けさの東京新聞に、民主党代表選、自民党総裁選の立候補者に対し、毎週金曜に首相官邸前で行われる「脱原発デモ」参加者へのコメントを求めた記事があった。
私の立場は、3.11以降、原発は廃止すべきだという立場だ。そして、4月以降の毎週金曜の抗議のデモは、政党や党派を超えた“新しい政治のうねり”であり、“既成の政治表現を超えたもの”だと思っている。
その意味でも、民主党の赤松広隆氏の「もし、今の立場でなければ、一緒にいたかもしれない。未来社会を思う気持ち、お子さんの健康と安全を思う気持ちは同じだ」という言葉が注目される。
野田佳彦候補については「公邸で窓を開ければ聞こえる。国民の声の発出の仕方はいろいろある。その一つの形態だ。政治を変えるか、変えないかは分からない」というのみ。野田氏は8月に抗議活動をする市民らと会っただけでおしまい。今月14日に政府が決定した革新的エネルギー環境戦略には「2030年代に原発稼働ゼロ」を盛り込んだが、今月19日にそれを閣議決定せず、「参考文書扱い」にとどめた。こんなものは何の保証もない、という意味では、全くデモの評価をしていないことになる。
自民党の5候補はおしなべて、抗議活動を無視。石破氏の「雰囲気に流されると危うい」という意見とか、林芳正氏は「あそこに集まっている人の気持ちを受けて、いい判断ができるのかどうかは、指導者として考えるべきだと思う」と言っているように、官邸に集まる人たちの表現形態をくみ取るという回路を持っていない。
いずれにせよ、民主も自民も誰がトップになっても、原発が廃止される方向ではないことがわかった。国民の半数以上が「原発いらない」といっているのは、政策の問題ではなく、生き方、人生観の問題である。逆にいえば、原発事故は、多くの国民の生き方を問い直すものであったという事だ。その生き方や人生観を、政治が政策として組み込む回路がない――東京新聞のアンケート記事はそのことを示している。
2012年9月21日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「今日のニュースに一言」でジャーナリスト・二木啓孝氏の記事
「二木啓孝が語る、誰がトップでも脱原発デモの声は届かない…」
を聞き書きしました。