に受けたのだ。その結果どうなったかというと、20年前に比べ、チーズバーガーは80%増、チーズケーキが2.5倍、フライドポテトとコーラが3倍といった具合に、カロリーが激増したという。(アメリカ国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)の調べ)
日本にとっても対岸の火事ではない、と同書は分析している。特大サイズの牛丼やラーメン、カレーライスなどの「ガッツリめし」、「メガ・マック」に代表される「メガ・ブーム」、日清食品の「濃厚煮出し豚骨醤油」やサンヨー食品の「サッポロ一番 濃い味 みそラーメン」といった塩分の高いカップラーメン、東ハトや森永製菓、江崎グリコなの菓子メーカーが相次いで販売する濃い味の菓子類、さらに“激甘”で高カロリーなアメリカ大手ドーナッツ・チェーン「クリスピー・クリーム・ドーナッツ」の日本進出など、急速に“食のアメリカ化”が進んでいるという。
ちなみにOECDによると日本の肥満率は3.2%で今のところアメリカの10分の1以下。「グローバル化」というと聞こえはいいが、美意識が高いといわれる日本が、アメリカのような「肥満国家」になってしまっては、あまりにも切なくないだろうか?